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第三十一話 後始末

 雰囲気に流されて一度はみんなと一緒に駆け出して行ったエリサが俺の隣に戻って来た。


「ねぇ此処にいていいかな」

「そうしなよ、エリサが行っても危ないだけだろ」

「あのさ、まだ大丈夫なの?」


 エリサがいう大丈夫は魔力切れの心配をしているに違いない。


「初級魔法だからそんなに消費してないんだよ、まぁ数は多いけどね」

「多すぎでしょ、あんなに使って魔力切れしないなんて信じられないよ」


 普通の人間がどれぐらい魔力を持っているのか知らないが、今の俺は魔力の消費で疲れているのでは無くて唱え過ぎで喉が痛い。


【アニマ】を何度か掛けて喉を元のように回復させてから広場の様子を見に行くと、やはり怪我をしたのか治療しているグループと空中に浮かんでいる魔法陣の間で武器を構えている二つに別れていた。


「また色が変わり始めたぞ」

「また出てくるのかよ、きりがないな」


 魔法陣の色が赤から黄色に変わるとゴブリンが顔を出してきたが次の瞬間には首を刎ねられてしまう。


『あれが原因なんだな』

『そうさ、魔族が作った転移魔法陣とは別物だから人間の仕業に間違いないだろう』


 俺とアビスの会話にエリサが入ってくる。


「誰があれを作ったのかな」

『さぁな、ただ簡単に作れるものではないぞ』


 現れては直ぐに殺されるゴブリンを見ていると、別の場所から歓声が上がった。どうやら深手を負ってしまった者が意識を取り戻したようだ。


「なぁあいつらは何でこっちに来るんだろう」

『さぁな、それは向う側に行かないと分からないが、必ず理由はあるだろうな』


 アビスがこの魔法陣を見て分かる事をもっと尋ねたかったが、此方に近寄って来る足音が気になって会話は終わりとなった。


 何が来たのかと思い身構えていると、まず最初に見えたのはアーロンだ。


「おいっ大丈夫か」


 俺が頷くと立ち止まる事なくそのまま魔法陣の方に向かっていく。続けて先生達も到着したので緊張の糸が切れたのか膝を地面について泣きだす人もいた。


 魔法科のスプラウト先生を中心に魔法陣を調べ始め、その間にも出てくるゴブリンはバーレント先生が叩き潰している。


 上級生に中にはまだ怪我人もいたがミランダ先生によって治して貰っている。それから数分後、ようやく答えが出た様でスプラウト先生が俺達に大声で指示を出してきた。


「全員私の近くに寄って障壁の中に入って下さい。魔法陣を壊すので何が起こるのか分からないので絶対に出ないように」


 壁際にみんなを集めると薄いベールのようなものが俺達を包んだ。初めて見た障壁は頼りなく思え俺は不安を感じているが、周りにいる者達は安心しきっているような感じがする。


 この中に入っていないのはバーレント先生とアーロンで二人で視線を合わせると同時に魔法陣に斬り込んで行く。

 

 すると凄まじい爆音と共に煙が当り一面に広がるが、障壁の中には入って来ない。


『アビス、あの二人は大丈夫なのか』

『あぁ問題は全くないな』


 アビスの言葉を信じて煙が治まるのを待つと、徐々に身体が青白く光っている二人の姿が浮かび上がって来た。


 その二人の姿を見てカミロは興奮したように言い出す。


「二人とも凄く綺麗な闘気だな、俺もいつか身に付けねぇとな」


 だが俺には闘気に意味が分からない。


「なぁ闘気ッてなんだ?」

「おまっ、あのな、いくら途中入学とはいえ何で知らねぇんだよ、アーロンさんの弟だろ」

「知らないんだから仕方がないだろ、教えてくれよ」

「しょ~がねぇ~な~」


 カミロの説明によると闘気とは光属性の上級魔法の一種で魔力を鎧に変化させる魔法だと言う事だ。


『そこまで出来るって事はもしかしてアーロンって俺と一緒なのかな』

『さぁどうだろうな、ただあ奴には勇者の素質は備わっている様だな』

『勇者か、俺にはアーロンが勇者のようには見れないんだけどね』


 ただアーロンの姿を目で追っていると、光の鎧を解除したアーロンは俺の元に駆け寄って来た。


「あれをやったのはお前なんだろ、やはりお前は俺の弟だな」

「俺だけの力じゃ無いですけどね」

「謙遜するな、確かにお前だけじゃないのは分かるがそれでも充分すぎるぞ、よく頑張ったな」

 

 満面の笑みで肩を叩かれると胸に熱い物が込み上げてくる。前の世界では決して持っていなかった正義感と少々の勇気を持てた自分が誇らしくなった気がした。


『感動しているところ申し訳ないが、彼は年下では無いのかね』

『あっそういやそうか……もうどうでもいいかな、昔の事を引きずっているとややこしくなるからな』


 あまり前の世界の事を中心に考えているとこの世界で生きにくそうなので、だったらなるべく忘れて生きて行った方が楽なような気がしてきた。



 ◇◇◇



 後で聞かされたことだがあの空中に浮かんでいた魔法陣は魔人や他の種族の仕業ではなく人間が設置したものだと判明したそうだが犯人に繋がる手掛かりは見つかっていない。


 ダンジョンは閉鎖されて隅々まで調べているそうなのだがそれ以上の事はもう分らないだろうとの事だ。


 そんな話を懲罰房の中で聞かされる俺って何なんだよ。


 その懲罰房の中にはディルクもカミロもクロードも同室だがディルクはかなり不服に思っている。


「何で此処に入らなきゃいけないのか意味が分からないな、これだから騎士に魅力を感じなくなるんだよ」


 声が少し大きいので黙らせる。


「聞こえたら不味いんだからそんな事言うなよ、期間が伸ばされるぞ」

「どうしてだい。僕達は何も悪い事をしていないんだぜ」


 その声が煩わしかったのかカミロが怒鳴る。


「4階層に行ってはいけない決まりなんだからこうなったんだよ、もういだろうが」


 ディルクは不満気ではあるが黙ったが今度はクロードが文句を言ってくる。


「だから私は嫌だと言ったんだ。あそこに何の意味があったんだね」


 俺達がいくらグチを言おうが誰も止めに来なかったのは同情して貰っているせいなのだろう。


 まぁエリサは見逃して貰えたから良しとするか。


 そして此処から出られたのは6日後だった。

 


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