プロローグ
妖精の世界アイルファス。
そこには様々な種族の妖精が動物たちや魔獣と暮らしています。
ここは魔法を得意とする妖精『ブルーシャリア』の暮らしている国。
中央には大きな神樹『ブルヘリア』が立っており、そこには国王とその家族が住んでいます。
国王ヴェルディはとても優しく、いつも国民のためを思っていたため、国王ヴェルディは国民にとても好かれていました。
国王の政策のおかげで貧しい人も働けるようになり、国民もみんなが助け合って平和に暮らしていました。
しかし……異変が起き始めました。
国王ヴェルディが急死したのです。
国民はそれまでの穏やかさが嘘のように争いやいさかいを始め、国が荒れ始めました。
そんな時、ヴェルディの側近であるドゥルーズが「国が荒れたのは国王の家族のせいではないか」と言い出したのです。
国民は全員口々にヴェルディの家族を神樹から追い出そうといい始めました。
国王ヴェルディには妻と1人の息子がいました。
息子の名はヴァイスといい、まだ幼いですが王位第一継承者でした。
彼らは国民が追い出そうと言い出したのを知り、神樹から抜け出そうとしましたが、王妃は捕まり殺されてしまいました。
しかし、ヴァイスは何とか逃げ延びて、名前をフェリータに変えて国の端にある小さな小さな村の魔樹に住むことにしました。
……70年後
「………ぅゎぁあああ!」
「……は?」
僕が魔法の鍛錬をしていたら、どこからか叫び声が聞こえてきた。
「うわわわわっ!ちょっと!そこの男の子どいて下さい!」
上を見上げると何かが落ちてくる……ようだ。
「あっ!やっぱりどかないで!助けてください!」
どうやら、落ちてくる物体は女の子のようで、真っ白なワンピースと深紅のマントがバタバタと風にはためいている。
「はぁ,しょうがないな。……『風の絨毯』」
魔法で彼女の下に風でクッションのようなものを作る。
……ポスンッ
女の子は綺麗にその上に落ちた。
「……大丈夫か?」
落ちてきて意気消沈したようで、黙ったまま動かない女の子に声をかける。
「………あ」
「あ?」
「ありがとうございます!この魔法すごいですね。助かりました」
「……別に。ここで人が死んだら困るってだけだし」
そんなにまっすぐ僕を見てお礼を言う人は滅多にいないので少し照れてしまい、愛想がないことを言ってしまった。
女の子は食い入るように僕の顔を見ていたがニコッと笑った。
「優しいんですね。………ところで、その……名前を聞いてもいいですか?」
「はぁ………人に聞く前にまずは自分から名乗ったら?」
「そ、そうですね!私はアーファルっていいます」
「………僕はフェリータ。女みたいな名前だろ?」
「そんなことないですよ。フェリータってすごく素敵な名前です!………あの、それでフェリータに訊きたいことがあるんですが」
「……何?」
「その背中に生えている翅は何ですか?」
「………。」
僕たち妖精ならみんな持っている翅のことを『何』と言われても、何と答えればいいのかわからない。
そのとき、アーファルの背中に翅がないことに気づいた。
驚いてアーファルのことをよく見ると、ずれたマントの中に猫のような耳と長いしっぽがあった。
その耳と尻尾はキャットシーが持っている耳と尻尾に似ているが、少し違う。
キャットシーは妖精の中で一番テイムを得意とする種族で、耳と尻尾が特徴だ。
そして、翅の形がとても特徴的なのだ。
だが、アーファルには翅がない。
「君こそ、その耳と尻尾は?キャットシーとは少し違うようだけど?」
アーファルは首を傾げて、何を言っているかわからない、という表情になった。
「……『キャットシー』ってなんですか?この耳と尻尾は亜人族であるフェーレス特有のもので、私たちしかもっていないんですよ」
言っている意味が分からない。
『亜人』?……『フェーレス』?
キャットシーを知らないのはおかしくないか?
アーファルは僕と同じくらいの年に見える。
それに翅がなく耳と尻尾だけあるし……
……!もしかして魔獣か?いや、だが、こんな魔獣は見たことがない。
それに空から落ちてきたということは空を飛べるのか?
次々と疑問が湧き上がってくるが、僕がアーファルに訊いたのは一つだけだった。
「アーファルは妖精か?」