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1.2 異世界に来たが早速襲われた話

 瞼を通過する、強烈な光で目を覚ます。


 上半身を起こし、周りを見渡すとここは草原だった。


 ただの草原ではあるものの、ここが元いた世界ではないことが何となく分かる。


「本当に異世界に来たんだな・・・」


 手に違和感を感じ目線を送ると、いつの間にか日本刀が握られていた。


 これも神からの贈り物か? だとしたらただの刀とも思えないな。


 体が軽い。肉体が強化されているというのも本当のようだ。


 この軽さは、健康な肉体が手に入ったからだけではない、という事もわかる。


 あとは神の力の一旦だが、それが何か分からない。


 いったい何が与えられているのだろうか。


 とりあえず手持ち無沙汰がある刀がベルト付きだったので、腰に巻き付けようとした時、未だに大昔に着ていたような麻の服を着ている事に気づく。


 このままだと格好もつかないだろうし、服は変えないといけないだろう。


 服を作るなどの、都合のいい能力があればいいのだが。


 そんな力はどんな力かを想像すると、頭の中に本が出現したような感覚に襲われる。


 その本が開かれ、ページが凄い勢いでめくられていき、とあるページで止まるような感覚を覚えた。


 そのページに存在する力が、まるでスマホにアプリをインストールするように、自分に取り込まれていく感じがした。


 ゲネシキネシス<創造力>


 唐突に理解したその力。


 さっそくゲネシキネシス(<創造力>)を使おうと目を閉じてみると、初めから使い方を知っていたように、苦無く力が引き出されていく。


 手を前に出し、掌を下に向けて開く。服をイメージしてゲネシキネシス(<創造力>)を発動した。


 地面に何かが落ちる音がし、目を開けると地面に服が出来ていた。


 出来た服に着替えるため、周りに誰もいない事を確認して真っ裸になる。


 いい体つきになり傷も消えているので、自分の体を見ても嫌悪しなくなったのは、素直に神に感謝だな。


 着替え終わって体を見てみるが、黒いブーツに黒いローブ、黒いズボンに黒い上着で、某有名SF映画シリーズの悪役みたいな格好だ。


 たまたまテレビでやっていた時に、無法者で最後はアンチヒーローとして戦う姿に憧れていたからか、服を作ろうと思った時に、潜在的に憧れていたものが具現化されたのかもしれない。


 他にもSF映画に出てくる物や、拳銃なども作ってみようと思ったが、どうやら架空の物も、原理や理論がわからない物も、創れないようだった。


 神の力の一旦と言っていたからな。俺にあるゲネシキネシス(<創造力>)は万能では無いようだ。


 まだここがどういった世界か分からないし、どんな奴がいるのかも分からない。


 ここは顔が割れないように、マスクでも創っておくか。


 2回目は直ぐに力を使う事ができ、力がインストールされるあの感覚がなかった。


 創造出来たマスクはフルフェイスで、またもあの映画の悪役に近い物になったが、表面に大昔の侍が戦の時に付けていた、仮面のようなデザインも加えておいた。


 完成したマスクを装着し、刀のベルトを巻いた時にそれは見えた。


 視力が強化されているからか、遠くにある物もかなりくっきり見える。


 あれは・・・同じ距離にある木と比べると、象の2倍程もある巨大なイノシシだ。


 巨大なイノシシはこちらに向かって突進してきており、聴力も強化されているのか、マスク越しでも足音と荒い鼻息までまで聞こえてくる。


 そういえばイノシシは、生物の授業で出てきたが、雑食性で肉も食べるんだったな。


 周りに人影がない以上、俺を食べに来たといったところだろうな。


 あいつにとっては、散歩していたら手頃なおやつを見つけた、といったところか。


 あいつを止める力でもないかと思った瞬間、また頭の中の本が開き、今必要としている力が自動で検索される。


 とあるページで止まり、力がインストールされる感覚が訪れる。


 サイコキネシス<念動力>


 ようは超能力か。確かにこれなら動きを止められそうだ。


 気がつくと巨大なイノシシは眼前に迫ってきている。


 そういうことか。俺に与えられた力は、初回のみインストールが必要で、それは思ったより時間がかかるのか。


 使い方も一緒にインストールされるようだから、さっそくこのサイコキネシス(<念動力>)を使ってやる。


 手をかざし、サイコキネシス(<念動力>)の力で巨大なイノシシを包み込み、その突進を止めた。


 これは結構集中しないと、止め続けられないな。他の力を使う余裕が無い。


 そうだ、刀で止めを刺せばいい。


 この刀を試したいし、ここで使うのがちょうど良いだろう。


 空いている手で刀を抜く。


 材質は鉄に似ているが、僅かに青みがかっていて普通の刀と違うことが伺える。


 神の贈り物だし、何かしらの神器のようなものなのだろうか。


 さて、この巨大なイノシシが、元の世界と同じような生物だと仮定すると、見かけと違い体は筋肉に覆われていて、斬撃はそれほど効果がないはず。


 出血多量を狙っても、倒れるまでにかなり時間がかかるだろう。


 動きを止めている力を解除し、心臓か脳への一撃必殺を狙うしかないな。


 刀を逆手に持ち直し、力を解除する。


 すると巨大なイノシシは、こちらに向かって突進を再開する。


 巨体に似合わないその初速には驚いたが、反射神経が強化されているのか、冷静に対処する事が出来た。


 こちらもイノシシに向かって走り出し飛びあがるが、走る速さも跳躍も軽く行ったつもりなのに、オリンピックで楽々金メダルが取れるレベルになっている。


 神による身体能力の強化も驚く程だ。


 跳躍後、逆手のまま両手で刀を持ち、頭の上まで振りかぶって、巨大なイノシシの頭に振り下ろす。


 相手の突進とこちらの落下の力が合わさり、刀は楽々脳を貫いた。


 そのまま額に着地する形になり、イノシシはゆっくりと速度を緩め立ち止まる。ゆっくりとその身を横たえ、同時に刀を引き抜いて飛び降りた。


 相当な衝撃だったはずなのに、体はなんともない。


 元の虚弱体質が懐かしいくらいだ。


 この身体能力だけでも、至れり尽くせりの状態だが、他にもいろいろな能力が与えられていそうだ。


 この刀も相当に丈夫だ。獣の頭蓋を貫いて、刃こぼれ1つ無い。ただの鉄ではないのは確実だな。


 意味もなくこれが与えられたとは思えない。何か特別な効果があるようには見えないが、丈夫な刀以上の使い道があると思った方がいいだろう。


 さてこの巨大な死体をどうしようか。


 そんな事を考えていると、後ろから野太い男の声が聞こえた。


「どうなってんだ! メガネパルが死んでるじゃねーか!」


 声がした方に振り返ると、中世の騎士のような格好をした屈強な男達が、十数人馬を降りるところだった。

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