第四十二話 まだ旅の途中
まず最初の目的地はトレストイ街となり、そこは王国と共和国が共同で管理しているお互いの種族が平和に暮らす事が出来る街となっている。
問題を起こしそうな貴族は住む事を許されず、領主の役目をしているのは中立の立場のギルドが行うという特殊な街だ。
王都を出てから4日を過ぎているが日中はずっと馬車の中で、泊まるために村や街に入っても宿の中以外は出て行けにないというかなり息苦しいしい旅をしている。
エリサは魔法省の役人から貰った聖属性の上級魔法書を読んで勉強しているのでこの不便な状況はあまり気にならないようだが俺にはただの拷問でしかない。
『あのさぁ魔族は獣人族についてどう思っているんだ』
『他種族は全て同じだな、まぁ獣人族はあまり』
『それ以上はいいや、もうこの話は止めよう』
何となくそれ以上聞いてしまうとアビスを見る目が変わってしまいそうだった。
だとすると他の暇つぶしを試す為に馬車と並走している頑固そうな衛兵隊長に相談するしかない。直ぐに窓から顔を出して衛兵隊長と視線を合わせる。
「あの、身体がなまりそうなのでせめて馬に乗りたいんですけどいいですか」
「それが許されると思っているのかね、君らは国賓扱いなんだぞ」
「僕らはただの学生ですよ、ファビオじゃないんだから良いんじゃないですか」
「言いたい事は分かるが無駄だ。せめて昨日盗賊に襲われ無かったら考えても良かったんだがな」
「あれが襲われたに入るんですか」
昨日の事は俺達が盗賊に襲われたのでは無くて、商人を襲っていた盗賊を護衛団が遠くから魔法で焼き殺しただけの事だ。
護衛隊長の号令と共に発射された【ファイアーランス】は地面を這うように盗賊に向かって突き進み。身体に突き刺さると一気に炎が全身へと広がって消し炭へと変えていく。
俺の感想はただ羨ましいだ。
あの火力があれば俺にとっての最高の武器になるのにな、クソッどんなに訓練してもあのままなんてあんまりじゃないか。
「もういいかね、私達と同じ事が出来る連中もいるかも知れないから早く窓を閉めなさい。君達に少しでも何かがあれば私達は処罰されてしまうんでな」
「分かりましたよ」
◇◇◇
あれから二日が過ぎ、馬車の中では一切の感情を無くす技を覚え始めた頃に衛兵隊長が窓を叩いて来た。
「どうかしましたか」
「前を見てみろ、ようやくトレストイ街が見えてきたぞ」
身を乗り出して前を見ると城壁の代わり杉の様な木に囲まれている街の姿が見えた。森との調和を目指したいのかログハウスのような家が並んでいて、街の中にも植物がたくさん生えている。
「素敵な街じゃない。共和国にはあんな街が多いのかな」
「そうでは無い。あそこは共同の街なのだから出来る限りシンプルにした結果なんだ。お互いの技術を交換するほどの関係までには至ってないからな」
その割には共同の街を作るなど矛盾しているように思えるが、これから徐々に発展していく街になるのだろう。
「ギルドはどんな風に管理してるのかな」
「特別な事はしてないさ、ただ不用意な言動や行動をした者には厳しくてな、1度でもしてしまえば生涯出入禁止だ。まぁ難しくはないから安心しろ」
要するに亜人とか言ったり差別的な行動をしなければ良いらしい。エリサはそんな事をする訳もないし俺だってそのつもりは全くない。
あの街は是非とも見物しておきたいな。
◇◇◇
期待に胸が膨らんで街に到着したのはいいが、既に共和国の留学生とその護衛団が待ち構えていたので翌日にはこの街を出ないといけない。
だがこの街では獣人族の留学生と一緒であれば街を探索する事が許された。
まぁ俺達の後ろには両国の護衛団が付いているけどね。
交換留学生の1人は猫族の大柄な男でその名をガルトと言い、今は人間よりの姿に変化しているそうだが、それでも虎の面影があるしその太い腕と太い脚と太い尾は人間でない事を証明している。
もう1人は犬族でその名をディーテと言うが丸い顔を見てしまうと犬と言うよりタヌキに見えてしまう。
ガルトに案内されて公園の中に入るとその両端は屋台がひしめき合っていた。直ぐにガルトは俺達の分の串焼きを持ってきながら言ってくる。
「なぁ一つ聞いても良いかい、あんたは格闘術に優れているって聞いているが、その身体だとかなりの技を持っているってことなのかい」
「へっ何を言っているんだ? 俺が優れている訳ないだろ」
「いやいや交換留学は武と学の交流だろ、こっちは俺が武でディーテが学なんだ。まさかお前が学の方なのか」
意味が分からないので戸惑っていると俺の背中をエリサが突いて来た。
「ゴメンね、ユリアスなら何とかなると思ったんだ」
「嘘だろ」
俺だけ知らない話がここにあった。エリサが言うには先生達最初は渋ったようだが走破訓練とサボイ島の事があるから何とかなると判断したらしい。
「ユリアスなら大丈夫だよね」
「そんな訳ないだろ、俺は魔法があるから人並みに戦えるけど使わなかったら雑魚なんだぞ」
「そんな事言わないでよ、そもそもアーロンさんと訓練していたじゃない。あれだけ続けていたんだから平気だよ」
それは既に過去の話だ。ようやくアーロンが卒業してあの馬鹿みたいな訓練から解放されたというのに……。
『良いではないか、強く慣れるぞ』
『あのね、別に最強を目指していないんだから今のままで良いんだよ』
俺としては逃げ出したくなってきたがそれは無理な話だろう。この話を聞いたガルト達獣人達も期待外れだと認識したはずなのに何故かガルトは笑顔になっている。
「そうかお前は魔法が使えるのか、だったら魔法有で構わないから腕試しをしないか、是非とも戦おうぜ」
そんな馬鹿な考えはありえないと思って護衛隊長の方を振り向くと、助けてくれるどころか獣人族の護衛と一緒になって戦える場所を作り始めている。
あのね……。




