判定の日
1/25 空間魔法適性を時空魔法適性に修正
判定の日の朝、朝食を食べながらまともに答えてくれそうなグウェンに質問をする。
「判定の結果は皆に知らされるの?」
「いや、判定結果は基本的には誰にも分からない」
「そうなんだ、それなら自慢するスキルとか話した方が有利なんじゃないの?」
グウェンが驚いた顔で俺を見ている。シュエルはまたも泣きそうな顔をしている。母よ、そんなに泣くなよ。
「いや、そうもいかない。スキルといっても判定結果を残す必要があって、村にある神紙に書き写すことになっている。そこで自分と異なるスキルを書いた場合、紙は燃え、書いた本人に災いが起こる」
「そんな紙があるなんてすごいね!!嘘つきは皆いなくなっちゃう」
俺がそういうと、シュエルはついに声を上げて泣き出した。なにがどうしたんだ?
「リヒト、まず・・・おまえは昨日から話し始めたとは思えない語学力なんだ。シュエルもそのことに理解が追いついていない。できればもう少し気を使ってほしい。ちなみに他の者もリヒトが話せる事を知らない。昨晩急に話したから知らせる時間もなかった。わかるか?」
「ごめん、分かったよ。困らせてごめんよ、母さん」
「いえ、リヒトは悪くないのよ。ただ、私がいろいろと混ぜこぜになってしまったの。グウェンばかりに話をさせてごめんなさい」母よ、涙どころか鼻水まで皿に入りそうですけど。もやは童顔ダークエルフが鼻水垂らすとか事故だ。
「じゃぁ、父さん!!これから僕はどうしたらいい?皆を驚かせたいわけじゃない」
「そうだね。まずは判定の説明前に私から『リヒトが話せること』を伝えよう」
「お願いします」と俺が一礼すると、右腕をテーブルに乗せたグウェンの顔はさらに困った表情をした。
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判定の説明前に集まった子供たち?は6名だった。種族はダークエルフ3名(俺を含めて)、多分だが”鬼人の素養”と思われるツノが生えた子が2名、ゴーレムが1名だった。男女比率は男3:女2:不明1である。もちろん、不明はゴーレム。ダークエルフだけで構成された村じゃないことが、広場に集まるまでに分かったこと。あと、俺以外のダークエルフは女の子だ。鬼人の素養は男の子組で説明も聞かずに話し込んでいる。ゴーレムは無口だ。
「それではリヒトよ、入れ」黒いカーテン越しに声が聞こえる。判定装置があるのだろう、前のダークエルフの女の子はすでに出ている。
「この水晶に手をかざし、『個性判定』と念じよ。浮かんだ技術などは忘れないように」と同じく黒いフードを被ったやさしそうな表情の人が話す。フードからはみ出た髪は赤く、話すと犬歯が少しだけ見えた。ヴァンパイア系統と思われる。性別が分からないくらい端麗だ。
よく分からない水晶に前世の記憶の恥ずかしさと一緒に『個性判定』と念じると頭に浮かんできた。
個性:火魔法適性、水魔法適性、光魔法適性、時空魔法適性、片手剣技術、鍛冶技術、金髪
火魔法レベル1、光魔法レベル1、片手剣レベル1
加護:ほんの気持ち程度
あれ?罠技術と緑魔法がなくなっている。その代わりに時空魔法、そして、加護が付いて・・・って!!ほんの気持ち程度って何!!?あと適性とレベルは違うのか。これは試して見ないと分からないな。
「ありがとうございました」と動揺を隠しつつ一礼し、辞去する。
「ほんとうに話せるようになったのだな、リヒトよ」と慈愛に満ちた表情で見送られた。驚かれなかっただけマシなのかもしれない。黒いカーテンから出て、判定が終わった女の子の方に行く。
「ねぇ、リヒト。どうだったの?私は弓レベル1と雷魔法適性よ、すごいでしょ!?」と同じ村のダークエルフのヴェルが話しかけてきた。
「すごいね。僕は火魔法レベル1と片手剣レベル1だよ」と答えるとヴェルが絶句した。そうだ、初めて僕が話したのを思い出した。