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21. 眠りと解決

抵抗していたエレノアの身体から力が抜け、深い眠りに落ちたことを確認するとそのまま抱き上げれば顔が胸に寄り掛かってくるのを感じ、じんわりと暖かくなっていく。

怒らせるつもりはなかった。

ただ、公爵という立場として当然のことを言っただけ。

そのはずが、完全に彼女の機嫌を損ねてしまったことに大きなため息を溢すと隣から笑い声が聞こえてくる。


「ライオネル、五月蝿いぞ。」


「すみません。あまりにも滑稽でつい。それにしてもエレノア様は優しい方ですね。あのような態度を取っていてもこの状況で自らの犠牲を選ぶとは驚きです。」


「…驚きじゃないだろう。犠牲を選んでもらっては困る。」


「おい、いつまで話してるつもりだ!」


「あぁ、忘れていた。今なら最小限の被害で済むがまだやるつもりか。」


「こっちには人質が…!?」


「子供達の周りをうろうろしていたあの気持ち悪い方々ですか?すみません。あまりにも目障りなので川にポイ捨てしてしまいました。」


「何だと!?侍女ごときがそんなことできるはず…。」


「エレノア様の為なら何でもできますよ。」


「というわけだ。馬車を囲っていた者はロルフに勝てるはずもないからな。残りのお前らはどうする?黒幕を吐けば手加減するだろう。私の予想だが…。」


「ふ、ふざけんな!確定されてなきゃ言えるわけ…。」


焦り始めた兵士の言葉を遮るように振り下ろされた剣。

あと少しでもズレていたらスッパリと切られていただろう。

あまりの恐怖にその場に座り込んだ彼らに抵抗する気力など残っているはずもなく、観念したように話しだした。

予想通り、王女による犯行だ。

皆の中心に居るのが当たり前だった彼女にとって、兄はもちろん。

意中の相手であるハーヴィンからも宝石を受け取ったエレノアに嫉妬したのだろう。


「エレノア様にはどうお伝えするのですか?」


「言うつもりはない。」


「それでは納得されませんよ。やはり彼らが現れることを予め知っていたと正直に話したほうが良いのでは…。」


「いらぬ心配を掛ければ自らを責めるだろう。屋敷から出なくなるだけなら良いが…。」


「エレノア様の性格を考えると俺達に矛先が向かないようにと姿を暗ますだろうな。」


「確かに…。」


「では、この件は内密にするということで良いですね。」


「はい。」


「そうだな。」


「わかった。」


「そろそろ参りましょう。エレノア様がお目覚めになる前にミノラ地方にあるカヴェコの街に着きたいですから。」


ライオネルのその言葉で各々動き出したようだ。

夏とはいえ、こちらは肌寒いため先にコーチへと戻り彼女を寝かせる。

膝枕をすれば、綺麗な横顔が見え心臓の音がやけに五月蝿い。

いつもはきつく細められた瞳は閉じられ、触れようとすれば逃げられてしまうのに、その長い髪に触れても小さな寝息が聞こえてくるだけだ。

イライアスやハーヴィンに好意を持たれるのは良い気はしないが、私とエレノアは正式な夫婦。

始まりは政略結婚という愛がない形でもその縛りは絶対だ。

彼女自身もそれは理解しているようで、公爵夫人であること自体は否定しない。

ただ、怒らせたのは私とはいえ、エレノアから二度と会いたくないなどと言われて傷付かないはずもなく。

表に見せていないだけで相当凹んでいたりする。

目を覚ましたらまた離れて言ってしまうのだろうかとそう考えるとこのまま眠っていればいいのにとそう願わずにはいられなかった。

自分はこんなにも女々しいのかと、準備を終えて入ってきたライオネルとミリアに視線を向けながら深いため息を溢すのだった。

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