表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/77

第五十三話 コウモリ女


「たぶん黒崎先生が会ったというコウモリ女を、捕まえたんです」


「な、何だとっ!? 本当か……夢神?」


「はい、先生。さっき襲ってきたところを撃退しました。運命さんがいないので、出すなら皆さんがいる今がチャンスかと思いまして……」


「そうだな……このメンバーが揃っているなら問題ないだろう。運命さまによると、魔族の転移は発動までに二秒ほどかかるらしい。それだけ余裕があるなら瞬殺出来るし、焔の結界を展開しておけば、おそらく発動そのものができないはずだ」


 焔さんすごい!! 結界とかめっちゃカッコいい!!


「ま、まあね、それぐらいなんてことないよ。効果範囲が狭いからそんな万能じゃあないんだけどね」


 謙遜しながらも満更でもなさそうな焔さん。


「厄介なのはコウモリ女の魅了だか支配だかの能力だが、おそらく同格の存在には効果は薄いはずだ。私もレジスト出来たからここにいるメンバーなら問題ないだろう。


「ああ~わかります~。そういう系統のスキルって、相手との力量差が大きいほどかかりやすいんですよね~」


 さくらさんが大きく同意する。唯一気になっていた部分だけど、そういうことなら問題なさそうだ。



「じゃあ出しますね」


 大丈夫だとは思うけど、万全の備えをしつつ、四天王の皆さんが見守る中、拡張リュックの口を開ける――――


挿絵(By みてみん)


「ああ、間違いない。私がダンジョンで会ったのはコイツだ」


 気を失ったままのコウモリ女を見て、黒崎先生が頷く。やっぱりそうか。


「しかしけしからん身体をしているな。焔に半分分けてやればいいものを……世の中不公平で辛いな……」

「綾……勝手に僕の身になって辛くなってくれてありがとね。百発殴るよ?」


 綾さん、なんであんなこと言うんだろう? たしかに焔さんの胸は大きくないけど、とても似合っているし気にすること無いと思うのに。


「焔さん、僕はそのままで素敵だと思いますよ」

「む、夢神……くん、キミは本当に良い子だね。抱きしめても良いかい?」

「どうぞ」



「うーん、このまま眺めていても仕方ないわよね~? 意識だけ取り戻すようにしてみましょうか?」


 さくらさんの提案を皆、了承する。


「わかった~。じゃあ準備しましょうね」


 コウモリ女の衣服をすべて剥いでゆくさくらさん。


「あの……黒崎先生、さくらさんは一体何を?」

「あれは……趣味だな。まあ尋問するにもそのほうが都合が良いだろ」


 苦笑いする黒崎先生。なるほど……趣味なら仕方ないよね。


「じゃあ覚醒させるわね~」


 全裸になったコウモリ女の額に手を当てると、思い切りデコピンをかますさくらさん。


『ぎゃああああっ!?』


 痛みと衝撃で目を覚ましてのたうちまわるコウモリ女。


 ……えええっ!? スキルとか使わないんですか!? 


 ……どうでもいいけど、めっちゃ痛そう。



『……はあああっ、痛いっ!? 頭が割れるかと思ったわよ……』

 

 目を覚ましたコウモリ女が、周りを見渡して――――僕と目が合った。



『も、申し訳ございませんでした、ご主人様っ!!』


 慌てたように土下座を決めるコウモリ女。え……ナニコレ?



「む、夢神……まさか……お前が黒幕だったのか?」


 信じられないという風にガクガク震えている黒崎先生。


「零、お前は馬鹿なのか? そんなわけあるか。夢神はここに来る前に散々いたぶって調教かましたんだ、わかれ愚か者」


 いや綾さん……違いますけどっ!? っていうか調教ってなんですか?


「いやいや、違いますって、僕にも何がなんだか……?」


 とはいえ、このままだと誤解がエスカレートしていきそうだし、はっきりさせておかないと。


「あの……コウモリ女さん、ご主人さまというのは一体どういう意味でしょうか?」


『はい!! 私、ご主人さまに激しくされて目覚めてしまったのです』


「ははは、なんだ夢神、やはり調教したんだな」

「夢神……可愛い顔してやることがえげつないんだな……」

「創にゃん、私、そういうのも嫌いじゃないわよ~?」

「あの……夢神くん、ボク痛いのは苦手なんだけど?」


 駄目だ……四天王の皆さん、誤解がエスカレートしている。


 こういう時は、小さなことからコツコツと積み上げてゆくしかない。


「コウモリ女さんの名前は?」

『ロキシーです。別にコウモリ女でも構いませんが』

「ロキシーさんは何のためにここに来たんですか?」

『魔王様の命令で、この国の戦力の確認とヨツバアオイの身柄確保が主な目的です。ついでに面白そうな紋章持ちを何人か連れ帰るつもりでしたが、ご存じの通りご主人さまに打ちのめされて――――』  

 恍惚の表情を浮かべるロキシーさん。


 魔王とか色々聞きたいことはあるんだけど、今確認しなきゃいけないのはそこじゃない。


「えっと……ロキシーさんは――――」

『ロキシーとお呼びください』

「えっと、ロキシーは、なんで僕に打ちのめされたのにご主人さまとか言い出しているの? どこか打ち所が悪かったの?」


 なんだか最低な感じの質問になってしまったけど大丈夫かな?


『私にもよくわからないのですが、私の中にあった魔族の呪いが消えて、その代わりにご主人さまの紋章が刻まれたのです。ちょうどこの辺りに――――って、嫌ああああっ!? な、なんで私全裸なんですかっ!? はっ……なるほど、そういうことでしたか。取り乱したりして申し訳ございません。さあご主人様、どうぞこの身体、存分にお召し上がりくださいませ』


 全裸で抱き着いてくるロキシー。あの……皆さん笑ってないで助けてください。特にさくらさん、貴女が脱がしたんですよね? 何とかして!!





「おそらく夢神くんの持っている『無属性』の力が、魔族を縛り付けている制約、呪いのようなものを上書きして無効化してしまったのだろうね」


 焔さんが状況を分析してくれる。さすが『賢者』と呼ばれるだけあって、すごい。


「なるほどな……しかし夢神の『無属性』の力とやらは、本当に滅茶苦茶だな。何でもアリのような気がしてきたぞ」


 黒崎先生が呆れたように笑う。たしかに言われてみればそんな気がして来た。


「ふむ……魔族を支配下におけるのならば、魔物も同じように使役出来るんじゃないのか?」


「綾の考えも荒唐無稽とは思えないよね。実際、夢神くんの力ってダンジョンのルールにすら及ぶみたいだからね」


 焔さんの言葉で思い出す。ああ……そういえば出現前のボスは倒せないはずなのに倒しちゃったりしていたし、宝箱からレアとか新種が出たりしたような……



「まあ難しいことはこの辺でいいんじゃない~? ロキシーの件も大丈夫そうだし、早くお風呂に行きましょ、創にゃん!!」


 さくらさんの言葉で、議論は一旦おしまい。


 ロキシーにはみんなの質問に素直に答えるようにお願いしておいたから大丈夫だと思う。


 さあ、さくらさんとお風呂、楽しみだな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お前が黒幕か云々の部分で思わず噴いてしまったではないですか(*´艸`*) この4人で漫才コンビ結成したら絶対売れる(確信
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