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29. 穏やかな日々

目を覚ますと自分が腕を絡めている存在に首を傾げる。

最後の記憶は殺し屋に繋がる有力情報が手に入ったという殿下からの手紙を読んだところで。

いつの間に彼女のベッドに入り込んだのだろう。

せっかく目を覚ましてくれたエレノアをまた怒らせてしまうのではないかと慌てて離れると彼女の膝で気持ち良さそうに眠るロルフとライオネルが見えた。

これはどういう状況だ。

寝起きの頭をフル回転させていると彼女の目がパチリと開く。


「すまない。記憶がないとはいえ勝手に寝所に…。」


「謝る必要はないよ。それよりもう少し寝たら?まだ顔色悪いし。自分の部屋で寝たほうがいいならそれでも…。」


「…ここが良い。エレノア、愛している。」


「はいはい。早く目閉じて。」


呆れたようにそう言う彼女に促されるままベッドに体を預け、先程と同じように腕を絡めた。

眠気のせいか暖かい体温は気持ちが良い。

エレノアが許してくれているのならと目を閉じてみればすぐに眠ることが出来たようだ。

1時間程するとロルフとライオネルも目が覚めたようで久々に感じる身軽さに苦笑しながら身体を起こした。

それと同時に開け放された扉に皆の視線が集まる。

エレノアしか居ないと思っていたミリアがスフォリアテッラを持ってきたのだ。


「エレノア様!完成しましたってこれどういう状況…ですか?」


「皆でお昼寝タイム?」


「それなら私もお仲間に入りたかったです!」


「ごめんごめん。スフォリアテッラ作ってくれてるのわかってたから。次回は声掛けるね。」


「はい!こちらに準備しますね。」


ニコニコと笑みをうかべ中央のテーブルにティータイムの準備をしていく。

紅茶と切り分けたスフォリアテッラを奥側の席に置けば完成。

それを見るとすぐさまソファーへと腰掛け、キラキラとした眼差しのまま手を合わせた。

いただきますと食事の挨拶を済ませ、口に含んでみるとサクサクの生地の中に少し酸味のあるクリームチーズと木苺のジャムがとても良く合う。


「…どうでしょう?」


「美味しい!!」


「本当ですか!?味見はしたのですが、良かったです!」


「…私も貰おう。」


スフォリアテッラにエレノアを取られたジュリアスは不機嫌そうな表情をしながらも、満面の笑みを浮かべる彼女にそれ程美味なのかと気になったようだ。

切り分けたそれを皿に乗せ、エレノアの向かい側の席へと置けば小さく欠伸をもらしながら補ファーへと腰掛けた。

フォークで口に含むと彼女が満面の笑みを浮かべるのも頷ける出来栄えで軽く頷く。


「流石ミリアだね!」


「いえ、まだまだですよ。パイ生地をもう少しサクサクに仕上げたいので、次回も頑張ります!」


「うん、楽しみにしてる!」


そう言って楽しげにするエレノアに皆安心したような表情を見せていた。

毒の影響が何処に残っているかわからないというトラヴィスの言葉は常に彼らの心に影を落とし続けているらしい。

彼女の元気な姿は儚く消え去ることを知ったから余計だろう。

視線を向けながら小さく息を吐くのだった。

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