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舞村美桜

「……そうか、寝言ならベットの中で言え」

「違います、寝かせるなら床で寝るように命令してください」

「………………」


全く折れてくれない。なんだこいつ。


「何度でもいいます。美桜を貴方の奴隷にしてください」

「何度でも返す。嫌だ」


想像してたよりずっとヤバい女だったと今になって後悔する。

部屋に入るなり跪いて「私を奴隷にしてほしい」などというバカげた要求をストレートに言ってくるとは思わなかった。

摘み出そうにもあの小さな体のどこにそんな力があるのか、梃子でも動く気がしない。


「無事に転生完了したらもしかしたら奴隷ハーレムとか築くかもなのにですか?美桜じゃ不満ですか?」

「……転生先なんてないよ。消えるまでの3ヶ月くらい静かにさせてくれ、それだけだ」


そう言って腰掛けていたベッドに寝転ぶ。

もう彼女を警戒する気力も失って、油断と隙だらけの格好のまま重い瞼を閉じる。


「…………どうして、転生しないんですか……?」

「……………………話したくない」


不貞腐れる様に背中を向けてしまう。

自分でも子供っぽい態度だとは分かっているが、わざわざ自重する必要も感じなかった。

と、不意に一つの疑問を感じ、今までとは逆にこちらから声をかける。


「……こっちから一つ聞いていいか」

「はい、スリーサイズは上から」

「お前、名前はなんて言うんだ?」

「……え?」


よくよく考えてみれば今の今までずっと聞くべき事を聞いていなかった。

自分で自分の事を『美桜』と呼んでいたから多分それが名前だとは思うが、それでも名前は聞いておいて損ではないし、散々無茶な要求をされたのだ、それくらい聞いてもいいだろう。


「美桜は……美桜。舞村美桜(まいむらみお)

「舞村……美桜か。いい名前だな」


他意のない、思ったままの感想……だろうか。

睡魔に蝕まれた意識の中、鈍った思考を動かすだけの力もなく言葉を紡ぐ。


「あぁ……、そうだ。俺は、真嗣、園崎真嗣だ」

「真嗣様……」

「様なんて付けんなよ……こっちが恥ずかしい……って………………」



「園崎…………真嗣さん…………美桜は……」


先程までの冷ややかな視線とは裏腹にすうすうと寝息を立てて眠ってしまった彼……真嗣を見ながら内に渦巻く感情のまま呟く。

記憶から浮かんでくるのは終始ぶっきらぼうな感じで接していた彼の、笑った様な泣き顔。


「………………………………」


起きたら迷惑そうな目で罵られるだろう。

でも人肌の温もりが欲しく、ベッドに潜り込む。

そのまま真嗣に抱きつくが物足りず、むず痒い。

疼く様な渇望を満たそうと迷いなく服を脱げ捨て、先程より強く抱きつく。

玄関先ではパッドなどと揶揄されたその胸は嘘偽りなくたわわに実り、真嗣の胸板で押し潰される。


「真嗣……さん…………」


震えた声で縋る様に名前を呼ぶのを最後に、美桜も疲れ果てて眠ってしまった



「ふぅん、中々面白い組み合わせね」

「お嬢様、紅茶をお持ちしました」


執事の持ってきたカップを手に取り、モノクルに映る少年と少女の寝顔にうっとりとした目を向けて紅茶を飲む


「うん、いつも通り爺やの紅茶は美味しいわ」

「お褒めに預かり光栄です、それでは」


そう言って部屋を後にする執事。

人造人間(ホムンクルス)の技術が盛んな世界から取り寄せただけの事はあり執事としての仕事を完璧にこなしてはくれるのだが、いかんせんまだユーモアが足りない。

まあ変に自我を持ってイレギュラー起こされて滅んだ世界は……なんだっけ。

確か魔術によって人工的に作られた生物が発展したんだったか。

どっかのお馬鹿さんが中途半端に技術を爆進して死んだせいで制御出来なくなって化け物たちに文明を追いやられて人類が死滅したんだったかしら


「まあいいわ。……さて」


モノクルのレンズは洋館で眠る少年少女たちを映し出す。

それぞれの傷と願いを抱いた彼らを。


「君たちは、主人公になりあがれるかしら?」

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