12話 王女殿下との再会
双子の兄妹が無事に産まれた
弟はカーティス
妹はカーネリア、
二人は母様と同じ紺色の髪と父様と同じ琥珀色の瞳だ。
赤ちゃん...小さくて可愛い。
「坊ちゃまと同じ琥珀色の瞳をしてますね」
「うん、可愛いねケレン」
これで僕もお兄ちゃんになる。良いお兄ちゃんになれたらいいな。
「ラート、本当に両立をするの?この子達も産まれたし無理して全て背負わなくていいのよ?」
母様が心配してる...僕の事より身体をもっと心配してほしい。
身体が弱い母様でも適切な処置のお陰で安産だったけど念のため暫くの間医者が付き添うらしい。急に体調を崩してしまう人も少なくないと聞いたから。
それに両立は無理じゃなくて僕の我儘だ。
「はい、これは僕がやりたいことなんです。この子達が大きくなった時、僕みたいに嫌な事が起こらないように、頑張って、それに勇王の証を手に入れるように頑張ります。」
守りたい人が沢山います。
王女殿下の為だけじゃない。カーネリアやカーティスの為にも僕は頑張る。
頑張る理由、それにやる気も増えた
そしてこの子達には好きなことをして生きてほしい...それが僕の願いだ。
*****
王宮にもう一度行く事になった。
もう一度と言うより今度からもっと頻繁に行く事になる。爵位を継ぐから父様の仕事を継ぐ、僕は見習いとして何度も赴く事になった。
騎士団長の座も継ぐから午後は騎士団本部へ行ってオスカー団長から色々と教えてもらう。今は簡単な書類整理をしてるけど、後々自分で読んで判断とかするのだろう。
昼休みになってもユージンさんと父様の仕事は終わらない。それもそのはず、ユージンさんは防衛総司令官の他に騎士団本部の管理をしてるからだ二人分の書類仕事一人で終わらせる...大変だろうな
結構今日も僕一人で騎士団本部へ行くことになった。
今回は道順を覚えたから大丈夫、迷子にはならないぞ。でも離宮まで一度行って戻っていく経路しか分からないのが問題だ。無理に自分で違う道を通ったらどうなるか目に見えるからそのルートで行くしかない。後宮も通るからジェイルス公爵にも合うかもしれない...うん、嫌だな。
「そういえば、どうして公爵も後宮に居たんだ?」
宮殿全体を管理もしてるけど、後宮へ行く理由はあるのか?
今は考えても何もわからない、王女殿下のことも気になる。
前回行った同じルートを辿ることにした。
*****
うん、大分道をくねったけど離宮の塔まで着いた。王女殿下と初めて出会った場所に行って見上げると三階の窓が開いてた。
使用人たちの叫び声も聞こえるから、王女様は既に逃げたんだな。確か、前は茂みの方まで走って行ったけ?
あの使用人たちにまた会いたくないから僕もさっさとそちらまで行った。
茂みの中を暫く歩くと視線を感じた。感じる方向へ身体を動かす、
見つけた。
力が籠った翡翠色の瞳に輝いて透き通るような金髪
「やっぱり美しい。」
また本音を口に出したら王女殿下の方が赤くなった。
やめてくれ...僕まで照れてしまう...自分で言ったことなんだけど!
恥ずかしながらも僕は王女殿下に近づこうとしたら、警戒して一歩下がった。両手を構え睨んで来る。
誰も信用しない。
そういう表情だ
構える両腕は遠くで見ても分かる傷の量だったとても痛々しい。誰も信用出来ないのは無理もない
僕も少しだけど治癒魔法は使えるから少しでも治せないかな?
