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41話 魔力激化症

「ラート...俺、お前に移したのか?」


ヴィンスがベッドから覗きながら話す。部屋に入る時は扉が開く勢いが有り余り、壁へと弾き帰って顔面を直撃してたからどうなるのやらと思ったら、大人しくしてくれて助かった


「魔力欠乏症は...他人には移らない病気だから違うよ...」

「病気なのに移らないのか!?」


普通の病と違って魔力は魂に関する病だから菌などから感染はしない


「魔力関連の病気はね...」

「なんだそれは!!?」


ヴィンスに説明出来るのか分からない、前の高速移動の説明も全然伝わってなかったしどう教えようか...


「ヴィンセント坊ちゃん、コンラート坊ちゃんはお身体の具合が宜しくないので休まなくてはいけません。あまりちょっかいを出さないように...」

「じゃあさっきのお前が教えろ!」

「そ、それは...」


いくら考えてもぼーっとして頭が回らなく、見かねたネイトが割り込んだけど本人も分からなくて一歩ずつ下がって行く。それをお構いなしにヴィンスはガンガンとネイトへ進む


それはともかく何でヴィンスは元気なんだ?魔力欠乏症になると最低でも一週間は休まないといけないのに、昨日今日で治るものではない...駄目だ、ヴィンスの事になると余計に頭が回らなって来た


今日も警備隊へ行くはずだったのに、この状態だと歩くのも難しいな。でもせめて何かやりたいと思い、傍に置いていた書類を取り出した


「坊ちゃん、何をなさってるんですか?ちゃんと休まないといけませんよ!」

「少しだけ書類を読むだけだよ」

「熱が下がってませんので駄目ですよ」

「じゃあ、せめて第二王妃様へセレナの推薦状を出したい...警備事務所にも行かないと犯罪率が...」

「俺が行くぞ!!」


視線がヴィンスに集まった


「警備隊で悪い奴を捕まえたらいいんだよな!?俺が行くぜ!!!」


部屋の窓を全開に開いたらそのまま飛び降りて下町まで走り出すヴィンス


それを唖然として見る僕とネイト


丁度扉の後ろに立ってたにも関わらず、窓まで一直線。昨日魔力欠乏症に掛かったと思えない程元気に出てて行った。ヴィンスが警備事務所に行って調査する...考えれば考えるほど不安でしかなく、セレナの推薦状を書いた後、身体が重くなって眠りに入った


*****


白い空間にいると頭がスッキリして考え事が出来るけど今回はまだ身体が熱く感じる。夢の中でも風邪が影響されるんだね


「この空間はお前の魂から来たからな」


僕の魂、じゃあ僕が掛った風邪は魔力に関する病なのか

魂が熱く感じるのは魔力の暴走を示す...ヴィンスとは真逆の病、魔力激化症なのか


「執事見習いも良く分かってなかったのに良くそこまで調べ上げたな。」


キョーコ様が病のこと色々調べてたからね。調べた記憶がそのまま僕に受け継いだんだ


「京子のこと全部覚えてるのか?」


キョーコ様が思い出した事なら全部覚えてるよ。最期の数年...病に関しては特に


「じゃあ俺が入れ替わる時が来たら対策しなきゃいけねーな。お前に知られたくねーからな」


そんなに知られてほしくないの?


「ああ、お前にだけは絶対駄目だ」


そうなの?仲良くなれたと思ったのに少し寂しいな


「お前には関係無い事だらけだから気にすんな」


少し機嫌が悪そうなカクさん、「ふんっ」と背中を向けて無言になった。こういう時は余り話しかけるのは良くないよね...カクさんの機嫌が直るまで症状や第二王妃様のお茶会の出来事を振り返った


やっぱりあのパイと紅茶、両方共摂取したのが行けなかった。紅茶に入ってたポポラは分かったけどパイには何が入ってたのか...


銀食器に反応しないなら魔物の一部、蜂型の魔物の蜜でも入ってたのかもしれない...いや王宮の結界は魔物の一部分でも入ったら宮廷魔術師が直ぐに勘づくだろう...ポポラと相性の悪い物、甘いカボチャのピューレの中に何が入ってたんだ...?


『瓜とポポラは魔力回復ポーションに適しているんだ、でも魔力を余り持たないお前やシンには保てる以上に魔力が溢れ出て毒になるから使うなよ?まあ俺も魔力有り余りすぎて必要ないんだけどなハハハハハ!』

『うざっ』

『同感だよ...』


馬鹿か、僕は...カボチャそのものがポポラとは相性が良くないんだってキョーコ様の記憶であっただろう...


正確には熟しすぎた瓜種だ

カボチャが甘いのは、時が経つに連れて魔力のエキスを放出して実を甘くさせるからだ。そのエキスがポポラと相性が悪く、魔力量の少ない人や既に体内の魔力が満タンな人が接種すると魔力を保てる以上に新しい魔力を詰め込んで身体から溢れ出して暴走する


昨日はヴィンスのお見舞いや王宮の仕事で忙しくて魔力を使わなかったから少ししか食べなかった僕でも効いたんだ


「そうだお前は馬鹿だ」


カクさんは軽く額を叩いた


「毒だって分かってたのに食いやがって、自分のことなんだと思ったんだよ?」


ピューレにして、砂糖とかいっぱい入ってたんだ、カボチャがどれくらい熟してたなんて分かるわけが無いだろう?それにフリーダ様の事で頭がいっぱいで考えが浅はかだったんだ


「そんなのどうでもいい!いいか!?もうあんな事は絶対するなよ!分かったか!?」


こんなに怒ったカクさんは初めてで少しびっくりした...

分かったよ、もうやらないって約束するよ。キョーコ様のお陰で魔力激化症の治療法も分かったし...


また「ふんっ」と機嫌が悪いけど背中を向けてはいないから少し良くなったのかな?それとキョーコ様(スケさん)の件で思ったんだけど、もしカクさんが僕と入れ替われる権限を使ったら消えちゃうの?


「まだ先の事だ、心配するな」


頭をわしゃわしゃと撫でられてすこし嬉しい気持ちの半面、フリーダ様の事が気になった


『お腹が痛くなる』


お茶会の茶菓子、フリーダ様は一切手を付けてなかったのは前から何が入ってたのか知ってたのか?僕も少し食べただけで寝込んでしまったのに、フリーダ様...本当にただお腹が痛くなるだけで済むのだろうか?


*****


目が覚めると夕方になってた


まだ身体が熱くて苦しいが病気の原因を突き止められたから治療出来る


魔力激化症は魔力が魂から溢れ出して体内でコントロールが出来なくなる病。魔力が溢れ出てるのなら魔力を使えば良い、シンプルな事だ


引き出しから空の付与魔石を取り出した

この空の付与魔石は母親が産まれた子供の為、魔石に魔力を付与して与えるこの国伝統のお守り。この付与魔石も母様から貰った、今は空の状態だけど地属性の魔力が入ってたのだ


その付与魔石を両手で挟み、魔力を注ぐと緑色に変わり込めれば込めるほど色濃くなっていく


「熱が少し下がったかな?」


身体も少し楽になってきたのを感じていると外が騒がしくなってきた

扉の方向を向くとまた勢いよく開いて壁を弾き帰ってヴィンスの元へ一直線...でも今回はちゃんと避けられた。避けられたのが誇らしいのか満面の笑みで走って来た。後ろから息を切らして横腹を抑えつけてるネイトを関係なしに思わぬ報告が帰ってきた


「ラート!!捕まえたぞ!!!」


あっという間に警備隊が中々捕まらない犯罪者を数人捉えたのだ


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