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6.途絶えた道。






 ――高校の近くにある総合病院。

 休日ということもあり、いつもより人の足は少ないように思えた。瀬奈は救急車で顧問と一緒に搬送され、俺と絵麻はそれを追いかける形で足を運ぶ。診察中らしく、待合室で待機することになった。

 俺たちは互いに無言。

 何を話せばいいのかも、分からない状況だった。そうしていると、



「あっれ? ふたりとも、どうしてここに」

「野川さん!」

「どうしてここに、じゃねぇよ!!」



 顧問の教員に連れられ、松葉杖をついた瀬奈が姿を現す。

 俺たちは思わず声を上げながら駆け寄ると、顧問から静かにするように指を立てられた。その姿にハッとして急く気持ちを落ち着けると、複雑な感情を噛み殺しながら訊ねるのだ。



「それで、どう……だった?」

「あ、あはは……」



 すると幼馴染みは、乾いた笑いを浮かべてから。

 少しだけ残念そうに左足を見ながら、このように答えるのだった。



「左膝の前十字靭帯断裂で、全治半年……だってさ」――と。



 その言葉に俺たちは息を呑む。

 それではもう、インターハイへの出場はほぼ絶望的だった。いまが一月だから、術後にリハビリを半年やったとして、普通なら絶対に間に合わない。

 考えたくはないが、奇跡が起こらない限りは……。



「いやー、不注意だったね。あの場面で無理にディフェンスに入るべきじゃなかったよ!」

「瀬奈……お前、そんな――」

「どうしたの、たっくん! アタシは別に大丈夫だよ?」

「嘘をつくな!!」



 俺と絵麻の深刻な表情を察して、幼馴染みは努めて明るく振る舞っていた。

 だけど俺は知っている。長年一緒だったからこそ、辛いことがあった時こそ彼女が笑うのも。そして、



「嘘じゃないよ、アタシは――」

「お前は、嘘つくときは頭を掻くんだよ。自覚あるだろ」

「………………」



 瀬奈は自然な動きで、自分の頭を掻いていた。

 それが誤魔化しや嘘をつくときの、彼女の癖であることを知っている。そのことを指摘すると、瀬奈はようやく目を伏せてうつむくのだった。

 黙り込んで、しばしの間を置いてから言う。



「ごめん。アタシ、先に帰るね」

「…………」



 それを暴いてよかったのか。

 俺は少しの後悔を胸に抱いたが、いまは顧問に肩を支えられる瀬奈を見送るしかできなかった。するとその時、絵麻が何かに気付いたようにして、とある方向を見つめる。

 俺は首を傾げ、そちらを見るが誰もいなかった。



「どう、したんだ? 絵麻」

「お兄ちゃん。いまは野川さんの傍にいてあげて、お願い」

「それなら、一緒にアイツの家に行こう。きっと、喜んでくれる」

「ううん。これはお兄ちゃんだけじゃないと、意味がないから。それに――」




 どうしたのか訊ねると、義妹は静かにそう返してくる。

 そして、どこか厳しい声色でこう言った。




「私はちょっと、用事があるから」




 絵麻はそう言い残すと、視線を向けていた方へと歩き始める。

 俺は結果的に一人だけ取り残され、しばしその場から動けなくなった。だが絵麻も、気を遣ってくれたのだろう。

 それに感謝しながら、瀬奈の家を目指すのだった。



 


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