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「とうちゃん、これ飼いたい!」

作者: 青空のら

「とうちゃん!これ飼いたい!!」


息子にキラキラした目で見つめられると弱い

確かに良い子にしていれば、今年の誕生日プレゼントに願い事一つ叶えてあげるとは言ったが


「ええっ?ダメなの?約束したじゃない!」

「そうだな。約束したな」

「じゃあ、いいの!」

「ああ。だが、きちんと躾できないようだとペットに飼うわけにはいかないんだぞ」


まだ幼い息子に諭すように言う


「大丈夫だよ。もうすっかり仲良しだし、オイラの言葉もきちんと理解してるんだ!ねっ、ゴンスケ」


息子が振り返り話しかけると、ゴンスケは尻尾をピンと伸ばし、首をカクカクと縦に振った


ほう、知能は高そうだな

図体のでかい木偶の坊だと思っていたが

しかしそうなると


「きちんと世話して躾ができるのなら父ちゃんは何も言わない、飼ってもいいぞ」

「やったー!」

「だが、このサイズだと我が家で飼うにはちょっと狭いから、然るべき場所の確保と関連機関への届出が必要になるだろう。しばらく待って欲しい」

「わかったよ、とーちゃん!」


勢いよく頷く息子を見ながら、これから忙しくなるなと呟くのだった


----------


「というわけで、この辺りの使用許可と部外者の立ち入り禁止措置を求めたいのですが」

「何が、というわけで、じゃ!!」


王の叫びに広間が静まり返る

相変わらずというか、いつも不機嫌そうにしているなぁ


「きさま、その顔は不機嫌そうだなとか考えていそうだな。誰のせいで不機嫌だと思っているんだ!!」

「王様、興奮すると頭の血管切れますよ?」

「うぐぐ、、、お主と話するだけで疲れる。好きにするが良い。

もとより提示された場所は王国領土ではない。勝手に使っても文句を言う筋合いではない、大臣にはその区域には立ち入り禁止せぬ様にお触れを出させる」


いつもぐちぐちいう割には気前がいい、流石は一国の王様をしているだけはある


「ありがとうございます」


王様に一礼すると王宮を出た

スムーズに事が進むと嬉しいものだ、何せ回らないと行けない所はまだまだあるのだから


------------


「あの場所でお主の息子のペットを飼いたいから使用を許可しろと、そう申しておるのか?」

「はい!」


エルフ城内でエルフの女王に会見する

流石は長生きしているだけあって理解が早くて助かる


「あそこは我らが神聖な、、」

「黙っておれ」


背後からの臣下の言葉を遮りエルフの女王は言葉を続けた


「彼の地は我らが聖地と定められた場所ではある!

だが、彼の地は我らの所有地ではない。

従って、理屈で言えばお主らがどう使おうとも文句を言える立場ではない」

「つまりは、常識ある使い方をして、聖地を穢すなと?」

「わかっておるなら話はしまいじゃ。

おふれを出す以前に元より我らが一族は祭儀の日に以外は彼の地へは立ち入り禁止じゃて」


やれやれと肩をすくめるエルフの女王

人の上に立つって大変だなぁ、としみじみと思うよ


--------------


「ほう?我らが魔族に指示をすると?」

「指示をするとかじゃなくて、お願いかな?」


魔王は目を細めながらニヤニヤとした表情でこちらを見る


「いえいえ、うちの馬鹿ペットが魔国の住民の方々を間違えて傷つけたりしない様に、気軽な立ち入りを禁止して欲しいかなぁ、なんて思ったりしたわけですよ」

「まあ、魔族は後先考えない筋肉馬鹿ばかりだが、痛みを簡単に忘れる程の馬鹿でもないぞ?」

「それはそうですが」

「一度痛い目に合えば近寄ろうともしないであろう、放っておけばよい」


魔国1番の筋肉馬鹿が言っているのだから、きっとそうなんだろう


「じゃあ。よろしく頼む」


------------


ドワーフ国にて


「ワシらが用事あるのは火山位だし、好きにすればいいぜ」


--------------


リザードマン国にて


「我らの、我らの主が、、、、、

我らの主の御心のままに、、、、」


---------------


「とうちゃん、ありがとう」


各方面の許可を取り付けて、晴れてゴンスケの飼育区域が設定された事を息子に伝えると

満面の笑みで感謝された

うん、うん、うちの息子が世界で一番可愛いぞ


「ゴンスケ!そら、取っておいで」


息子が聖剣を投げる

見事な投球フォームで二山ほど向こうに消えて行く

わんぱく盛りの子供の玩具は簡単に壊れてしまう

そこで頑丈さでは一番の聖剣の出番となり、今ではすっかり息子の愛用の玩具となっている


バッサ、バッサ

ゴンスケは肩の羽を広げると空に飛び上がり、聖剣の消えた方へ向かう


「100数えるうちに戻らないと晩飯抜きね!!」


子供は残酷だなぁ


息子の言葉を聞くや否や、ゴンスケは飛翔をトップスピードまで上げるとすぐ様姿を消した


「こら!飯抜きとか酷くないか?」

「だって!」

「だって、じゃない。せめてご飯半分とかゴンスケの事も考えてあげような。お前はゴンスケの飼い主だろ?」


息子の目を見て語りかけると、ゆっくりとだが頷いてくれた


「わかったよ、とうちゃん!飯抜きとか酷い事は言わないよ」

「わかってくれて嬉しいよ。ゴンスケが聖剣持って戻って来たらきちんと褒めてあげろよ?」

「もちろんだよ、とうちゃん!」


うんうん、素直な我が子は最高に可愛い


そうこうしているうちにゴンスケが聖剣を持って戻ってくる


「ゴンスケ、偉いぞ!」


その言葉にゴンスケが頭を下げ、息子がその頭を撫でる

(ゴンスケじゃなくて、神龍イスケールなんだけど。とても言えない)


バッサ、バッサ

ゴンスケが返事をする様に羽を動かした



----------


「アレは彼の地から出て来ないのか?」

「ああ」

「他所で姿を確認しておらぬ」

「どこに居ようとも直ぐにわかるであろう、アレぞよ?」

「確かに」

「だな」


各方面で王と呼ばれる者が集い、密談をしていた


「我はアレを表現する言葉として、自然災害というしか言葉を知らぬ」

「確かに巻き込まれたら対処の仕様が無い」

「まさに天災ぞよ」

「子供が出来て不幸中の幸いなのか?」

「確かに行動範囲が定まってからの被害は最小限度に抑えられてはおるが」

「災害の種が倍に増えたと?」

「そうとも言うな」


神龍をどつきペットにする息子

聖剣をペットの玩具にする息子

世間知らずで好き勝手に生きてきた親父


「この世には神も悪魔も居ないのか?」

「貴方が言ったらお終いね」


魔王の呟きにエルフの女王がため息をついた


--------


ゴンスケの飼育領域は不可侵イスケール領として定められ、近隣諸国は決して立ち入る事は無かった

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