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第2話一人目のお客さま

出勤初日。

仕事を教えてもらいながら 雑事をこなしてると 初めてのお客さまが来店。

「いらっしゃいませ」

水樹さんと二人で出迎える。

ドキドキ。

独身の頃 販売の仕事をしていたし 実家も商売してたので本来商売人気質。でも緊張する。商売人気質なのに人見知り。

女性のお客さま。常連の方のようだ。

Yシャツを5枚とズボン1枚 持ってこられました。そして先週お預かりした分の預り票。

1週間分 今日出して 先週出した分を今日持って帰るんだ。一石二鳥というわけだ。ワタシはこういう感じのことはしたことないけど このやり方の人 多いんだろうな。

会員カードを預り レジにスライドして通し 会員カードをお返しする。同時にフルネームも確認。

ホワイトボードの仕上がり日を確認しながら

「仕上がりは来週水曜日で大丈夫ですか?」水樹さんがたずねる。

「大丈夫です」お客さまが答える。

「気になるシミとかありますか?」

1枚1枚見ながらお客さまに確認してた。

「本日 木曜日はYシャツハンガー仕上げ1枚98円です」

水樹さんが 「ズボンの表示を見つけて 洗えるか見てくれる?」と ワタシに頼んできた。 だけど

「えっ?表示?」今まで 気にしたことない。

ズボンの後ろのポケットの中にあるそうだ。

見つけて水樹さんにその表示を見てもらう。OKだ。

ビックリ。今までクリーニング屋さんに自分の服の表示を確認してくれるという作業見たことない。お店を出てから表示見てたかもしれないけど ワタシの前で見てたことはない。

表示は家庭科の授業以外で見たことは 今までにほんの数回、数える程度。

レジに 頭を切り替える。。

2枚重ねの預り票がレジから出てくる。料金を伝える。

1000円札と小銭を お預かりする。ディスカウントスーパーのポイントカードも一緒に受け取る。

ディスカウントスーパーのポイントカードは クリーニング店のレジとは違う機械に通す。レシートが出てくる。お釣りとレシートを専用トレイに乗せ確認しポイントカードも返す。

2枚重ねの預り票の上のページを 点線に沿って切り取り お客さまに渡す。

最後に先週お預かりした洋服達を 預り票のナンバーを見てポールから探しだしお返しする。

受付の作業は おしまい。お客さまが帰られる。

「ありがとうございます。」

帰る際後ろを向いたお客さまの背中にも「ありがとうございまーす」お礼を言う。

預り票の控えをクリップに留める。

次は タグつけ。Yシャツのハンガー仕上げは上から3つ目のボタン穴にタグを通し 決められたところでタグを折り 専用の大きなホッチキスで2回打つ。タタミ仕上げの時は下から2つめのボタン穴に通すらしい。

これは 今までのクリーニング屋さんの普通の作業のような気がする。少しタグは長め大きめが気になるけど。

ここからが 驚かされる。

すべてのポケットの掃除。Yシャツの胸ポケットもズボンのポケットもひっくり返して専用ブラシでゴミやほこりをとる。ズボンのポケットは戻さず出したまま工場に送るとポケットの中まできれいになってくるそうだ。

前ボタンやボタンダウンの襟のボタン、腕のボタンも全部 外す。破れや穴、シミがないかさがす。けっこうめんどくさい作業。

ん?襟が汚れてる。

一緒に見てた水樹さんがカウンターの下の 沢山小さな引き出しのあるケースからオレンジ色でしみと印刷されてあるサブタグを出してくれて

「ここに仕上がり日と 襟に汚れあるのでエリと記入してタグの先端に 見えるように重ねて この大きなホッチキスて2回止めて」

えっ 仕事が細かい。

「(エリ)はカタカナでOK。」確かに漢字は面倒くさい。

ズボンは後ろのベルト通しの中央に タグを逆さまに通しにYシャツと同じように大きなホッチキスで2回打つ。

これも ビックリ。タグを逆さま。え~~~。

すると水樹さんがポールから仕上がったズボンを出してきてくれた。ズボン用のハンガーに通してあり二つ折りになってる。仕上がったら タグは 逆さまではない。

ズボン縦の長さの半分あたりが折り目がきてハンガーが通されウエストのベルト通しは下を向いてる。なのでベルト通しは逆さまだがタグは上を向く。

なるほど~~~。

ズボンの前チャックを開け閉めして壊れてないかをチェックをする。これは けっこう抵抗がある…。でもチェックしておかないとクレームにつながるらしい。

出してきてくれたズボンを水樹さんから受け取り「ワタシ片付けます」ワタシが戻す。仕事になれるための練習の一貫。

水樹さんが「洋服を預かるときは必ず1枚1枚表示見てね。Yシャツは見なくていいけど 他の服は見落とすとクレームにつながるから。表示 全部×(バツ)の時が時々あるし その場でいったん預りますが洗えないかもしれませんと了承もらわないといけない。」と教えてくれた。

表示が全部×(バツ)?そんなことあるの?

