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・イマノオニイサン

 一体、どうしてこうなったんだ。

 俺はただ、同級生に異世界からの手紙の相談を受けていただけなのに。

 いまの俺は、クラスのアイドル的存在かつ、片思いの女子、花山かりんのパンツを握りしめ、彼女の家のリビングのイスに座っていた。

 目の前には険しい顔のかりんの父。と不思議そうな顔をしているかりんの母。

 そして、キョトンとしているかりんがいる。

この状況こそがまるで異世界だ。

 

 もう一度言う。

 一体、どうしてこうなったんだ!

 俺は素早く脳内を整理する。

 かりんは俺のことが前から好きで、俺と仲良しになるために、異世界の兄から手紙が来たという話をでっち上げ、俺に相談していたはずだ。

 そう、兄が死んだという作り話をこさえてまで……。


「ん?」

 その時、リビングの奥の棚の上に、一枚の写真立てがあることに気がついた。

「あの、かりん……さん? あちらの写真は……」

「あれが、去年交通事故で亡くなったお兄ちゃんだよ?」

 かりんはそう言った。今日ずっと、その話してたよね? とでも言いたげな表情で。

「あ、ああ……そ、そう、ですか。あちらがお兄さん。そう、ですよね」

 俺は手の中の桃色の生地を握りしめる。

 どー言うことだよ! 作り話じゃないじゃん! ホントの話じゃん!

 えっ? 待って待って? 

 っていうことはあの異世界からの手紙も本当なの?


亡くなっていたのは本当だったのだ。

俺はバカだ。なんて馬鹿なんだ。


「シキミ君、だったね?」

 かりんの父が重いトーンで話しかけてきた。

「ひゃい!」

 思わず変な返事をしてしまった。

「その手の中の布を広げてみなさい」

「ひゃ、ひゃ、ひゃい」

 俺は手汗でぐっしょり、しおしおのシワシワになったかりんの下着をテーブルの上に広げた。

「え、それ、私の!」

 かりんはすばやく下着を奪い取り、テーブルの下に隠した。

 ……終わった。俺の始まりそうだった恋が終わった……。

 ……いや! まだまだ! ここから挽回できる! かもしれない!

 可能性はゼロじゃない! たぶん!


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