27話 景色のある夢
夢を見ていた。
これはいつもの何も無い白い空間じゃなく、景色がある夢
そこで僕は女の人になってて、女神ユラナ様の像の上で日が沈むのをじっくりと眺めてた。
そしてもう一人、二十代前半くらいの男性が隣に居た。
「しっかし凄い物建てたね、あーらた君」
像の壁を撫で下ろしながら隣の男性に話しかける。
でもその男性はあまり乗り気じゃなかった。
「今はシンだ。何度も言ってるけど、前世の名前で呼ばないでよ。」
「でも漢字変わらないし別に良いじゃん。」
自分の口調とは思えない喋り方をして会った事も無い男性と親しみやすく話す。
これは僕じゃない。もしかして僕の記憶なんだろうか?
「それで灰島君はどうしたの?あっ、今は確かグレイだったけ?」
グレイ、無詠唱魔法を完成させた最強魔術師と言われた人の事だろうか。
「隣国でスローライフ送るってよ。それで先週、八人目の嫁を迎えたって」
「なにそれ...本っ当にありえない。」
僕は嫌悪感を隠しきれてない、いや隠すつもりはないのかな。
八人目、グレイは十人迎えたと歴史書には書いてあったはず。
あと二人迎えたと知れば僕はどんな反応をするのだろうか。
「この世界は一夫多妻が許されてるんだから結果的にそうなったとか?魔法チートなんて羨ましいよ。僕なんて魔法の才能が無かったから実家を追放されたって言うのに。」
「そんなこと言う新君は何人迎えたのよ?」
「三人。」
「キッモ」
二歩大きく下がってゴミを見る目で見下ろす僕
「仕方が無いだろ!皆優しくて可憐で一人に絞れなかったんだよ。皆好きだったんだよ!」
「それ、この世界だから許されるだけで、日本だと浮気性のクソ野郎だからね?」
呆れて溜息を出す
「本当に...この国はどうなるのやら、男子はみんな魔女に唆されて女子は皆こいつらに...」
「僕をあの脳内お花畑の魔女と一緒にしないでくれよ。」
「やってる事一緒なのに?」
言い返せなく口を紡ぐ男性。
すると出入り口扉から黒髪碧眼の少女が顔を出した。
「お義姉さま?此処にいらっしゃいましたの?」
公国と違ってストレートの黒髪。
ユージンさんにどことなく似ている気がする。
「コーデリアたーん!」
僕は嬉しさのあまり走って少女を抱きしめる。
「あーあ、可愛いーなー、私の妹はなんでこんなに可愛いのかしらー。貴方は浮気性の男共にたぶらかせられない様に私が守るからね」
「な、何のことでしょうか?」
白い神官のローブを身に着けてるのを見る限り彼女は高位な光・聖魔法を使えるのだろう。
「いい?あの魔女には負けないでよ?お義姉ちゃんはコーデリアたんを聖女だと認める!」
「お義姉さま...また王妃様の事を魔女なんて...それに私はまだ聖女候補であってまだ正式には...」
「コーデリアたんが聖女になれば、この国も少しは希望があるかもね...」
「国に希望?それはどういう事でしょうか?」
「ま、その為にもこの女神像を建てたんだ。自分でも言うのもなんだけどかなりの力作だ。」
コーデリアと呼ばれる少女は二人の会話についていけてないが僕は話をどんどん進める。
「そういえばコーデリアたんは神官の仕事は終わったの?」
「あっ!まだでした!お義姉さまが此処にいらっしゃると伺ったので少し会いに...では私は行きますね!」
「はいはーい、頑張ってね~...」
少女は慌てながら像の中に入った。
「あぁ...コーデリアたんこんなに立派に育って...ヤバい、涙が出てきそう」
「相変わらず君は涙もろいね。」
「五月蠅いね、もう...よし!じゃあ、私も!」
大きく深呼吸をした後、大きく背伸びをすると出入口へ踵を返す。
「何処に行くんだ?」
「ちょっと気晴らしに町を散歩するだけだよ。この国の問題はまだまだ山積みだし、考えを改める為にも運動しようかなーって」
「護衛いる?」
「大丈夫でーす、一人で考えたい事が沢山あーるのっ。それにあの厄介な病の治療法を見つけないといけないし...」
「そっか」
それを最後に男性と別れた
あっ、駄目だ...
今行ったら、駄目だ。
行ったら、魔物に...
あの悪魔に...
せめて護衛を...
それがこの夢の最後の記憶だった。
明日もう一話投稿します。




