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17. 療養とお菓子

怪我を負ったとはいえ、痛み止めが効いている私が部屋でじっとしていられるわけもなく、今日もまたお菓子を求めて街へ繰り出していた。

ロルフとミリアに散々止められたもののそれなら一人で行くと強行突破しかけたこともあり、不服そうな顔をしながらも後ろについて来ている。

今日の目当ては裏通りにあるマドレーヌとフィナンシェだ。

なんでも果物のジャムや生クリームを挟んだものまで売られているとか。

甘い物好きの私としては絶対に食べておきたい品だ。

自分達が買って来ればいいと提案されたものの出来立てを食べたいのだから意味がない。

以前来たときよりも出店数が増えたようで、目移りしながら目的のお店を探していると大きくマドレーヌ&フィナンシェと書かれた露天が見える。


「いらっしゃいませ!」


「ここにあるもの全て3つずつ下さい。」


「ありがとうございます。エレノア様は本当にお菓子が好きなんですね。」


「甘い物を食べると幸せになりませんか?そういう意味でも大好きです。」


店主から袋いっぱいのマドレーヌとフィナンシェを受け取り、お礼を言うと、邪魔にならない位置に移動してからプレーンのマドレーヌを一つ取り出せば、出来立てと言っていただけあってずっと持つことはできさそうだ。


「あつあつ。」


「エレノア様、こちらのナプキンで挟まれては如何ですか?」


「ありがとう。」


ミリアから受け取ったナプキンで包んでみたが、それでもまだ熱を感じるため、口に含んだら火傷するだろう。

一度戻そうかと考えていると横から手が伸びてくる。


「?」


「まだ熱いんだろ。俺が冷めるまで持っていよう。」


「ロルフ、君モテたでしょ。」


「唐突だな。」


「こういうとことか、さり気無い優しさを出してくるから女性慣れしてるのかなと。」


「聖騎士といえば女性から人気の高い職業ですから、当たり前位の感覚では?」


「いや、そんなことはない。それに、意中の相手に伝わらないのなら無意味だろ。」


「え、それって恋バナ?聞きたい!もしかしてお相手の人は他国に居るの!?」


「こっちにいる。」


「なら恋人同士になれる可能性高いじゃん!ロルフは強くて格好いいんだから相手の女性も気になってる可能性もあるし。応援するよ!」


まさかロルフの恋バナを聞けるとは思わなかった。

自分は恋とか愛なんてものに縁はないが、高校生時代に友達の話を聞いては盛り上がっていたのを思い出しながら、冷えたであろうマドレーヌを受け取るとパクリと口に含む。

強い甘さは感じないがふんわりとした食感とシンプルな作りがマドレーヌの良さなのだ。


「二人も一緒に食べない?あれ、ロルフは甘いもの苦手だっけ。」


「…得意ではないな。」


「そっか、残念。こんなに美味しいのになぁ。」


「私は頂きます!」


「うん!どうぞ。」


ナプキンで掴んだ新しいマドレーヌを手渡せば、嬉しそうにするミリア。

パクリと口に含んで美味しいー!と声を漏らしている。

そんな彼女を見届けてから同じように口を開きかけたが、ロルフの顔が近付いてきたかと思うとパクリと残りを食べてしまった。


「確かに美味いな。」


「エレノア様のマドレーヌを食べるのなら私のように貰えばよかったじゃないですか!」


「いいよ、いいよ。まだもう一つ残ってるし。全部は要らなかったんでしょ?美味しかったなら良かった。」


「エレノア様〜。それなら私だってそっちが良かったです。」


「そっち?半分こしたかったってこと?」


「殆食べ終わってるくせによく言うな。」


「ロルフ、ムカつく。」


二人のやり取りを聞きながら新しいマドレーヌを口に含めば、やはり美味しいと自然に笑みが溢れる。

あっという間に食べ終え、クリーム入りに手を出そうかと考えていたがミリアに袋を取られてしまった。


「?」


「お屋敷に戻って紅茶と一緒に食べましょう?あまり動かれると痛み止めが切れるかもしれませんし。」


「それがいい。」


「え!?あそこのパルミエとベニエ食べるつもりだからまだ帰るつもりないよ。」


「ダメです。あちらは私が買って帰りますのでロルフと先にお戻り下さい。」


「…。」


「そんな目をされてもダメなものはダメです。本来ならお屋敷から出ること自体お止めしなければならないのですよ?」


「はぁ…わかったよ。せっかくの食べ歩きだったのになぁ。」


大きなため息を溢しながらロルフに促されるまま屋敷への道を歩き始める。

あの一件からミリアはダメなときはダメとはっきり言うようになった。

それだけ心配をかけてしまったのだろうが、あんな出来事に巻き込まれるなど今後起こることもないだろう。

つい先日そう説得したのだが、ミリアどころかロルフにも否定され、余計に監視の目が厳しくなってしまったため、あまり下手なことは言うべきじゃないと理解した。

この調子じゃ遠出するなんて言っても却下されるだろう。

早く怪我を治さなくてはと思いながら小さくため息をこぼすのだった。

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