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16話 才能②

ヴィンスはまた剣を構え、僕まで一気に地面を蹴った。僕の目下まで走ると剣を一度後ろに引いた。


この動きはドルガーとの試合をした時と同じ動きだ。

ならこの後、僕の腹部を狙うはず。

僕は剣を腹部にかざしヴィンスの突きを防ぐ構えを取った。


「ガハハハハ!俺はもう単純じゃねーよ!」

「!」


ヴィンスが右手に持った()()()()の剣を既に振りかざしてた。

左手の剣にずっと集中してて右手を見てなかった。


でも試合を始めた時は持ってなかったはず。もう一本背中に隠し持っていたのか?

でもいきなり剣を二つ持って、ちゃんと使いこなせるのかな?というより卑怯じゃない?僕一本しか持ってないよ??


色んな疑問が頭に過ったけど、二本目の剣を受け止めるには間に合わない。受け止めたとしても左の剣の突きを受ける事になる


だから剣は腹部を守るためそのままにして、素手で二本目の剣を受け止め掴んだ。


「あっ!素手を使うなんてずりーよ!」

「そっちだって剣を二本使うなんて卑怯じゃないか!」


素手で持った剣を力一杯引き上げるとヴィンスの体勢は崩れ前の減りに転んだ。はい終わり。


「やっぱり駄目だったか。」

「ヴィンス君は双剣を随分と使いこなしてましたね。ずっと双剣の訓練をしてたんですか?」

「いや、俺が知る限りこの試合で初めて使ったんだと思うぞ。」

「それであの身のこなし...これが彼の才能なんでしょうか。」

「それをすぐに分析して対応する坊ちゃんも結構な才能の持ち主だと思うぜ。」


確かに、いつも一本しか使ってなかったのに、二本持ったとき、一本の時と同じくらいの身のこなしだった気がする。これからは油断しない方がいいな。もっと強くなるためにも。


「クルックス!駄目だったじゃねーか!」

「隙は突けたんだから前よりマシになっただろ?お前はこれから新しい戦闘方、技術、何でもいい、新しい戦法をとにかく創るんだ。そして坊ちゃんに勝つ方法を見つけてこい。」

「隙を突けたからって、もう一度同じ戦法やっても効かなくなるんだろ?」

「だから、それを応用して新しい技を考えろ。予想外の事をすればいいんだ、」


ヴィンスはヘソを曲げてるとクルックスが頭をわしゃわしゃと掻き乱した。


二人は仲が良い兄弟みたいな関係でちょっと羨ましく感じる。

僕はまだ少し距離がある感じかな。

ヴィンスは『ヴィンス』だけど僕はまだ『坊ちゃん』だからなぁ


「そんで坊ちゃん、ずっと見てきたが坊ちゃんはいつも先手を譲ってるな、自分から前に出る様にしとけ。どれだけ分析力が高くても先手をいつも奪われたら限界も来る。それと何度も、色んな奴らと試合をしてみろ。その分析力も極まる。」


僕も気付かなかった点をクルックスは幾つか並べてくれた。いつもヴィンスが先手を撃つから自然と身体がつい後手に回っちゃうのか。


「よし、お前たちに目標を立てることも出来たし、これで暫くは心配しなくていいな?」


暫く。

暫く会えなくなる。


「それはつまり、」




「出撃命令が下った。午後にはもう出発する。」




魔王軍は神出鬼没。そして現れた時の被害も深刻になる。まだこのルフィール聖王国までは魔族兵たちは辿り着いてないが、奴らの脅威を知れば他国からの援軍は必要になってしまう。奴らが現れたら第七騎士団は急送される。これは今に始まった事ではない。


僕とヴィンスは手に持ってた訓練剣を腰に掛け敬礼した。

戦場へ向かう騎士への敬礼だ


「いつも勇敢に、脅威へと立ち向かい。国を護る為、そして私たち民を護る為、その命を削って戦場に駆けつける勇士の姿、尊敬に値します。出会ったことを光栄に思い、導きの女神ユラナ様の加護が騎士様に正しい道へ歩めるようどうかご武運を願います。」

「...ご武運を、」


「ほんと、お前は几帳面だな。一昔前に使ってた騎士を見送る言葉を覚えるし、時と場合で敬語使い分けたりするしな。王宮に居た時と違って今は敬語使ってないし。」

「だって、今のクルックスは騎士団の制服も着てないただのだらしないクルックスでしょ。」

「おい、だらしないは余計だ」


このやり取りも暫くはお預けかな。



「頑張れよ、坊ちゃん。ヴィンスもな。」

「クルックス副団長も頑張って下さい」

「あぁ、」


*****


第七騎士団の団員は皆行ってしまった。

賑やかだった場所も物静かになって、心細くなるだろうな。


「今回は自分も行きたいって言わないんだね。」

「どうせ止められるからな」


オスカー叔父様から前もって聞かされたんだろう


「父上たち今度はいつ帰って来るんだろう?」

「早くて来年の一月の終わりくらいかな」

「えっと今は八月で...」

「五ヵ月ね」

「言わなくても数えられたぞ!」


本当かな?


「まあ、よし!騎士団を見送った。今日の鍛錬も終わったし、もう話しても良いよね?」

「何を?」

「訓練場に来た時からずっと聞きたいことがあったんだよね。」

「おい、鍛錬の間ずっと他のこと考えてたのか?」

「ずっとではないかな。ドルガーと試合をした時やエドワード先生の質問に答えたりした時は」

「じゃあ俺と試合をした時は違う事ばっかり考えてたのかよ!クソっ!余裕あるな!」


言葉遣いが汚いよヴィンス。

クソだなんて。


「まあまあ、それで、昨日の第二王妃様とのお茶会はどうだった?」

「は?それだけか?そんなん、フツーだったぜ?ケーキ食って、喋って、」

「他に何かなかったの?誰かに会ったとか?」


「あっ、おば...じゃなくて第二王妃様が一度席外してよー、フリー...」

「王女殿下」

「だからフリー...」

「王女殿下」

「あー!もう!姫さんが来たんだよ!話しが全然進まねーじゃねーか!

「そこは直さないとだめだよ。王女殿下を呼び捨てるなんて失礼だよ。」


ヴィンスまで使用人あいつらと同じになっては駄目だ。

たとえ呼び方だけだとしても。

一人でも王女殿下の仲間を増やさないと。


「そんで、今度から姫さんとも一緒に飲むんだってよ。」

「そっか、良かった良かった。」


第二王妃様とのお茶会で王女殿下も誘ってくれたなら、鋭い第二王妃様の事だ。傷とかもすぐに見つけるだろう。使用人たちも中々王女殿下に手を出すことは出来なくなる。使用人たちはヴィンスが言った様に「クソ」だけど馬鹿では無い。


「あーっ!!その顔!!やっぱりお前の思惑だったんかよ!」

「ふふーん、何のことかなー?じゃあ僕は行くねー」

「待てー!もう一回試合しろ!!」


僕はクルックスと父様が暮れた課題を見直した。

これから段々と忙しくなりそうだ。


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