1話 よく見る変った夢
『君はモブだ。モブの役にしかなれない。』
「〇△*〇X*」
目の前に見えるのは黒髪黒目で見慣れない顔立ちの青年、そして小さな妖精。
妖精の言葉は理解できるが、青年の言葉は今回は理解できない。
彼らはいつも何か話し合ってる。
何度も見る不思議な夢だ。
『いくらスペックが高くても、大貴族になっても、主人公の前に現れなかったらモブなんだよ。「彼」もそう。周りからモブとして認識されてるだけ。』
「〇...✕△」
前にも何処かで見たことある光栄だ...
でもどこかは思い出せない。
それに、僕は彼らを知ってる、と思う。
『「彼」の活躍は世に知れることもないし、「彼」の存在は一握りの人間にしか覚えられない。まぁこれは君の頑張り次第だけど』
「✕△〇X*、〇X*!」
『良い終わりかたもしないし、「彼」の望みも、意思も何も報われない。それでも良いの?かなりエグいし辛いよ?』
青年が軽く頷く。
『ふーん、まぁいっか。君もこの「仕事」で随分頑張ったんだしご褒美として「彼」になる権利を与えよう』
「△〇X*!」
青年の歓声が聞こえた
そして表情は明るくなってゆく
『現在この世界は「主人公」が現れる前の世界。本来ならいつもの様に「主人公」の為のモブになってもらうつもりだったけど、まあなんとかなるっしょ。「彼」の後に両立してもらうかもしれないけどいい?』
「〇X !」
『「主人公」は一応3人候補として居るけど、1人目は2週目になると「主人公」になれるかどうかは分からないね。』
「X*、△*〇?」
『そうそう、それに「彼」は「主人公」が本格的に登場した時にはもう存在しない人なんだ。』
さっきから言ってる「彼」や「主人公」ってなんの事なんだろう。
『今回はまだ一周目の世界だし、後で資料をまとめるつもりだから、まぁ好きにやっても良いよ。この世界は乙女ゲームに合う人物も結構居るし、世界観が良かったらラノベにも出来そうかな。まあ、取り敢えず幸運を祈るよ。』
「〇X*!」
『ハイハイ、じゃあ「彼」の中に入ってね。』
青年と妖精が此方を向いて近づいてきた。
青年は嬉しそうに片腕を回し、手が僕の顔に触れた瞬間目の前が真っ白になった。
「っしゃ、やってやるぜ!」
その言葉がこの夢の中の最後の記憶だった。