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10. 宿屋と発熱

翌日。

日の出とともに見たナスタチウムは綺麗で感動した。

そんな花畑を横目にしばらく歩いていると雲行きが怪しくなってくる。

あれから30分も経っていないはずなのに、雨が降り出したかと思うと一瞬で土砂降りへと変わっていった。

山の天気は変わりやすいというが、丘の天気も変わりやすいのだろうか。

そんなことを考えながら花の都への道を急いだ。

たどり着く頃にはびしょ濡れで近場の宿屋に駆け込めば、優しい主人がすぐに着替え一式とシャワーを貸してくれたため、風邪を引くことはないだろう。


「ありがとうございます!本当に助かりました。」


「困ったときはお互い様ですよ。急な雨でさぞ大変だったでしょう。ここに住む私達は慣れたものですが、旅の方なら尚更です。」


「この辺りは雨が多いんですか?」


「この時期は特に多いですね。そのお陰で綺麗な紫陽花が咲くのですが、洗濯物が乾かないと妻がボヤいてましたよ。」


なるほど。

ここには梅雨のようなものがあるようだ。

世間話をしてから今日一日宿泊したいと伝えれば快諾され、二階の部屋に通された。

前回の宿屋と同じく小さな作りだが、掃除の行き届いた綺麗な部屋で花瓶には花菖蒲が生けられている。

木製のベッドや硬めのマットレスも変わらないが、花の都ならではなのか。

花の模様があちらこちらに刻まれている。

そんなことを考えながらベッドに横になったのがいけなかったのだろう。

疲れもあってか。

そのまま深い眠りに落ちていった。

次に目を覚ますと額にひんやりと冷たい感覚。

起き上がってみればタオルが布団に落ちる。

身体がポカポカと温かいところを見るともしかして発熱しているのだろうか。

大人になってから熱など出ることもなくなったため、感覚を忘れているが、ズキズキと痛む頭にため息がでる。


「エレノア様!」


「ミリア?私、あの後すぐに寝ちゃったから。」


「良かった、です。お医者様に診てもらったのですが、すごく高い熱で…。」


「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから…。」


「大丈夫ではありません!お医者様から旅は中止するようにと言われました。」


「え?」


「今のエレノア様の体力では継続するのは難しいと。」


「それなら、体力が戻るまでここにいればいいってことだよね?酒場のウエイトレスの募集見たし、大丈夫!」


「ウエイトレスなんてとんでもないです!エレノア様が酒場で働いたなんてことが旦那様に知れたら…。」


顔を真っ青にして否定するミリアだが、譲るつもりはない。

後先考えずに出てきたため、雀の涙程度にしかお金は持ち合わせていないのだ。

働かざる者食うべからず。

元々クソ野郎もといリティル公爵に養ってもらい続けるつもりなど無かったのだからそれが少し早まったというだけのこと。

これから先のことを考えるといつまでも発熱などしていられないと渡された薬を飲みながら窓の外へ視線を向けるのだった。

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