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8. 屋敷

鳥のさえずりで目を覚ますとふかふかのベッドに違和感を覚え、あたりを見渡してみると見慣れつつある屋敷の自室でこれは夢かと何度も目を擦ってみる。


「エレノア様、おはようございます。」


「おはよう、ミリア。」


「どうかされましたか?」


「私、昨日宿屋に泊まらなかった?夢だったのかな。」


「あの後、旦那様が迎えに来られたのですよ。エレノア様はぐっすりお休みでしたので起こされなかったみたいです。」


「え、なんで迎えに?ミリアの故郷に行く予定してたのに…。」


「しばらくは無理そうですね。」


「どうして?」


「旦那様が馬車を出すことを禁じられたので…。」


「は?そんなことされる筋合いない!ちょっと文句言ってくる。」


転生してから出来た楽しみを奪われる等、許せるはずもないと寝癖の付いたネグリジェ姿のまま彼の執務室の扉を開け放った。


「起きたのか。」


「馬車を出すことを禁じたとか。それ、どういうことです?私が何をしようと関知しない。そういう話でしたよね。」


「そうだったな。」


「なら今すぐ取り消してください。次に行くところ決めているし、迎えも本当に迷惑なのでやめてもらっていいですか。私にも予定というものがありますから。」


「…取り消すつもりはない。それより、首元にあるそれはなんだ。」


「首元の物より馬車の話です!嫌がらせのつもりなら私は屈したりしませんから。馬車がないなら徒歩で行くまでです。」


「徒歩だと?やれるものならやってみればいい。すぐに根を上げることになる。」


売り言葉に買い言葉とはこのことを言うのだろう。

だが、言質は取った。

ビジネス用のパンプスとはいえ、仕事で歩き回っていた私をナメるなと心の中で思いながら自室へと戻れば、オロオロしたミリアの姿が見える。


「エレノア様、大丈夫ですか!?」


「問題ないよ。これから着替えて出掛けてくるからミリアは屋敷でゆっくりしていてね。」


「出掛けるって街にですか?それなら私も!」


「ううん。徒歩ならどこに行ってもいいって言質は取ったからね。宿屋の主人が言ってたウェストラインの街に行ってみようと思ってる。そこにはパエリアとかあるんだって!ドルチェもきっと美味しいだろうなぁ。」


「ウェストラインまでは馬車でも半日掛かる距離ですよ!?徒歩で行くなんて…。」


「うん、だからミリアは来なくていいんだよ。私の我が儘だから。」


「エレノア様がダメと仰っても勝手についていきます。私は山育ちの侍女ですよ?平坦な道を歩くくらいなんともありません。」


何度か止めては見たものの、ミリアを説得するのは公爵を説得するより難しいともう諦めた。

野宿に必要になりそうなものを準備し、ドレスではなくミディ丈ワンピースとローヒールパンプスに着替えて鏡で確認。

エレノアは今日も綺麗だ。

長い髪をポニーテールにすれば暑くなりつつあるこの時期には丁度いいだろう。


「そろそろ行こっか。」


「はい。」


大きなリュックを背負うミリアに何度も半分持つと提案したのだが、了承することはなく。

結局小さめのショルダーバックに入る飲み物や傷薬などだけ持つことになった。

気を使われていることに小さく溜め息を溢しながらエントランスに向えば、明らかに不機嫌そうな公爵の姿が見えたが無視だ無視。

絶対に音を上げて帰ってやるものかと意気込みながら屋敷を後にするのだった。

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