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第十四話 食堂にて

『アビス、なぁアビスってば、お願いがあるんだけど……お~い、居ないのか』

『側にいるが答えたくなかっただけだ。どうせつまらない用事だろ』

『流石だね勘が鋭いじゃないか、そうなんだけどさ、俺の魔力をもっと吸って良いから協力して欲しいんだよな』

『私を吸血族と一緒にするんじゃない。まぁいい、貸しにしてやるから私は何をすればいいんだ』


 文句を言いながらもやってくれるアビスには感謝しかないし、姿を消せるアビスなら簡単な事だ。まぁ元魔王に頼む事では無いとは思うが俺には決して出来ない事だから頼むしかない。



 ◇◇◇



 夕食時になりディルクと食堂に行くと、そこに挨拶しか交わしていなかったクロード=バシュレとカミロ=コートニーが同じテーブルに座って来た。


 カミロはやさぐれた感じだがクロードはこの世界では珍しい眼鏡をかけている。そしてカミロに促されクロードが話し掛けて来た。


「どうしてディルクと一緒に食べているんだい、てっきり君はファビオ一派になったと思ったのにさ」

「お前なぁ、いきなり嫌味かよ、もっとマシな挨拶の仕方はねぇのか」


 カミロがクロードを睨みつけその高い背丈を利用して綺麗な頭突きをクロードに落としていく。


「痛いって、それはもう止めてくれって言ってあるよな、僕の背がもっと縮んだら責任を取ってくれるのかよ」

「知るかっ、ただよ、本当のところはどうなんだ」

「んっどういう事かな」


 いまいち意味が分からないでいるとディルクが会話に入ってくる。


「あのね、僕が何度も説明した事だよ」

「あぁその事ね、僕は取り巻きの中に入るつもりはないかな、それに彼等はイサベルさん達と今はお茶会をしているよ」

「そう言う事か、あの女は男爵家を貴族だと認めちゃいねぇからな、お前は除外されたか」


 他の国はどうか知らないが、この国では平民でも戦果を上げたり多大な税金を国に納めれば男爵の地位を与えられることがある。


 そのせいもあって一部の上級貴族からは男爵と言う地位はただの名称だと思っている輩もいるそうだ。


「あのさ、ファビオもそう思っているのかな」


 するとカミロは顔を近づけて小声で言ってくる。


「ファビオの奴は違うな、あいつは実力があって上昇志向が強い奴を取り込みたいんだよ、だから俺より遥かに実力が劣るエミールを側に置いているのさ」

「それは違うだろ、君は信じられない程の馬鹿だから相手にされべっ……だから痛いから止めろよ」


 またしてもカミロの頭突きがクロードに落とされる。性格は似ていない二人なのだが意外と仲が良いのかも知れない。


「余計な口を挟むんじゃねぇよ、話を戻すとだな、奴は家柄で差別はしない男だな、まぁ人たらしの才能がある奴さ、それだから敵に回すと怖い奴になってしまうんだ」

「敵ッてエリサの事か、あれは馬鹿な事をしようとしたイサベルを止めただけだろ」

「それが大問題なんだ、エリサが止めたのがモンロイ家のイサベルだからな」


 クロードの憶測も交えながら話してくれたが、ファビオの実家であるエストラダ家はイサベルの実家であるモンロイ家と手を結びたいらしい。確たる証拠はないそうだがファビオがイサベルに婚約を申し込んでいるとの噂まであるそうだ。


