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第三十四話 異変

 夕食は外でバーベキューが行われたが、近くにいるエリサは一切こっちにやって来ないのでディルクが不思議がっている。


「何だか様子がおかしいじゃないか、何かをしたのかい」

「何もやっていないさ、そもそもエリサの家は俺の家の寄親なんだぜ、それを言えば分かるだろ」


 それでこの話は終わりにしたかったがカミロは納得がいっていない。


「何もされてない態度には見えねぇんだけどな」

「だから本当に何もしていないって」


 そう、俺は何もしていない。肩に手を回そうとはしていたが未遂に終わっているのだから全てはアビスの嘘のせいだ。


 あんな場所で襲える訳がないとエリサが気が付くまでほっとこうと思う。どうせ今のエリサに弁解をしても聞き入れてはくれないからだ。


『悶々としているところ悪いがその肉をくれないか、勝手に食べたらまずいのだろ』

『あのなぁ、少しは責任を感じてくれたっていいだろ』

『そんな事は知らん。それより肉をだな』

『はいはい、分かりましたよ』


 ディルク達に協力してもらい人目にない場所に肉を入れた籠を運ぶと、闇夜に籠が飛んで行った。


 これを見られたら騒ぎになるんだろうな。



 ◇◇◇



 んっまだ夜中か、変な時間に目覚めたな。


 トイレに行ってからもうひと眠りしようとしたが何だか外が気になってしまう。半分ぼやけている目をこすりながら窓の外を見るが何も見えない。


「でも……ダークアイ」


 目の前が一気に明るくなり、外までも昼間のように見る事が出来る。


「あのベールはなんだ? もしかして安全に過ごせる為の障壁か?」

『何を寝ぼけた事を言っているんだね、どこぞの連中が仕掛けたのさ』

「ちょっと待てよ、学校以外の人間がこの島にいるのか」


 この島は学校関係者以外が立ち入る事は禁止されている。


『人間だけじゃなくて魔族もだがな、それにしてもあの障壁は中々の出来だぞ、あれがある限りいくら音を出しても島の外には聞こえないし通信魔道具も使用出来ないな』

「あのさ、もしかして知っていたのか」

『当たり前だろ、肉を食いながら見学をしていたのさ』


 そうなるとその連中がこの島に到着したのは数時間も前の事になる。


『何で早く言わなかったんだ』

『余計な事を言うなと言ったのは君だろ、それに私は君の使い魔ではあるが此処にいる人間とは何の関係も無いからな』


 それによって俺に危機が訪れるのかも知れないが、アビスは俺だけは逃がせるのだろう。その考えに納得は出来ないがだからと言ってアビスと揉める訳にはいかない。必ずアビスの力が必要になるからだ。もう少し人間よりの心を持って貰うのにはまだ時間が掛かるだろう。


『分かったよ、もうくだらない事は止めよう。それでその連中の配分と数はどれぐらいなんだ』

『数は100で人間と魔族が半々だな、まぁ魔族と言ってもたかがリザードマンさ』

『あぁそうかリザードマンはアビスにとっては下級なんだな、だとするとアビスの指示に従うのか』

『それはないな、ただ私に手を出すほどの勇気は無いと思うがな』


 だとすると……おいおい、俺だけで悩んでいる場合じゃないだろ。


「みんな、早く起きろって、大変な事が起きているんだ」


 いつもの3人なので話せば嘘では無いと理解してくれるのは知っているが、それにはちゃんと目を覚まして貰わないといけない。身体を強く揺するがまだ目を開ける気配は無い。


 何やってんだよ、そこまで深く眠るなよな。そんなんで騎士になれるのかね。


「あぁもういいさ、そんな態度を見せるなら遠慮はしないぞ、ウォタ、ウォタ……」


 3人の顔の上に順番に水の塊を落としていく。


「うわぁ何だよ」

「お前、ふざけるなよな」

「君ねぇ、これはやり過ぎだよ」


 3人とも起きてくれたが誰もが俺を睨みつけている。だが怒りも直ぐに治まるだろう。


「いいから大人しく話を聞いてくれ」


 アビスから聞いた話をすると3人は簡単に理解してくれる。もし俺だけの話だったらこんなに簡単に信じるのかは疑問が残るが。


「僕が先生に知らせてくる」


 ディルクが部屋から飛び出そうとするが、行かせないようにカミロがその手を掴んだ。


「落ち着けよ、アビスを知らないんだから信じる訳ないだろ」

「だった大人しくしてればいいって言うのか」


 カミロはその先の答えを用意していない様で俺を見るが、俺だって分からないから起こしたんだ。


「アビス、今の状況を見て来てくれないかな」

『仕方が無いの』


 窓を開けるとアビスは飛び出して行くが直ぐのその姿は見えなくなる。遠くに行ったのでは無くて姿を消したのだろう。


 アビスなら直ぐに戻ってくるはずなので先ずは円を描く様に床で座ってアビスの帰りを待つ。


 少し重い空気が流れる中でディルクが口を開く。


「リザードマンと人間か、そうなるとランイル帝国と魔国が手を結んだんだよね」

「あいつら戦争を仕掛けてきやがったのか」


 カミロが吐き捨てるように言ったが、俺にはその意見には賛成できない。


 何故なら戦争を仕掛けたにしたら数は少ないしこんな島を占拠しても意味が無いように思える。それに元ユリアスの記憶が正しければ確かにこの湖の先にランイル帝国はあるが帝国は魔国と争っているはずだ。いきなり手を結ぶ事があるのだろうか。


 クロードも俺と同じ考えの様でそれを聞かせるように重い口を開いた。


「この島を狙って何の意味があるんだ? 街を襲撃した方が良いと思うんだけどな」

「此処を拠点にするんじゃねぇの」

「湖の中央にあるこの島をか? 何もない島なのに?」


 カミロの意見は簡単に却下される。


 数分後、開けっ放しの窓からアビスが戻って来た。


『何を呑気に座っているのかな、君らには危機感が無いのかね』


 何も行動をしていない俺達にアビスは呆れたように言ってきた。   


 


 



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