第14章(春雄)事実
春雄はプレハブ小屋の中で、軋むパイプ椅子に座っていた。
目の前には机とホワイトボード。少し離れたところにパイプ椅子がもう1つあった。
白いテントでの検査はすぐに終わり、学生番号と名前だけ確認された後、このプレハブ小屋で待つようにと指示された。
それにしてもあの短時間の検査で何かがわかるものなのだろうか。
そもそも検査費用は何処から出ているのだろう。後で保険の効かない高額な検査費を請求されても困るのだけれど。
そして気になるのは、白いテントの中にあった機器や設備だ。
緊急ニュースとして電磁波事故が報道されたのは今朝。あれ程のものを数時間で用意して設置できたというのか。まるで予め準備してあったかのようだ。
ぎっ、と音を立てて春雄の後ろにあるドアが開いた。
「すまないね、数分待たせたかな。なんせこの大忙しでね」
壮年の白衣を着た男性がそう言って小屋に入ってきた。
「いえ。行列に並んだ時間と比べれば、待ったという意識すらありません」
ははっ、とその男性は笑った。
先程の白衣を着た女性とは違って、この人は町医者のような雰囲気だ。気さくで柔和な表情をしている。
「医者の石田だ。春雄君だね。早速説明に入ろうか」
彼はもう一つのパイプ椅子にさっと腰掛けた。
彼は続けた。
「さて、電磁波と一概に言っても、それは『動物』って言葉と同じくらい広義のものでね。鹿もいればミドリムシもいるわけだ。今回の電磁波について、詳しくは君に文書が送られるからそれを読んでくれ」
「ミドリムシは植物という見方もありますが」
「博学だね。まあ、物の例えさ」
石田はホワイトボードに『低周波』と書きなぐった。
「今この瞬間も低周波の電磁波っていうのはたくさん飛び交っていてね。家電やなんかからバンバン出ているのさ。今回発生してしまった電磁波は、これらの元々飛び交っていた電磁波に作用して、人体に有害な存在へと姿を変えてしまった」
彼はさらに『3』とホワイトボードに書いた。
「はっきり言わせてもらう。君はこの電磁波の被害を確かに受けていた。そして、この治療は現状、不可能だ」
まあ俺が被害を受けていたのは想定内だ。しかしどこか現実感がない。治療できない、などと言われても、痛みもなければ何らかの症状も出ていないのだ。
「その電磁波の被害を受けると、どんな症状が出るんですか」
春雄は石田の目を見て、ゆっくりと言った。
石田は暫く黙り込み、そして言った。
「春雄君、君はあと3年だけ、生きられる」