警戒を解くため僕は王女殿下と話そうと思った。
「初めまして...ではないですね。」
「...」
笑って返すと、王女殿下は睨むのを辞めた。
「僕の名前はコンラートです。宜しくお願いします。」
「...」
「貴方はフリーダ王女殿下ですよね、」
警戒を少しでも解こうと僕は地面に座って話を始めた。
「フリーダ、素敵な名前ですね、美しく安らかという意味、王女殿下にぴったりな名前ですね。」
「...」
「初めて会ったときは丁度王女殿下が窓から落ちてきた所でしたね。」
「...」
「いつも三階の窓から飛び降りてるんですか?」
しばらく話しかけてみると構えてた両手を下げた。
よし、良い傾向だ。
「僕は飛び降りる勇気はありませんね、王女殿下は凄いです。」
「...どうしてそう呼ぶの?」
初めて話してくれた。奇麗な声だ。
嬉しい
「皆...私の事フリーダって...でも貴方は王女殿下...って」
「それは貴方がこの国の王女様だからです。」
誰も認めないとしても僕は貴方を王女殿下として認める。だから王女殿下と呼ぶ、貴方の存在を、地位を相手に忘れさせない様に。たとえ王位継承権を失っても貴方は王族で間違えないから
「...変なの」
「そうですか?」
「...うん...喋り方も...」
「これは、癖ですかね」
王女殿下も警戒を解いてくれて僕が一歩前に出ても下がらなくなった。近づくと何か「ぐるぅ~」と音が聞こえた
その音は王女殿下のお腹からだ
「お腹、すいてますか?」
王女殿下は少し頷いた。
僕は鞄に入れてたケレンお手製のサンドイッチとおやつのクッキーを出した。
「これはケレン、僕の乳母の手作りです、食べますか?」
「...いらない」
えっ?どうして?
サンドイッチの良い香りが漂って王女殿下のお腹もより勢いよく鳴ってるのに
「食べたら...お腹が痛くなるから...ここにある木の実を食べてる」
まさか使用人が王女殿下に出す料理に下剤を...?使用人はそこまでするのか...?
僕は腹の底から怒りを感じた。それが顔に出たのか、王女殿下がまた一歩下がってしまった。
「あ、すみません。怖がらせてしまいました...」
「...」
「僕は王女殿下に怒ってる訳ではありません。使用人に怒ってるんです。」
「...」
うーん、また警戒された...せめてこのお弁当を食べてほしい。
「これも大丈夫です、食べてもお腹は痛くなりません。ほら」
僕は一口だけサンドイッチとクッキーを食べた。
「ほら、僕は平気です。」
王女殿下は恐る恐る一口食べた、その瞬間目を輝かせた
「美味しいですよね、ケレンのパンは格別です」
王女殿下は「うん」と一言言って、夢中で食べ始めた
食べてくれた、良かった...そろそろ騎士団本部へ行かないとオスカー団長も探しに来てしまう
「もう行かないといけません、でもまた会いましょう」
僕は王女殿下の両手を手に取って治癒魔法を唱えた。
これで少しでも痛みが和らぐと良いな。
*****
王女殿下は傷だらけで、5歳にしては小さく、瘦せていた。
あの環境に11年も耐えられるのか...?今からでもあの環境から改善させないとあの小さな身体は持たない。
「でもどうやったら...」
僕や父様は環境を変えるほどの権力は無い。ユージンさんも忙しくて構う余裕は無いだろう。第一王妃派閥の貴族はもってのほか駄目だ。
ジェイルス公爵と対等できる力の持ち主。そして王女殿下を虐げない人...
誰か、権力を持って...うーん...
「あ、なんだラートじゃねーか」
後ろから声が聞こえた
ヴィンスだ
「ヴィンス...は絶対無理だな。」
ヴィンスは態度が悪いし敵も多いしなぁ...
「おい、絶対無理って何がだよ?」
「いや、何でもない、気にしないでくれ。」
「いや気になるじゃねーか!なあ??何が無理なんだよ!?」
何でヴィンスが王宮に...
いや待てよ、一人いるじゃないか
「いや!やっぱり丁度いい!良いところに来た!」
「は?」




