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05

「神殺しの、巫女?」






「自分が仕えていた神を殺した巫女だ」






「仕えていた神を、殺した巫女…」






犬神の彼の言葉を、まるで咀嚼するかのようにオウムのごとく繰り返す一宮。一宮と殴り合いをして、顔を合わせるようになって今年で四年目。犬神の彼の言葉を、にわかに信じきれないような顔をして私を見てくる。






「確かに、私は神殺しの巫女と呼ばれていた。でも、私にそうさせたのは村の人たちだ。齢七つの幼子が己の意思をもって神様を殺せるものか」






「それでも、あの神を殺したのはお前だという事実は覆らないよ」






「耳と尻尾を出して、彼の神様の足にじゃれついていた小さな犬っころは情が深いからなあ」






私の言葉に、妖たちの間で緊張が走ったのが手に取るように分かった。犬神の彼が、この棟の頂点なわけだ。確かに感じる妖力は、ここに居る誰よりも大きく膨大だ。あの時の子犬が、こんなに大きくなったんだなあ。感慨深いものを感じながら、私はにんまりと笑った。






「お前が、殺した」






「うん。そうだ、その事実は変わらない。あの神様は、気が狂って人間の血肉を啜り祟り神となった。当時の巫女を勤めていた私に、鎮めるように命が下ったのは当然。けれど、齢七つの幼子に殺す以外に何が出来る?犬っころ、お前様の育ての親を殺した私を殺すか?」






「…殺せるわけないだろ、」






泣きそうな顔をした犬神の彼。私と犬神の彼は、一緒の村で共に育った。私は神様の巫女として。彼は神様の義理の息子として。一緒に遊んで、一緒に昼寝をした。






「たった七百年。たかが七百年。されど七百年。また会えたね、犬っころ」






「…巫女、いい加減その犬っころ呼び止めてくれる?俺は斎火朔夜って名前があるんだけど」






「ふぅん」






「ふぅんって…」






斎火朔夜(いみび さくや)ってまた、なんとも高尚な名前だこと。眉を潜めた彼に笑う私。七百年ぶりの再会に、なんとも言えない気持ちになった。






「朔夜の花嫁になるんか?」






「ならん」






「なるわけないでしょーが」





「…おいおい、即答かいな」






一宮め、うすら寒くなることを言うな。あくまでも、私たちの関係は姉弟のようなものだ。誰が花嫁だっつうんだ。殺すぞ、一宮。






「目で物語んなや、タマ」






「タマ言うなって言ってんだろうが、鬼っころ。三度目はない、その角をへし折る」






「はっ、お前にこの角は折れへんよ。神殺しの巫女だか何だか知らへんけど、俺強いで?」






「3位止まりごときが偉そうに言うなよ。私をナメてると痛い目あうぞ」







「あぁん?」






「タマちゃん、嵬くん、めっ!!」





一宮が凄んだ瞬間、ひよの手が一宮の頬に飛んだ。ペチン。平手打ちまで可愛らしいのか。なんて罪だ。それなら、私も平手打ち喰らいたい。ペチって叩いてくれ。






「…気持ち悪ぃ、あの変態誰だよ」






「あの女はお前の知り合いで、あの男はお前の仲間だが?」






「気持ち悪ぃ」






ひよの平手打ちを喰らってヘラヘラ笑う一宮。それを羨ましそうに見つめる私。げぇと顔をしかめた朔夜。まるでカオスさながらの風景に、後にお蝶ちゃんはこう言った。






『教室に入ってきた時から、あの一宮さんと言い合いをしてたから度胸あるなとは思っていたんだけど、まさか変人に分類される子だとは思っていなかった』と。

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