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第二十話 それから

 あの日から3日が過ぎ兄弟達との訓練が終わって部屋に戻るとディルクだけでなくクロードとカミロも俺の帰りを待っていた。


 ディルクが最初に声を掛けてくる。


「あの、色々と反省したんだ。その、悪かったよ、あれから話し合ってね、俺達と同じ考えの奴らとでエリサちゃんにさっき謝って来たんだ」


 続けてカミロが言う。


「俺達は本当に情けねぇよな、勝手にあいつの顔色を窺ってエリサをのけ者にしていたんだから」


 クロードは膝をついて涙を流しながら言う。


「私達は情けないよ、謝ったら何て言われたと思う?」

「気にするなとでもエリサは言ったのかい」

「そうさ、それにこんな馬鹿な事をした私達に笑顔を見せてくれたんだぜ、もう本当に……」


 両手もついて泣いているクロードや悲痛な表情のカミロ、本当に悔しそうに歯を食いしばっているディルクを見ていると彼等も色々と思うところがあったんだと思う。


「エリサがそう言ったのならそれで良いんじゃないかな……んっ?今の時間は女子寮にいるだろ、どうやって話す事ができたんだ?」

「僕達が授業が終わって直ぐにマリカに頼んだんだよ、そしたら女子達も集まってみんなで謝罪したんだ」


 クラスの半分以上がその場にいたそうなのでやはり成果があった事が証明されたようだ。これからは出来てしまった溝を埋めていく作業が始まるが時間が解決してくれるだろう。


「そうか、良かったな」

「何とかね、あっそうだ、その後で僕達は君の事を見たんだけど、まさか部屋に中々戻って来ない理由があれだったとはね」


 校庭の真ん中で訓練しているので秘密と言う訳では無いし、出来ればわざとその姿を見つかって欲しいとは思っているのだがまさかもうバレるとは思わなかった。


「あの兄が学校にいるうちに鍛えて貰いたくてね」

「それにしてもあんな訓練で君は大丈夫なのかい、あれはやり過ぎじゃないかな」

「まぁ兄上はふつうじゃないからな」


 俺が連続で【アニマ】を使用しても魔力が枯渇しない事を兄達に告げると、マティアスはただアーロンの暴走を止めるためだけに付き合ってくれ、切り傷などは俺が自分で治している。


 するとカミロが真っすぐな目を向けてきて言ってくる。


「俺も参加したいんだけど駄目かな」

「見たんだよね、それでも参加したいのかい?君達もそうなの?」

 

 ディルクとクロードは素早く首を横に振ったのでそれが当たり前の反応だと思う。まさかカミロが参加したいなんて思うとは驚きだ。



 ◇◇◇



 次の日からはエリサの隣にはマリカ達が座る事になったので俺は初めてディルク達の席に座っている。


『何だか向こうは仲が良さそうに見えるぞ、人間は単純な生き物だな』

『俺にはまだぎこちなく見えるけどね、まぁその内に自然な状態になると思うけど』

『良く分からんな』


 アビスには人の心はあまり理解出来ないようだ。魔王の前は俺と同じ転移者だったそうだがもしかしたら人間ではない別の存在だったのかも知れない。


「なぁさっき食堂でマティアスさんと話していただろ、それでどうだった?俺も今日から訓練に参加して良いのか」


 カミロは期待した目を俺に向けてくるが、そんな目を見てしまうと心が痛くなる。


「ゴメンな、もう少し兄上の教え方がまともになる迄待ってくれってさ」

「あぁ残念だな、それは何時になるんだろうな、ユリアスが斬られ無くなった頃かな」

「あのね、向こうはあれでも手加減しているんだぜ、俺が斬られ無くなる何て日が来ると思うのかい」

「来る訳無いか、あのアーロンさんだもんな」


 俺達は普通に話しているしこの周りでも穏やかな空気が流れているようなので学長やセシリア先生が見たらあれを反省した良いクラスになりつつあると思うだろうが、その裏ではこのクラスは主に4つの派閥に別れつつある。


 まず一つは男爵家が集まる今迄は爵位が上のクラスメートの顔色を窺っていたグループで俺は必然的にその中に取り込まれている。


 二つ目は学長の言葉を重く受け止めて、もう下手な事には関わりたくないと思っているグループでイサベルがその中にいる。もう将来の為に学業に専念したいと考えているのだろう。


 3つ目はこれまでの裏の権力が使えなくなったのを憎く思っているグループで、その中にファビオが属しているようだが、少し違うような気もする。


 4つ目はあまり深く考えていないグループでどのグループとも浅く広く付き合う事を選択したようだ。


 そして俺はまだ訓練の事について話している。


「なぁあれから私も考えたんだけどマティアスさんの補佐とか出来ないかな」


 クロードは学校で一番と噂されているマティアスと少しでも近づきたいようだ。


「どうかな、あの兄上は他人に関心を持っていないし人にものを教えるのは嫌いそうだぞ」

「そうか、君も魔法を教えて貰っていないようだしな」


 クロードは俺が授業でいくら魔法を習っていても一切使えない事を言っているのだろう。


「全く魔法が使えない訳じゃないんだからこれで良いんだよ」

「本当にそう思うのかい、君は属性検査でもの凄い結果を出したんだぜ、それなのに簡単な初級魔法すら出せないじゃないか」

「不器用なんだよ」


 誰もが入学時に行う属性検査を俺はやらされ、何を考えたのか魔法学のスプラウト先生が皆の前で発表してしまった。それは俺には火・風・土・聖・闇の適性があるので将来は凄い魔法使いになると言われてしまったが結果は大幅にその期待を裏切る事になる。


 俺だって悔しいんだけど無理なんだよな、だって魔法成長がないからあれ以上は使えないんだ。ランダム設定の弊害だよ。


 それでも微かな期待を持って真剣に授業に取り組んでいるのだが、いくらやっても何も変化が出ないのはこのクラスで俺だけだ。


 そして次の日の格闘授業からとうとう俺に対する嫌がらせが始まった。

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