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愚者の舞い 3−17

 ボニートが3人分のお茶を淹れると、改めて問いかけた。

「それで、天界は動くべきなのですか?」

「いや、動かない方が良いな。 だがもし、天界が動かなければならないようなら、俺が始末する。 あいつにそれだけの力を与えたのは俺だからな。」

人は、自分で考え、自分で決断し、自分で行動しなければならない。

それが持論であったのに、関わってしまったための不具合。

「あの、始原の悪魔様。 お聞きしてもよろしいですか?」

ボニートはその辺の事情を知っていたためにある程度理解はできるが、まだ若い巫女には何も分かる筈もない。

「なんだい?」

「私も人間ですが、人間とはそんなに影響力を持てるものなのですか?」

「持てる。 魔界と異界以外、俺と兄貴は2人で協力して世界を作った。 大地や空などは兄貴が、動物などの生物を俺が主体となってな。 だが正確に言うと、人間を俺達は作らなかった。」

「え? 人間は作らなかった・・・って・・・どういうことですか?」

「そのままの意味さ。 ただ、兄貴は人間に期待した。 俺達に至れる存在が生まれ出る事を。 今のところ、俺達と同等に至れたのはシェーンだけだが、これ以降出て来ないとも限らん。 俺と兄貴は、不完全な存在だと自覚しているから、新たな仲間を欲していたんだ。 より完全な世界を作るために。 だが、今のままで満足してしまったのか、兄貴とシェーンはこの世界を維持する弁になって、残されたのは俺だけ。 俺も特にどうこうしようと思い付かんから、現状維持のままだけどな。」

「・・・私達に、何か変える事が出来るのでしょうか?」

「できるさ。 やろうとしないから出来ないだけだ。 こう言うと変な話だが、俺は人間が強大な能力を持っただけの存在だ。 絶対的に何でも知っているわけではないし、間違いだって犯す。 感情があるからな。 もしお前ら神官や巫女が、ここに住む神どもに至る力を手に入れて見ろ。 主従入れ替わるかもしれんぞ。 なぁ、ボニート。」

話しを振られたボニートは、微笑みを浮かべるだけで返事はしなかった。

現状に落ち着き、奢ってしまった従兄弟達と、その作り出した天使達。

いや、奢ったのは、我々兄弟姉妹も同じだろうと、自覚していたから・・・。


 初めて神殿に来た時のように、アクティースは川に全裸で入っていた。

深さは脛程度しかないが、水は非常に冷たい。

「何をしておるのじゃ。 早く来い。」

アクティースはもたもたしているミカに呆れたように、左手を腰に当てながら右腕は垂らし、ジッと見つめてくる。

元々竜で服を着ないアクティースにとっては、誰かの前で裸体を晒すなどなんとも思わない、と、言うよりも、見てほしい性質たちである。

竜はその肉体美を何よりも誇りにしているからだ。

次いで、その強靭な力、である。

しかし、ミカは年頃の人間の娘だ。

同性であっても、やはり裸を見られるのは恥ずかしい。

そのため、思い切りが付かずにモタモタしているうちにアクティースの美しい裸体に見惚れていたが・・・これ以上待たすとまた怒り出しそうなので、慌てて全裸になる。

「さて、契をこれからするのじゃが・・・。」

そう言って見下ろすアクティースの顔がニンマリと笑顔を作り、嫌な予感をミカは感じた。

しかし、逃げてどうなるでもなし、そもそも身を切るような冷たさの水に、そんな余裕もない。

「その前に、みそぎをせねばのぉ。」

「みみみそそそぎぎぎででですすす」

冷たいとは思っていたが、この僅かな時間で既に体が冷え切っており、まともに喋る事もできなかった。

「そうじゃ。 ほれ。」

アクティースがそう言った瞬間、ミカの視界が突然変わった。

(・・・空?)

