第二十五話 またしても見つかるアビス
エリサがいきなり話し掛けて来た事に驚かされたがそれ以上に当たり前のようにエリサの肩に乗っているアビスを見て理解が出来ない。
「どうなっているんだい」
「私達は友達だからね」
友達って何のことだ? どういう事?
「頼むから分かり易く教えてくれよ」
「仕方がないなぁ」
俺の初耳だったが、エリサは既に俺がアビスを使い魔にしている事をバルトルト様から聞かされていた。一緒に馬車に乗っている時は何となく気配を感じていただけだったが今ではアビスが姿を消していたとしてもその姿ははっきりと見えているらしい。
「本当かよ、俺ですらアビスが姿を消したら見えないんだぞ」
「どうしてだろうね、まぁ見えるんだからそうだとしか言えないよ」
『君は気が付かないのかい』
『何がだよ』
『この娘は私と会話が出来るんだ』
『えっ』
「ねぇユリアス君は声に出してくれないかな、アビスちゃんの声は頭の中に聞こえてくるけどユリアス君の声は聞こえないんだから」
「あぁそうなんだ、なんだか良く分からなくなってきたな」
『君より能力が高いからだろ、おそらくこの娘は聖女だな』
「ちょっと~照れ臭いから止めてよ」
エリサは下を向いて照れているが、もうこの俺はアビスにとってはただのエサ場でしか無いのだろうか。
『悲観するな、あくまでも私は君の使い魔さ』
『その意味がそもそも良く分からないんだけどな』
「だから~また話しているでしょ、私は声に出さないと駄目なんだから止めてよね」
すると今まで存在すら忘れていたディルクが後ろから俺の肩を揺らしてきた。
「あのさ、何だか良く分からないんだけど、その事よりもこっちを先にどうかしてくれないかな」
「うん? あっそうか」
俺の後ろには息すらしていないかのように固まってしまっているカミロとクロードの姿があった。
◇◇◇
二人の目を見ながらちゃんと説明をするとようやくカミロが言葉を話してくれた。
「何て言うか、お前と友達になって良かったよ」
続けてクロードも口を開く、
「そうだねまさか竜を目の前で見れるなんて思わなかったな……そうだっ君の使い魔なんだから言う事は聞くんだよね、だったら色々実験したんだけど駄目かな」
『このクソガキが、かみ殺してやろうか』
「あのねクロード、アビスは言葉をちゃんと理解しているんだからそれ以上余計な事を言うとどうなるか分からないよ」
「そうか、この頭は小さいけど知恵はあるんだな、ぐがっ」
またしても余計な事を言ったクロードはアビスの尻尾で思いきり顔を叩かれ意識を失ってしまった。顔は晴れ上がり骨も折られてしまったようだがエリサが直ぐに回復魔法を掛けたので見た目は治ったが意識は戻らない。
そんなクロードを呆れたような顔をしたカミロは吐き捨てるように言う。
「何で竜種にそんな事を言うんだよ、意外と馬鹿なんだよなコイツは」
◇◇◇
夜になりいつもの訓練をしていて今はカミロがアーロンにコテンパンにやられている。
『あいつらが言ってたけど俺はテイマーなのかい』
『君は違うな、もしそうなら私と君との間に主従関係が生まれるんだ。そうでは無く私と君に間には私は君から魔力を貰う代わりに力を貸すと言う契約があるだけさ』
そんなに力を貸して貰ってない様な気もするがそれを言ったら面倒な事になりそうなのでその考えを頭から振り払う。
アビスと会話をしているとカミロが大量の血を吐いたのでマティアスが急いで回復魔法を掛けに走り出した。
「全然だめだな、もういい交代しろ」
「あっばばがぼぼ」
マティアスを振り切りカミロは立ち上がろうとしたがふらついてまた倒れてしまう。そんなになってまでどうして訓練をしたいのか俺には意味が分からない。
「お前は休んでいろ、次はユリアスだ」
「はいっお願いします、アニキ」
「ああんっ、お兄ちゃんだろうが~」
機嫌が悪いのか真剣を手にしたアーロンは勢いよく俺に向かって走り出しそのまま剣を薙ぎ払う。
「えっあっ」
中途半端に構えてしまったので避ける事も防御も出来なかったので左手首が飛ばされてしまった。
「あっやべっ、やっちまったぞ、おいマティアス、早く治してやれ」
「何しているんですか、斬り落としたら駄目だって何度も言ったでしょ」
「だってよぉ、こいつがアニキ何て言うからいけねぇんだよ」
「そんな言い訳が通用しますか。あぁもう、お前は早く【アニマ】を唱えて治療室に行きなさい」
マティアスは俺に回復魔法を変えようとはしないでまたアーロンに対して文句を言っているが、そっちは後回しにして欲しい。
「ちょっと回復魔法を掛けて下さいよ」
「お前は自分の魔法で血が止まるからいいんだ。それよりも今は兄上の間違いを認めて貰う方が大事なんだよ」
絶対に間違っているって、【アニマ】何だよ、初級魔法なんだよ。
たった一度の【アニマ】ではほぼ効果が無いと言って過言では無いが俺みたいに連続で使用すればかなりの効果がでる。もしかしたら自分で腕をくっつける事も出来るかも知れないがそれをするよりも治して貰った方が遥かに早い。
結局ミランダ先生を探して治して貰ってから戻ると当たり前のように訓練は続けられ、今日もまともにアーロンに当てる事は出来なかった。
訓練が終わり帰り支度をしている二人の兄にダンジョンの事を相談する。
「行けば良いじゃないか、確か5階層まで行けるんだろ」
「違いますよ兄上、まだユリアス達は3階層しか行けません。兄上はもう少し決まりを覚えた方が良いんじゃないですか」
「良くそれで近衛兵が決まりましたね、そんなんじゃ直ぐに追い出されるんじゃないですか」
軽い冗談を言ったつもりだったら触れてはいけない事だったらしく空気が一気に冷たくなる。直ぐにマティアスが俺を背中を押してきた。
「おいっ逃げろ」
「はいっアニマ……」
全速力で逃げ続けられるように【アニマ】を唱え続けたがものの数秒で俺の意識はどこか遠くに行ってしまった。
◇◇◇
それから数日後。俺達は学校の中にあるダンジョンの前に立っている。
先頭は斥候として活路を見い出したいディルク、その次に片手斧を持つカミロ、そして三番目には初級の聖魔法は全て使用出来るようになったエリサ、その後ろには勝手に登録されてしまったので不貞腐れているクロード、最後に俺がいてアビスは好き勝手に飛んでいる。
今はアビスは姿を見せているが俺達以外の人がいる気配をしたら直ぐに姿を消すように言っているので騒ぎにはならないだろう。
『人間が管理するダンジョンに初めて入るな』
『そうなんだ、基本は魔族が管理しているのかい』
『そうさ、だからダンジョンに出てくるのは人間であったり獣人族なんだ』
『そうなんだ、そんなダンジョンには入りたくないな』
『あのな、簡単に信じないでくれるかな嘘に決まっているだろ、ダンジョンは自然発生しているのさ』




