第五十五話 皆で夢の世界へ
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
さくらさんと部屋に戻ると、裸にメイドエプロンをしたロキシーが出迎えてくれる。
まだ全裸のままだったんだ……誰か服を貸してあげれば良かったのに……
「創にゃん、何考えているか大体わかるけど~、あれワザとだからね~」
そ、そうなんだ。余計なこと言わなくて良かった。
「その格好可愛いねロキシー」
「はうっ!? そ、そそそうですか? でしたら一生このままでいます!!」
いや……それはちょっと……困るかな。
「お風呂上りに冷えたフルーツ牛乳をどうぞ。ご主人さまは成長期ですから、たくさん飲んでくださいね。さくらさまはお水で良いですよね?」
「いいえ~、私もフルーツ牛乳いただきます~!」
『……それ以上大きくしてどうするつもりですか』
「ん? 何か言いましたか~?」
「いいえ~、何でもないです~!」
「うん、キンキンに冷えてて美味しいね、さくらさん」
「お風呂上がりには最高です~」
火照った身体に冷たいフルーツ牛乳が染み渡るよ。
「ありがとうロキシー」
「それは良かったです。本当は私の冷やし体液をご用意したかったのですが、皆さまにとめられてしまい……」
冷やし体液ってなんだろう? 気になるけどちょっと怖い気もする。
「試しに飲んでみますか? さくらさま」
「いいえ、結構です~」
さくらさんとロキシーも仲良さそうで良かった。
「「「「お帰りなさい」」」」
すでに買い物に出かけていた葵たちも戻って来ていて、部屋の中は色とりどり花が咲くパジャマのお花畑みたいだ。
「ど、どうだ? 新しく買って来たパジャマなんだが……似合うかな?」
那須野さんは真っ赤な生地に「スイカは野菜」のプリントがデーンと入った個性的なパジャマを恥ずかしそうに披露してくる。
「うん、とっても可愛いし、那須野さんに似合ってる」
「そうか! 悩んだけどこれにして良かった」
那須野さんを皮切りに、みんなが次々新しいパジャマを見せに来るから、なんだか僕も新しいパジャマが欲しくなってきた。
「夢神……すまん、ダンジョンから直帰したからパジャマが無いんだ」
黒崎先生、綾さん、焔さんは湯上りのバスタオル姿のままだ。もしかして……その格好でここまで戻って来たんですか? さすが四天王、肝が据わってますね。
「僕ので良ければ貸しましょうか?」
申し訳ない気もするけど、ちゃんと洗ってあるし、裸よりは良いよね?
「お、おおうっ、もちろんだ、ぜひ、貸して欲しい!!!」
「い、良いのっ!? 夢神くんのパジャマ、借りて良いのっ!?」
なぜかめっちゃ興奮している黒崎先生と焔さん。
「おふっ……夢神の匂いがする……たまらないな」
「えへへ……夢神くんのパジャマ袖が長くてだるだるだよ、ふふふ」
「「「くっ……羨ましい!!」」」
なぜか他の皆さんからも要求されたけど、そんなにパジャマ持ってないよ……
「むう……夢神、私には少々小さすぎるようだな」
180cm以上ある綾さんが着るとパジャマがピッチピチだ……お腹も見えちゃってるし。
「仕方ないですね……綾さま、私のエプロンと交換して差し上げます」
「おお、すまんなロキシー」
いや……綾さん!? 裸にメイドエプロンで良いんですかっ!? サイズ合わないから色々はみ出ちゃってますけど……?
まあ、パジャマでひと悶着あったものの、無事全員でベッドインすることに。
葵、那須野さん、不知火さん、柴田さん、影野さんの五人に加えて、四天王の皆さんとロキシーで十名か……広すぎると思ってたベッドだけど、そうでもなかったかもしれない。
「不知火さん、すぐに手狭になるって、こういうことだったんですね」
この部屋に初めてやって来たときに言われた言葉を思い出す。
「違います」
……違うの?
ここまでの大人数になると、これまでのように全身で密着することが出来なくなる。
果たして体の一部が触れていれば大丈夫なのか、その辺りが実に興味深いところ。
今夜は四天王の皆さんが優先。
「だ、大丈夫か夢神? 苦しかったら先生に言うんだぞ?」
「すまんな夢神、こんな格好で」
「ふふ、創にゃん……もっと強く抱きしめても良いんですよ~?」
「お、お邪魔、するね。はうっ!? ええ!? こ、こんなに密着するの!?」
なんだかんだ皆さん楽しそうで何より。
他の六名は隙間から触れてもらう。
うん……これは……さすがに寝苦しいかもしれない。
運命さんの眠りのキスがあればすぐに眠れるんだけど……結局、今夜も帰って来なかったな……。
「御主人さま、私にお任せくださいませ。こうみえて夢魔族の端くれ。すぐに夢の世界へと誘いましょう」
以前のロキシーだったら絶対に駄目だけど、僕の眷属になった今のロキシーとは紋章を通じて繋がっていて、考えていることもわかるんだ。だから安心してお願いすることが出来る。
「じゃあ頼むよ、ロキシー」
「かしこまりました。それでは皆さま……良い夢の旅路を……」
ロキシーの翼が部屋中に広がって、まるで闇のカーテンのようにベッドを包み込む。
まるで光に誘われるように、僕は眠りに落ちて行った。
「おお……ここが夢の魔境……想像以上に凄いな……」
「うむ、魔力の濃度がヤバい……下手するとその辺の雑草にも負けるかもしれん……」
「わあ~!! お城がありますよ~。へえ~あれが創にゃんのお屋敷なの~? すごいわ~」
「ふむ……実に興味深い……紫や楓も一緒に連れて来るべきだったね……」
初めてここにやって来る四天王の皆さんも興味津々といった様子で。
「御主人さま……ここは素晴らしいですね! 私が居た世界に似ていますが、これほど濃厚な魔素は知りません。魔王城の最奥ですら物足りなく感じてしまいます」
ロキシーも大はしゃぎで、深呼吸で魔素を吸い込んでいる。
そして他の皆はというと――――
「きゃあああ!! コタローちゃん!!」
「しらたまちゃん、会いたかったああああ」
「ごましおちゃん、お腹、お腹ダイブしていい?」
『おいおい……創、なんか毎日増えていっていないか?』
「あはは、ごめんねコタロー」
『いや別に良いけどな、俺たちは嬉しいから大歓迎だし』
さすがにこれ以上は増えない――――と言いかけて、ふと巫先輩のことが頭に浮かんだ。
誘ってみようかな……なぜかそうした方が良いような気がする。
とはいえ――――
今は……コタローたちのお腹を堪能するのが先決なんだけどね。




