プロローグ
「やったぜ、今日は3時間も眠れるじゃないか」
深夜1時過ぎになって世間ではブラック企業と言われる会社から自宅に戻って来た鴻上明は着ているスーツも脱がずにそのままベッドの上に倒れ込んで深い眠りに落ちて行った。
◇◇◇
『おめでとう。これを聞いている100人の者達は新たな世界で新しい人生を送る事が出来ますよ、何処の世界に行くのか私には分かりませんが、どうかこの世界の代表として活躍して下さいね』
勘弁してくれよ、何処の馬鹿がこんな時間に外で騒いでいるんだ? こっちは明日も大事な仕事があるんだから静かにしてくれ、俺が働かないと周りが迷惑するんだよ。
『疑問はあるかと思いますが、早速旅立ちますよ。ですからもうこの世界の事は忘れて下さい、あなた方の代わりにその身体を引き継いだ者が上手くやってくれますので』
眩暈が起こったかのように頭の中が揺れ始めたので無理やり目を開けると小さな机の上にパソコンが一つ置いてあるだけの壁に囲まれた部屋の中にいた。
どうして……そうだよな、まだ夢の中だよな。
「誰かいないのか~」
「ちょっと何なのよ、此処は何処なの」
「おいっ何をしやがった」
何処からか数人の声が聞こえてくるがそれが直ぐ近くなのかどうなのか良く分からない。するとこの部屋の中に声が響き渡った。
『あ~あ~あのさ、ちょっと黙ってくれないか。君達は五月蠅いんだよ、それ以上騒ぐとそのまま追い出しちゃうぞ』
「あ~ん上等だよ、だったら隠れてねぇで出て……」
甲高い声の持ち主は話の途中なのに声が聞こえなくなってしまう。
おいおいどんな夢なんだよ、何かの映画の影響か……違うよな映画やテレビなんて何年も見た記憶何て無いじゃないか。
段々とこれが夢では無いような気がして心臓の高鳴りが激しくなってくる。
『もう他に文句を言う奴はいないよな、いいかい僕は【観察者】と言ってね、そうだな君達の世界では神のような存在と思ってくれたらいい。それでは説明を始めるから黙っていてくれよな、僕は邪魔されるのが嫌いなんだ』
神だと、いや観察者か、何を言っているんだ。
『君達は知らないけど別の世界がいくつもあってね、それぞれに観察者がいてたまに集まりがあるんだけどそこで決まった事なんだ。まぁ今までも何回かやってかなり改善されたから安心してくれ、だから君達には特別にステータスを上げてあげるからさ、その方法は簡単で目の前にある端末の好きな項目に数字を打ち込むだけでいいのさ、いいかい0だとそれが無いんじゃなくて今のままだって事さ、さぁ制限時間は30分だ。10ポイントを振り分けてくれよな……おっといけない、言語理解はサービスで分かるようにしてあるから打ち込まなくていいからね、さぁどうぞ』
どうぞじゃないだろ、こんな馬鹿な事に付き合っている時間は無いんだ。俺は会社を勝手に休む訳にはいかないだよ……そういやこの前の休みは何時だっけな。
目の前のパソコンに明かりが灯ったので何気なく見てみると色々な項目が書かれていてその隣に数字を打ち込める欄があった。
最初に基礎能力と書かれていてそこには俊敏力、体力、集中力などが書いてある。どれぐらいあるのか少し気になったのでマウスで少し下にスクロールしてみた。
馬鹿かよ、どう見ても項目が多すぎるだろ、それに俊敏力と瞬発力の違いは何なんだよ。
何となく適当な場所に数字を打ち込むとちゃんと入力が出来たが、11と打ち直すとエラーが表示されたのでまた0に戻してみる。
もっと下を見てみると今度は特殊能力と題名ついていてそこには数々の属性魔法やら察知能力や霊感能力まで書いてある。
素直に信じる事は出来ないが状況がつかめないのでただただ上下にスクロールさせている。