 それには上級貴族の派閥争いが関係しているようだが、あくまでも噂でしかない。


「それでイサベルの機嫌をとる為にファビオまでもが男達に指示をしているって言うのか」

「いや、ファビオは何も言っていないさ、いいか、イサベラは侯爵家なんだ。止められるのはファビオしかいないのに奴はそうしないからこうなったんだよ」


「ガキが忖度かよっ」


 思わずテーブルを叩いて立ち上がってしまい周りから注目を集めてしまったが、ディルクが笑いながら誤魔化してくれたのでまた椅子に座り直した。


 苦々しい顔をしながらカミロは静かに話し出す。


「いいか何を勘違いしているのか知れねぇけど、学校内では平等だなんて幻なんだ。よく考えてみろよ平民と貴族でクラスが分けられていること自体が矛盾しているだろ、下手にイサベルと揉めたりしたら家に迷惑が掛かるかも知れねぇんだ。それに俺達は男爵家だからな、無力なもんさ、エリサがクラスで存在を無視されているのは侯爵家に逆らったからなんだ。はっきり言って自業自得なのさ」


「なぁ二人もカミロの意見と同じなのか」


 俺はディルクとクロードの目を真っすぐ見たが直ぐに視線を逸らされてしまったので同じだと言う事だろう。


 んっもしかして俺の方がガキなのかも知れないな、どうしたんだ?長い物に巻かれるのが当たり前だと思っていたこの俺が何を抗おうとしているんだ。


 俺が自分の感情に自分自身で驚いているとディルクが目を下に向けたまま話し出す。


「君に言ったはずだよ、いくらエリサちゃんの父上から頼まれたかも知れないけどたかが子爵なんだよ、どうあがいても侯爵に敵う訳はないのさ、そもそもさ、権力に勝つ奴なんている訳無いんだよ、どうして君は……そうかアーロン先輩の影響なんだね、そうだよ君には強力な見方がいるじゃないかエリサちゃんの事はアーロン先輩に任せたら……」


 ディルクが急に言葉を止めて俺の後ろを見ているし、カミロやクロードも口を開けたまま同じ方向を見ている。


 嫌な予感が予感すると同時に背中に氷を投げ込まれたかのように冷たさが襲って来たので振り返るとアーロンが怒りの形相で俺を見つめていて次の瞬間には顔が破裂したような激痛とそれと同時に静寂が訪れた。



 ◇◇◇



 顔に冷たい何かを掛けられたので飛び起きると激痛が呼び起こされ、目の前には恐ろしい顔をしたままのアーロンが俺を睨みつけていた。


「あっ」

「あっじゃねぇ~よ、お前らがコソコソ話しているからちょっと気になって聞いて見れば何なんだよお前は、グダグダしてんじゃねぇよ、何の為にお前は此処に来たのか分かってねぇのか、それになお前が動かねぇくせにいきなり俺に頼ろうとするか」


 俺よりも遥かに年齢が下の兄貴に威圧されるだけで身体が震えてくるが、それと同時に怒りが身体を包み込んでくる。


「いきなり殴る事ないでしょ、俺がいつ兄貴に助けてくれってお願いしたかよ、俺はね先ず情報を集めていたの、それなりに集まってきたからようやく行動に移す時になったというのにさ、何の話を聞いたら俺をあんな風に殴れるんだよ」


「うっ、もしかして俺の勘違いなのかな」

「だろうね、もっとよく思い出してみなよ、俺がエリサを見捨てる発言をしたかどうかってさ」

「いや、あの、敵う訳が無いとか……自業自得だとか……」

「俺の言葉じゃないよね」


 もうお兄ちゃんなんて言ってられない。どんどん弱気な表情に変わっていくアーロンに仕返しをしたいがそれだけはグッと堪える。


「そう言えばそうだったよな、俺はエリサが酷い目にあっているって耳に……」

「俺がそれをどうにかするつもりなの、それなのにちょっと酷くないかな、ねぇかなり痛いんだけどどうにかしてくれよ」

「すまん、俺には直せないが……ちょっと呼んでくるからお前は自分の部屋で待っていろ」


 アーロンはそのまま走りだしてしまった。


 ったくよ、此処は何処だよ、こんな場所に連れてきて俺をどうするつもりだったんだ。

 あ~もう、痛すぎてまた意識が飛びそうだよ。

 これだから脳筋のガキは困るんだよな。


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