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30話 書類を改善しよう!

「ヴィンス、最近第二王妃様からお茶会誘われてないの?」


フリーダ様の腕の傷が増えてたし、軽かった。

第二王妃様がお茶会に誘われているのなら少しは良くなっていたと思ったけど...


「ん?ん-、おば...じゃなくて第二王妃様は子供が何やらで...えーと安静がなんとかで...ま!最近行ってねーって事だ!」

「そっか、第二王妃様もうそろそろ産まれるんだったけ。」


フリーダ様は王位継承権を失って、もうすぐ生まれる第二王妃様の子が唯一、次期国王になる子、無理に身体に負担を掛けられないのだろう。第二王妃様が安静に休まれてる間を利用してフリーダ様を傷つけてる...

また逆戻りしてしまった。


「うーん、困ったなぁ...」


早く勇王の証を手に入れないと...

いやそれよりも先にフリーダ様を傍で守れる人が居たらな...僕も早く功績を残すには...

それには先ず父様の課題をなんとかしないと...


「コンラート坊ちゃん、手紙が届きましたよ。」


訓練場までネイトが封筒を片手にやって来た。


「手紙?」


手紙は鞄を落とした人からの返事だった。

その落とし人は神官の元で働いていて、奥さんが高位の光魔法を付与したのだと。付与魔石の補助は気にしなくていいし、侯爵様のご子息を助けられたなら本望だと、心の広い人だ。


ただ、もし自分たちが免れない事態があったら僕の名前を借りたいと。僕は快く了承すると返事を書いた。


「よし、今日は警備事務所に行ってみよう。」


侯爵家の名前を使うから、そのまま郵便局へ送達させるより警備事務所に預かってもらった方が安全安心。


「リングレットに行くのか?じゃあ俺は冒険者ギルドで今度こそ良い戦法を見つけるぜ!」


今日の訓練も終わって、普段着に着替えようと立ったらネイトに肩を強く掴まれた。


「また行くんですか?あの危険な場所に?」


顔は笑ってるけど、目が笑ってなかった。

一昨日血まみれの服で帰って来たのがそんなにショックだったのかな...


「父様の課題をこなさないといけないし、警備事務所は危なくないよ?」

「コンラート坊ちゃんの事なら、そこまで辿り着く前に迷子になるでしょう?」

「うっ...」


何も言い返せなく言葉に詰まった。

僕は迷子になったから変わった場所に辿り着いて、変な物を触ったら、ついうっかり何かを発動して、上位悪魔を召喚されて、戦わないと行けなかっただけで...


いや、よくよく考えると危険だったな。死にかけたし...


「なので、私も行きます!」


*****


ネイトがジドウシャを使って僕を下町の警備事務所へ連れて行ってくれた。

一昨日は歩いて行ったけどやっぱりジドウシャだとあっという間に着いた。それに載るのは楽しい。


そして警備事務所は一昨日来た時より更に忙しそうにバタバタと事務員の人達が紙束をもって慌てふためいていた。


「サラさん、こんにちは。」

「コンラート様!いらしてたのですね!少々お待ちを、今事務長を...」

「いえ、急ぎの用じゃないのでやることを済ませた後でも構いません。」


わざわざ偉い人を呼ばなくても良いし、来る時間を間違えたのかもしれない。


「どうします?一旦戻ります?」

「うーん、でも折角来たしな」


今は難しい書類とかも読めるようになったし、治安の現状も知れるかもしれないし。

よし、手伝うか。


「申請などのため、侯爵家に送る書類などありますよね?それを全部持ってきてくれませんか?」

「そんな、わざわざコンラート様が持って行くなんて」

「いえ、今此処で僕が申請を容認します。そうした方が早く片付く物もあるでしょう。ネイト、手伝ってくれる?」

「はい、分かりました!」


*****


ーネイト視点ー


坊ちゃんに待っていく書類を集めてたらサラさんに呼び止められた。


「あの、その...こういう大事な書類、コンラート様が御勝手に決断されてよろしいのでしょうか?」


坊ちゃんはまだ若くて、小さいから色々勘違いされがちだ。でも安心してください、うちの坊ちゃんは天才ですから。


「あぁ、それなら問題ありませんよ。コンラート坊ちゃんは旦那様からこの領の治安に関する権限を貰っているので。それにここ数ヵ月、全て坊ちゃんが管理してましたし。」

「そうだったんですか!?そういえばここ最近、警備隊(私達)の申請制度など少し変わってた気が...」

「はい、では書類を持って行きますね。」


いや~、警備隊のサラさん。奇麗な人だったな

優しく、礼儀正しく、それに警備隊員だから強いのだろう。


「っと、仕事に戻らなくては」


事務所の一部屋借りて、そこで坊ちゃんは書類を読んでいる。

だけど紙束をペラペラめくると、そのまま机に置いて椅子に身体を預け大きな溜息をした


「坊ちゃん大丈夫ですか?」

「くどい」


くどい...くどいとは?


「それはどういう意味で...」

「よし、書類の改善をしよう。」


坊ちゃんも旦那様と似て、言葉足らずな所があると自分は思う。でもこれも慣れたことだ


「ではその改善とは一体どうやって。」

「まあ、簡単に言うと文字制限かな?ページ制限だったらそのページ数の中に細かく、小さくびっしり書いて余計読みづらくなるのが目に見えるからね。」


「しかし、文字制限なんてして何処か大切な情報を見失うのでは?」

「でも例えばこの魔物からの被害を減らすため避難所の建物を構築強化の申請書、序盤を読むと母親が犬の出産を手伝った...情報としておめでたいのかもしれないけど必要はないよね。」

「確かに...」

「書類や報告書を書くのも読むのも無駄に時間を使ってしまうから、何処でも人手不足になるんだ。幾ら速く読めたって、一つ一つの量が多かったら時間も掛かるよ。」


何が大切で、何が大切じゃないか、どう書けばいいのか分からない人も多いかもしれない。だからそこに文字制限を出せば、一番大事な情報は優先的に書けて、書かなくていい所くらいは分かるようにはなると。


「それに一昨日僕が同時に書いた、落とし物申請と魔物出現の報告書。軽く書いた落とし物申請は二日で相手からの手紙まで来たのに、長文の魔物の報告書はまだ何も通ってない。」

「魔物の報告書...まさか坊ちゃん!魔物と戦ったんですか!???」

「それは取り敢えず置いといて」


置いといて...置いといてとは?


「一昨日のあの血は魔物と戦って怪我をなさったものなんですよね!」

「これは、また後で話そう...今は書類改善の方が先だよ。」

「約束ですよ!」

「とにかく!僕が言いたかったのは、初めから長文書くより最初は短文にして情報が足りない個所があれば、後から情報の追加申請して書いてもらえばいいと思うの!そうやっても、今よりはもっと早くその書類の申請が終わるから!それだけの事!今から実行するよ!」


こうやって始まったコンラート坊ちゃんの書類改善計画は作業の効率が大幅に上がり、この警備事務所を始め、聖王国中に知れ渡り、多くの場所で使われる様になった。


流石坊ちゃん!

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