『おいおい、何で半分以上が何もしていないんだ。これは現実なんだから諦めて受けいれろよな、まぁ10ポイントじゃ少ないのかも知れないが、何の努力もしないで得られるんだからいいじゃないか』
ほんの数分後、先程よりもイライラしたような声がまた聞こえてくる。
『あぁもう仕方がないね、今から一番上にランダムボタンを出すからせめてそれぐらいは押してくれよな、それを押せばランダムで30~100ポイントを勝手に振り分けるからさ、いいかい、何もしなければそのままでこの世界に入るんだぞ』
こいつは何がしたいんだ? 良く分からないが指示に従った方が良いのか、そうなると何を選んだらいいのか分からないぞ、そもそもゲーム何て10年以上やる暇すらなかったんだからな。
『はい、残り1分だ』
あぁもうランダムでいいか、どうでもいいから早く解放してくれ、どうせ誰かのサプライズなんだろ。
◇◇◇
終了時間になったのかいきなりパソコンの画面が消え、そこから黒い球体が出て来た。その中央には口の様な物があり驚きのあまり身体が固まってしまった俺に話し掛けてくる。
これはホログラムじゃないよな、こんな精巧な技術を使ってまで何がしたいんだ。
『君はランダムを選んだのか、それでは一緒に見てみよう』
目の前に文字が浮かんでくる。
言語理解(2)
肉体成長(5)
体力(1)
視力(2)
火属性魔法(1)
風属性魔法(1)
水属性魔法(1)
土属性魔法(1)
聖属性魔法(1)
闇属性魔法(1)
魔力(20)
使い魔(50)
「あの、これは何なんですか」
『何を言っているんだ、これが今の君にプラスされる能力だろうが』
これは何なんだ? 現実だと言うのか?
「質問していいですか、どんなゲームなんですか、出来ればやりたくないんですけど」
『君は理解能力がないな、まぁいい、それより君は面白いな、言語理解なんてサービスであるんだから無駄だしけど魔法の1なんて魔力が20もあるんだから使い放題だな」
「それは良い事なんですか」
「そりゃそうだろ、まぁ1の魔法だから威力はたかが知れてるけどな」
もう訳が分からないが一先ずは指示に従うしかない。
「けどそのうち強力な魔法を使えるようになるんですよね」
「ほぼ無理だろうな、最初に使える魔法以外は使えないと思った方がいいな、何せ君に世界には魔法が無いのに君は魔法成長が0のままだからね、選ばなかった君が悪いんだ」
そんな事を言われてもランダムなんだから仕方がないだろ、まぁこんな意味無い事にいちいち文句を言うつもりはないけどな。
「それで、この先はどうなるんですか」
『まぁ待てよ、それより使い魔の50は危なかったな、もし君の魔力が少なかったら直ぐに死ぬところだったぞ』
だからそれも知らないって、もうどうでもいいから早く解放してくれ、訴えないって言えば無事に解放してくれるかな。
時間が過ぎるにつれどんどんと焦って来る。どう考えても会社には遅刻となってしまうだろう。
こんな状況だと言うのに鴻上友は会社に行く事を考えている。普通だったらありえない事だが10年以上もあの会社にいたせいで思考回路が壊れてしまっているようだ。
「そろそろ良いですか、早く終わりにしたいので……」
『君って奴は……まぁいいか、いいかいこれだけは言っておくよ、君が異世界人だって事は誰にも言ったら駄目だからね、君も聞いた方も死ぬ事になるぞ、まぁ同じ境遇の人間だったら良いんだけどな』
「分かりました。絶対に秘密にしますので早く進みましょう」
『本当に分かっているのか』
此処を出たら急いで会社に行って……あぁ何て言ったら良いんだ。これでまた当分家には帰れなくなるぞ。
3000字前後を目標に書いて行きたいと思います。
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