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・異世界からの手紙の書き手

 俺はそこから小一時間をかけて、『かりんさんのパンツをトイレで下半身丸出しの状態で、広げていた事件』の釈明をした。

 必死の説得のかいあって、ようやくかりんとかりんの父母は状況を理解してくれたらしい。

「そういうことか、まあ思春期ならそう言うこともあるかもしれないな」

 かりんの父は、男同士ということもあってか、なんとなく納得してくれたようだった。

「ふう、じゃあ、わかったよシキミ君。もう慌てて私の下着を取らないでね?」

「はい! モウシマセン! ゴメンナサイ」

 かりんの俺に対する誤解もなんとか解けたようだ。

「はいはい、じゃあ、かりんちゃんもシキミ君もお父さんも、みんなでお茶にしましょうね」

 かりんの母のとりなしもあり、その場はなんとか収まった。

 俺はこの小一時間で、一気に十数歳くらい老けた気がする。

 本当に疲れた……。


 かりんの母が入れてくれたお茶をみんなで飲み、一服した。

「そういえば、シキミ君は何をしに我が家へ?」

 かりんの父が湯飲みを置くと同時に俺へ質問してきた。父としては娘の交友関係が気になるのだろう。

「あ、はい。それが、その。異世界からの手紙の謎を解いてほしいとのことで……その……」

 我ながら何と言っていいのか分からない状況説明をしてしまった。

「……そ、そうか」

 一瞬、かりんの父と母の表情が固まった。

「そうそう。そうだった。で、シキミ君、本題に戻るけど、あのお兄ちゃんから届いた異世界の手紙、どう思うの?」

 かりんがお菓子に手を伸ばすのを止め、聞いてきた。

 それだ。

 俺もお茶を飲みながらそれを考えていた。

 ここまでのかりんの反応を振り返ると、あの手紙を書いていたのは、どうやらかりんではないらしい。

 もちろんライトノベルの新人賞に応募をしているのでもないらしい。ライトノベル自体にも興味がないみたいだ。

 そして……もちろんあの手紙は異世界からの兄からなどでも、たぶんないだろう。

 たぶん、ね。だって現実ではそんなことは、起こりえない。

 現実に起こりえないからこそ、俺たちはライトノベルを読むんだ。架空の世界に一筋の希望を見出すために……。


「ん……? 架空の世界に一筋の希望……?」

 俺の口から、脳内であふれた言葉が飛び出した。

「どしたの? シキミ君」

 再びお菓子をほおばっていたかりんが、不思議な顔をしている。

 俺はかりんの両親の顔を見た。

 かりんの父母は目を細め、微笑んだ。

「一筋の希望……そうか……。そうですよね……」

 ―手紙の書き手が、真意が分かった―


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