青い空を流れる、綿あめ(この世界にはないが)のような雲。

なんとなく奇麗に感じた瞬間、水しぶきが上がって視界が歪んだ。

アクティースがミカの足を足払いして、真後ろに倒したのだ。

全身を氷水の様な冷たい水が、伝い流れて行く感覚に慌てて起き上がると、アクティースは心底楽しそうに笑っていた。

「ホホホ、わらわを困らせた罰じゃ。 まあ、禊ぎは全身を清潔な流水で清める儀式じゃから、丁度よかろう?」

「・・・不意打ちは酷いです。」

全身がずぶ濡れになったことにより、水の冷たさに慣れたのか、今度はハッキリと言葉になった。

だが同時に、神聖な気持ちや巫女になる高揚感などが見事に粉砕され、ミカは憮然とする。

尻もちをつきながら手で髪の水を払っていたミカに、アクティースはミカの足を割り広げつつ覆いかぶさるようにしゃがみ込んできたので動きが止まる。

秘部が晒される羞恥心が一瞬心を過るが、密着されたために別の羞恥心が心を占める。

同時に、今まで気にならなかった事が強烈に意識された。

アクティースの柔らかく、張りのある体。

出るべきところは思いっきり張り出し、それでいて弾力があり、胸など今にも張り裂けるのではないかと思えるほどの質量感。

水を目一杯入れたゴム風船 (この世界には無いけど)のようだ。

その癖、垂れる事もなくキッチリ重力に抵抗しているのだから恐れ入る。

だが、元々が仮の姿であり偽りの幻影なのだから、当たり前と言えば当たり前であり、でもやはり不可思議なものでもある。

こんな普通の人間と変わらない姿なのに、竜と同じ防御力があるのだ。

若い娘の様なきめ細かい肌は柔らかくて張りがあり、押せばしっかり押し戻す。

だが同時に、刃物を突きたてても傷一つつかない。

この感覚、姿が幻覚なのだろうか、と、考えていた時。

「巫女には制約がある。 これは竜族統一ではなく、個人ごとの決めた事じゃ。 じゃが、守らない、守れないときは巫女を解除される。 それを肝に命じておけ。 よいな?」

ミカは打って変わって真剣な眼差しのアクティースの声に現実に引き戻され、目を見返しながら不安と期待の入り混じった表情で、コクリと頷いた。

「わらわを裏切らぬ事。 貞操を守る事。 よいな? わらわの巫女になった瞬間から、お前は男と性的に交わってはならぬ。 交われば自動的に契は効力を失う。 ゆめ、忘れるでないぞ。 わらわは男の匂いが好きではないのでな。」

「・・・はい・・・。」

「では、契を始めるぞ。」

その宣言で、緊張はいやがおうにも極度に高まり、そしてアクティースは、そう言いながらただでも近かった顔を更にミカに自ら近づけ、おもむろにキスをした。

あまりに予想外の行動だったため、ミカは狼狽し逃れようと暴れた。

契と言うから、男女の交わりの様なものだと思い込んでいたのだ。

もっとも、どういう行為が男女の交わりなのか、詳しくは知らなかったが・・・。

ただどんなに暴れても、いつの間にかしっかりと抱き寄せられ、頭を両手で押さえられていたために身動きはろくに取れない。

ほかの国々では知らないが、東の王国では同性同士の性的関係は嫌悪される。

特に女性同士は禁忌に近く、女性同士で故意にキスしていただけで、国から追い出される所もあるくらいだ。

いや、それならまだ優しい方で、死刑が普通である。

そんな環境的嫌悪感もあったが、特にミカは今、思春期真っ盛り。

思春期特有の潔癖さからも、許容できる事ではなかった。

しかし、アクティースはその外見からは想像もつかないほどの力があり、とてもミカに振りほどく事は出来なかった。

そんなパニックの最中、口を割って入りこんで来るものがあった。

それは最初、舌だと思った。

それだけの質量と実態感があったからだ。

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