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3.野川家の玄関先で。








「え? 瀬奈、今日いないんですか?」

「お、おう! 悪いな、拓哉!」




 野川家へと向かうと、応対してくれたのは勇おじさん。

 しかし彼は俺を見るなり開口一番、瀬奈は少しばかり出かけている、と言い放った。その時点で色々と怪しいのだが、ひとまず話してみないことには始まらない。

 そう考えて、ちらり――。



「もしかして、リハビリですか?」

「お、おうよ! アイツも頑張り屋だからな!」

「土日に病院やってるんですか? まぁ、それは良しとして――」



 彼女の部屋の窓を見てから。



「いま、カーテンが揺れたような気がするんですけど」

「………………」



 俺はそのようにカマをかけてみた。

 実際にはそのようなことはなく、カーテンは波一つ打っていない。しかし勇おじさんは黙り込み、ああでもない、こうでもない、と唸った後にポンと手を打った。

 そして、ダラダラと汗をかきながらこう言うのだ。



「そ……それはアレだ! 出やがるんだよ、瀬奈の部屋!!」

「……は?」

「幽霊だよ、幽霊! いやあ、困るよなぁ!! あっはっはっは!!」

「………………」



 ――いや。嘘をつくにしても、それはないだろ。

 言うに事欠いて、幽霊ときやがったか。この人は本当に嘘が下手くそというか、発想が子供っぽいというか、昔から色々と不器用な人だった。

 しかしそうなると、瀬奈自身は中にいる、ということか。

 俺はしばらく考えてから、



「それなら、いま知り合いの霊媒師連れてきますね」

「……ひょえ?」



 少し意地悪してやろうと、そう切り返した。

 会話レベルを同じくらいにしつつ、架空の友人を創り上げる。そもそも幽霊なんて時期でもない。いや、時期とかあるのか分からないが、とにかく誰が聞いても嘘と分かる言葉だった。しかし勇おじさんはさらに滝のような汗を流しながら応える。



「大丈夫だ、気にすんな! 霊とはいっても、その……守護的なアレだ!」

「守護霊、ですか。でもさっき、困ってるって――」

「いや、アレはそうだな。勝手に他人のプリンを食べたりとか、迷惑を……」

「ずいぶん可愛らしい霊障だな、おい」



 これきっと、おじさんが瀬奈に言われた苦情だな。

 俺はそんな想像をしながら、一つ肩を竦めながら息をついた。理由は分からないが、どうやら幼馴染みは自分に会えない理由があるらしい。

 その何かしらが分からないので、非常にモヤモヤするが仕方なかった。



「まぁ、それなら今日は帰ります。それじゃ――」

「……あ、おい! 拓哉!」

「なんです……?」



 となれば、引き返すしかない。

 そう考えて踵を返すと、勇おじさんはどこか青ざめた顔で訊いてきた。




「霊媒師に知り合いがいるって、マジか……?」――と。




 この人、あの嘘を信じてたのかよ。



 


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