続いて「表示がついてないのもあるから その時は 工場でおまかせで洗わせていただきますと了承もらうことになってる。」

「工場から連絡あったら お電話させていただきますね も付け加えてね」

表示が チクチクするからと嫌がって切ってしまったりする人や お仕立て物のため元々付いてなかったりするらしい。

「他にも了承もらうの沢山あるからね。おいおい教えて行くね」

え~ 今までクリーニング出すときそんな了承受けたことない。

「ワタシ 今までクリーニング屋さんと1度も そんな会話したことない」心の声が出てしまった。

すると「ちゃんと見て了承もらってないと工場の人が困ってしまうしクレームが来たりするから絶対了承もらってね。クレームと言えばズボン、さっきのはスーツの下っぽいズボンだから聞いてないけど 作業着や綿パン、女性モノのパンツ系は必ずライン入れるか聞いてね。これを聞くようになってからクレームがかなり減ったらしい。工場の人が言ってた。」と水樹さんが教えてくれた。

これも 今までクリーニング屋さんと やりとりしたことがない。かといってクリーニング屋さんにクレーム言ったこともないけどな~。

けっこうめんどくさいなぁ…。

話ながら水樹さんがカウンターの下にある小さな引き出しが沢山あるケースの中の引き出しから 8㎜か9㎜×5㎝ほどの白く細長あサブタグを2種類出してくれた。

一つは 黒の文字で線なし もうひとつは赤い文字でラインありと印刷されている。これをナンバーの印刷されているタグの先に大きなホッチキスで留めてほしい。」

ということは 覚えておかないといけないのか。これも大変だ。

物覚えの悪い自分に不安がよぎる。

ふと このケース もしかしたら サブタグが たくさん入ってること?と気になった。

水樹さんに「引き出し 開けてみていい?」と聞いて1個1個開けてみると 不安が的中した。

なにこれ。色や形の違うサブタグが沢山…。

さっきの8㎜か9㎜×5㎝白で細長いサブタグで ハンガー仕上げ タタミ仕上げと手書きのものがある。これって もしかして1枚1枚ワタシ達が手書きで書くの?

いや それより 先ほどのお客さまのYシャツで教えてもらったけど ボタン穴の付ける場所で ハンガー仕上げかタタミ仕上げか区別するんじゃなかったっけ?と気になった。

水樹さんが ポールに掛かってた衿付き前ボタンシャツとブラウス、綿の薄いニットを出してくれた。

「シャツ類やブラウス類ニット類上着類は 襟足のところについてる布製の首タグにクリーニング店の ナンバーの付いたタグを通し決められた所で折り大きなホッチキスでとめ 付ける。」

「この衿付き前ボタンシャツのタタミ仕上げの場合は Yシャツと同じで下から二つ目のボタン穴にナンバーの付いたタグを通す。サブタグは不要です。ブラウスと上着類のタタミ仕上げの場合は襟足のナンバーの付いたタグに手書きのタタミ仕上げのサブタグを大きなホッチキスで留める。」

「ニット類のハイネックやタートルのニット類のハンガー仕上げは襟足に付けると 工場の人に分かりにくいから正面向かって右脇の 下の方に安全ピンつけてナンバーの付いたタグを逆さまに安全ピンに通して大きなホッチキスで2回うって手書きのハンガー仕上げのサブタグを付ける。タタミ仕上げの時も同じでサブタグ付けてね。」

え~~~ 待って待って メモ帳メモ帳。覚えられない。

あわててメモ帳を 取り出す。

聞き返しながらメモ帳に書いていく。

あれ?ちょっと待って。この白い前ボタンシャツ パッと見 Yシャツとかわらない。区別つかない。どこがどう違うの?頭が混乱してきた。

「1度に覚えられないだろうし おいおい また教えていくよ。12時になったし今日はこれまで。お疲れさま。」

あっという間の二時間だった。タイムカードを押す。

初めてのお客さまが わかりやすくてよかった。閑散期でよかった。

明日は 岬さんとだ。



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