希望の暗闇
どれだけの時が経ったのだろう。
気がつくとそこは、見たことのある暗闇であった。どうやらここまでは順調のようだ。あとはあの眩い光を見つけるだけだ。前回はもがき苦しんだ末見つけたが、今回はなぜか確信があった。
(こっちだ)
この空間のようなところは、二回目でも精神に直接訴えかけてくるような恐怖を感じて気持ち悪くなるが、道がわかっていればそれほど脅威ではなかった。むしろ、自分の未来を引き立てるためのスパイスであるかのような気さえした。
しばらく闇の中を歩き、というよりは漂い、深く記憶に刻まれた希望の象徴を見つける。自分の確信はここでも間違っていなかったようだ。勇人は自分の未来の姿に目を細め口元を歪める。
距離は測れないが手を伸ばせば届くとわかるところまで光源に近づく。気を引き締めるため両頬を叩き、一言発する。
「さあ、二世界を統べる英雄――佐藤勇人の降臨だ!」
右手を伸ばし光に触れる。まるで求められているかのように異世界へ吸い込まれていく。
(ああ、何たる心地よさ)
白くなっていく意識に逆らわず、その身を委ねる。
――次に見たものは、中世を思わせる景色であった。
その予想通りの光景に、優しそうな笑みを浮かべ呟く。
「ただいま、異世界」
運命が微笑んでいる気がした。