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13. 夜会

エレノアが屋敷を出てから数週間。

あんな華奢な身体で何もできないだろうと高を括って許可した外出に後悔したのは言うまでもなく。

屋敷内にいる全ての人員を使って探してみても未だ見つからない彼女に大きなため息を溢していた。

あの時、彼女が首に着けていた翡翠色の宝石が付いたネックレスに嫉妬心が芽生えてしまったのだ。

翡翠石の力をその瞳に宿した存在といえば、フェディ侯爵子息のハーヴィンしかいない。

そんな彼が自分の瞳の源である宝石を彼女に渡したということはそういうことなのだろう。

それを理解していたからこそ、腹立たしかった。

とはいえ、ただでさえ嫌いだと全面に出している彼女に当たってしまっては本末転倒だとライオネルに諭されたのを思い出し、再び深いため息を溢す。

それは彼自身に対してと、王家から来た興味のない夜会の招待状に対してでもあった。

本来なら今頃エレノアを探しに出ている時間だというのに何故こんなところでシャンパン片手にくだらない話を聞かなければならないのだとイライラしているようだ。

そんな彼の前をふと横切った赤いドレスの女性。

強めのアイラインと赤いリップは少しきつい印象を受けるが、探し求めていた存在にすぐその後を追っていく。

テラスで小さくため息を吐いている彼女は全く気付いていないようで、久しぶり過ぎて少し緊張しているのに気付かないふりを決め込み声をかけた。


「エレノア。」


「…?」


「なぜ君がここにいる。」


「俺の愛人だから連れてくるのは当然だろう。リティル公爵が参加するなんて知らなかったよ。」


にんまりと笑みを浮かべているのは王子であるイライアスで、急遽呼ばれた夜会はこのためだったのかとすぐに理解する。

見せつけるかのようにエレノアの腰を引き寄せてから右手を取り甲へとキスをする姿に彼の内心は穏やかでなかったが、公の場で礼を欠くほど子供ではないようだ。


「イライアス王子。それは私の妻ですよ。返していただけませんか。」


「今はそうだけど、彼女は君と別れることも視野に入れてるみたいだからさ。さっさと別れてよ。エレノアとの政略結婚は俺がちゃんと引き継ぐから大丈夫。」


「別れるかどうかは私達二人の問題です。王子に指図される覚えはありませんよ。エレノア、こっちに来い。」


「あれ、エレノア!?何でここにいるの?」


「ハーヴィンか。君は関係ないよね。」


「僕の翡翠石取っておいてよく言うよ。エレノア、ちゃんと着けていてくれないと。僕これ壊しちゃうよ?」


いつの間にか仕立て屋から取ってきたのか。

少し強めに握られたそれに彼女は困ったような表情をしている。


「で?王子とリティル公爵は何で揉めてるの?」


「エレノアが彼と別れたがっていることを伝えただけだよ。俺の親切心さ。」


「それ僕も伝えようと思ってたんだよ!エレノアは僕が幸せにするからさっさと別れようよ。今回、彼女が出て行ったのってリティル公爵のせいだし。」


「…それは。」


ぐうの音も出ないその言葉に黙り込んだリティル。

それを見ていたエレノアから大きなため息が聞こえてくる。


「さっきから黙って聞いてれば好き勝手に言ってるし。自己中心的って言葉知ってますか?確かに公爵とは別れるつもりですけど、別れた後どちらかと婚姻を結ぶなんて一切考えてませんよ。今みたいに美味しいものを食べる旅をしながら偶に働いて過ごす…。」


「働いているだと?」


「…ぁ。」


「エレノア、それ内緒だったんじゃないの?」


「今のは聞かなかったということで!」


すごい勢いで踵を返した彼女はそそくさと人の波の中へ消えていった。

赤いドレスは目立つかと思いきや、夜会というだけあって派手なドレスの女性が多く、移動するたびに声を掛けられるため思うように進めない。

そんな状況に苛立ちを隠せない三人は言葉巧みに上手くかわしながら歩みを進めるのだった。

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