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第四十五話 登校開始

 エノワ共和国の王都は砂漠の中にあるとは思えず、花が咲き誇っていてどの街よりも活気に満ちていた。


 そして王都の中にはいくつか学校があるのだが俺達が通うのは権力者の子息達が通う特別な学校だった。


 ただしまだ学校は始まっていないので門は固く閉ざされている。


「あれっ宿舎は学校の中ではないんですか」

「そりゃそうだろ、もしかして君達の国ではそうなのか? あいにくだがこの国では学校が管理する施設はないな、学生たちは自分の家から通うか共同で家を借りるかだな」


 王国と共和国の違いを聞きながら案内された家はそれほど大きくは無いがちゃんと塀で囲まれているし門番が在中出来るように小屋まであった。


 平屋のその家は玄関を開けると直ぐに20畳ほどのリビングが見え、中にはオープンキッチンがあるし、風呂までもがちゃんと設置されている。


 唯一の問題は寝室が一つだけしかなく、その中に大きなベッドが一つだけあった。


 その寝室をエリサが見た途端に顔色が変わる。


「何で寝室が一つしか無いんですか、それにベッドも一つじゃないですか」


 その様子を見たヘレナが耳を倒しながら申し訳なさそうに言ってきた。


「王国から聞いた話だとこの家には一人が住み、もう一人は護衛任務を学ぶと言う事で外の小屋で寝るようと打ち合わせが終わっていました。それなのに急遽男女に変わってしまったので……そもそもこの私も護衛任務を担当する事が決まったのはつい先日なんです」


 エリサはその話を聞いて何も言えなくなってしまった。文句を言う相手は共和国の担当者かそれとも勝手に指名したファビオだからだ。


 早く連絡しないからこうなるんだよな、ちょっと待てよ、俺があの犬小屋みたいな所で眠らないといけないのか。


「まぁ諦めてくれや、ベッドはかなり大きいから二人で使っても構わんぞ」


 残念な事にゲレオンは空気がまるで読めない男だったようだ。折角どうにか折り合いを付けようとしたエリサの怒りの炎を再び燃やしてしまう。


「馬鹿じゃないのそんなことする訳ないでしょ、そんな事を言っている場合じゃないでしょ」


 その気持ちは分かるが、そうなると俺はあの小屋でこれから暮らさなくてはいけないのだろうか、1年もあそこにいると思うと憂鬱になって来た。



 ◇◇◇



 この王都に到着してから3日が過ぎたがまだ学校は始まっていない。


「おはよ~、よく眠れたかな?」


 寝室から出てきたエリサはリビングの端で毛布包まれて眠っている俺に向かって挨拶をしてくる。


「少しは慣れたかな、あの小屋よりはマシだけどちょっとな」

「もう家にいるだけマシでしょ、まさか一緒に眠りたいとか言わないよね」


 本当の年齢はエリサより大分年上だからそんな欲望を抱く可能性は少ないんだと言いたいが、言える訳ない。


『のんびりしている場合かね、今日から学校だと記憶しているのだが』

「そうね、早く支度しないと、あ~楽しみになって来たな」


 エリサは前向きにこの交換留学を受け入れたようだが、俺の方は此処に来てもそんな気分にはなれない。


 そもそも獣人族と人間族では文化が違うのだから1年間と言うのは少し長すぎると思う。これが最初だから誰も分からないんだろう。


 支度を済ませて待っているとゲレオンとヘレナが中に入って来る。


「おいっ準備は出来ているか? さぁ学校に行こうじゃないか」

「緊張しなくても大丈夫ですよ」


 ヘレナと違ってゲレオンはかなりがさつだがこれが獣人族の特徴なのかそれともたまたまなのかまだ判断がつかない。この態度でフェビオを接したらどうなっていたんだろうな。


 それに俺達以外の貴族だったらこの状況に耐えられるのだろうか、まぁ貴族意識が高い連中には無理だと報告した方がいいだろう。



 ◇◇◇



 これから通う学校は学年ごとに建物が分かれているがどれも平屋でどの学年も2クラスしか無いらしく思ったよりも少数だ。


 但し敷地は広く、学校内に草原や砂浜や森迄あるので座学よりも戦士を作る学校なのかも知れない。


 そうなるとエリサとは別のクラスになるのかと思ったが基本の授業は同じらしいのでようは選択科目と言ったところだろう。


 二人と姿を隠していないアビスと教室の外で声が掛かるのを待っている。


「何だか緊張するね」

「俺達だけが人間だもんな、だけどさ、アビスに注目がいくだろうけどね」


 アビスは気にする様子もなく俺達の頭の上でふらふら浮いている。獣人達もアビスは珍しいようで街を散策した時もかなりの注目を浴びていた。


『つまらんな、私はいなくても良いよな』

『初日ぐらいは我慢してくれよ、一気に終わらせたいんだよ』


 アビスをなだめていると呼ばれ、教室の中には興味津々の顔をした獣人族の顔があった。すると山羊の面影が強い教師が俺達の紹介を始めてくれる。


「君達は人間に対してどんな思いがあるのか分からないが、彼等は同盟国から来た人間だから仲良くするんだぞ、此方がユリアス君で隣がエリサさんだ。そして浮かんでいるのがユリアス君の下僕の赤竜だ」


『この私が下僕だと~、この街を滅ぼしてやろうか』

「先生、彼は下僕では無くて相棒です」


 本気でアビスを怒らせたらやりかねないので直ぐに訂正するしかない。それにしても獣人族はもう少し言葉を選べないのだろうか。


「そうなのか相棒とは驚いたな、やはり留学してくるだけあって変わっているな、まぁいい、何処でもいいから座りなさい」


 空いている席は奥しか開いていないのでそれまでの間に足を引っかけらっれるなどテンプレのような事が起きるかと思ったがそんな事は無く、無事に二人で並んで座る事が出来た。


 何も無く留学が終われば良いんだけどな。


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