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9 戦闘も慣れてきた

「……ん?」


 ふと目が覚めた。胸当てをつけて寝たからか、ちょっと苦しい。顔をあげると相子と目が合う。


「あ、起きた?」

「うん」


 頷きながら携帯電話を開いて時間を確認。あと何分寝れるかな?


「んあ? 時間過ぎてるじゃん!」


 すでに4時間も寝てる! 寝すぎた。やべえ。もしかして私、全然起きなくて諦められてた?

 慌てる私に相子はくすりと笑う。おや? 怒ってはない?


「大丈夫だよ。わかってて起こさなかったの。私はまだ眠くなかったから」

「そう?」


 そう言えば、時間が早いからだと思ってたけど、初日から眠いなーって思ってない? あれ? そうだっけ? 疲れたし、横になったら寝てたけど、そうかも。眠くてあくびとか出てないわ。時間的にはたっぷり寝てるだけかと思ってたけど、もしかしたら睡魔もないって可能性もあるのか。

 まあ、そうだとしてもいくら回復の泉飲んでも、ずっと動くなんて無理だし、夜は休憩した方が精神的にはいいに決まってる。お腹は減るんだから、体内時計はちゃんとしないと。


 そんなわけでまだいいよ、と言い張る相子を寝かしつける。十分寝たしもういいわ。


 相子は私に手にいれた食べ物を半分渡してから寝た。なにもしてないのに食料ゲット。最高の気分だ。

 ま、最初の私の行動のおかげだよね! いやー、我ながらいい仕事したわ。


 実はかなり魔物が近づいてきたり、相子が騒いだりしたときはちょっと意識が浮上してたけど、面倒だから呼ばれるまで大丈夫だろうと無視してた。

 私が覚えてるよりもたくさん魔物が来たみたいだけど、問題なかったみたいだ。よかったよかった。これなら、次回から胸当てははずして寝て大丈夫ね。


 食料にも余裕が出てきたし、楽勝だね。楽勝楽勝ぅ!

 もらった飴玉をなめつつ、剣をかかえるようにしてじっと入り口を見張る。


 飽きてきたので相子を見る。最初は寝返りを繰り返してたけど、やっぱり精神的には相子も疲れてるみたいで今ではぐっすり寝ている。

 呑気な顔をして寝ている。ちょっとだけつついたりしてやろうか、と意地悪な気持ちが沸いてきて慌てて自省する。


 相子は私を4時間も寝かせてくれたと言うのに、私は嫌がらせとか、性格が悪いにもほどがある!

 はぁ、やれやれ。だいたい、いざって時のために相子には元気でいてもらわなきゃいけないんだし、優しくしてあげなきゃね。


 よくよく見ると、て言うか今更よく見なくてもだけど、相子は結構可愛いよね。小さめで小動物っぽいし、行動もいちいちいい子だし。天使かよ。まあ、最後は盾になるんですけど(笑) ……私は悪魔かよ。(笑)、じゃないわ。

 いやほんと、最期まで優しくしてあげよう。


 よーし、頭でも撫でてあげるか。いやまじで、可愛いとは思ってるのよ? こう、仔犬系と言うか。現実でも友達になりたいくらいには好きだし気に入ってる。でもほら、ゲームの世界ではないけど、こう言う状況だからね?

 非常事態には落ち着いて、ちょっと非情でも決断しなきゃいけないことってあるのよ。現実だもの。


 とかなんとか、自分でも考えてて、あれ途中から何かおかしくない? みたいに思ったりしつつも、だらだら考えたり、居眠りしながら時間を潰した。

 戦士職の私はどうやら警戒しながら眠れるようで、座ったまま意識して寝ると魔物が入り口から入ってくる一瞬前に目が覚める。

 めっちゃ便利だけど、相子には黙っておこう。だって、相子が見張りしてくれる必要ないってなって、私だけ警戒し続けるとか不平等じゃん?

 私が敏感すぎて相子の番でも起きちゃうのは仕方ないとして、相子は起きててよ。やっぱり平等じゃないとね!


 そんな感じで寝たり起きたりして4時間たってから相子を起こした。相子も4時間寝て満足したみたいだけど、朝の3時から動いても仕方ないからまた寝た。

 そうして相子の分はなしで朝の6時から朝御飯を食べて、本日三日目の冒険を開始した。

 

「今日も頑張ろう!」

「おー!」


 お、いい返事だね。相子もやる気のようで何よりだ。この勢いで完全クリアを目指そう!

 この先のことはまあ、何階まであるかわからないし、詳しく考えたら鬱になるから考えない。とにかく頑張ろう。


「さっそく来た。行くよ!」

「うん!」


 まずは二階を制覇しよう。デカイ芋虫三匹とオコジョだかイタチだかよくわからないもの二匹が出てきた。


 まずはオコジョを牽制しつつ、並んでる芋虫に攻撃をしかける。


「『払い斬り』!」

「『ファイアーボール』!」


 背後から相子がオコジョに向けてファイアーボールを放ってくれたので、オコジョの攻撃を気にする必要がなくなった。

 ナイスだ! なのでそのまま芋虫に追撃をかける。て言うか踏み潰す。気を付けないといけないのは、踏んだ後魔物が光ったらすぐに足をどけること。万が一足の下に食べ物が出てきたら困るし。


 そして芋虫を殺してから、相子に向かって威嚇しながら近づこうとしているオコジョに攻撃。振り向いたオコジョにさらに相子がファイアーボールして倒せた。


「よし!」


 ちなみにオコジョはパックの白ご飯。何故かレンジでチンしなくても、いつでも開けたらほかほかが出てくる優れものだ。

 ご飯と飴玉を拾う。ご飯はまだ残している沢庵と食べると美味しいんだよねー。


「相子、フォロー良かったよ。ありがとう」


 いい感じに魔法を使ってくれたので誉めておく。自信つけて積極的に攻撃してくれないと困るからね。誰だって褒められて悪い気はしないだろうし、私は基本的に褒めて伸ばすタイプなのだ。

 思惑通り、私の褒めに相子はぱっと笑顔になる。


「ほんとに!? 嬉しい。えへへ。私こそ、奏のおかげで安心して攻撃できるんだもん。こちらこそ、ありがとう、だよ」

「じゃ、お互い様ってことね。この調子で頑張って、早く帰ろうね」

「うん! もっと、奏の役に立てるよう頑張るね」


 相子ははにかむようにそう微笑む。可愛いなぁ。


 たった数日だけど、こう言うおかしな極限状態にあるからか、相子とはぐっと仲良しになれた気がする。それに私自身、相子のこと普通に好きになってる。

 この調子で仲良くなって、息もあって、何事もなく二人ともクリアできれば一番いいんだけどな。


 私は万が一、いざというときは相子のことを犠牲にしても仕方ないとは思ってるけど、できればそれが起こらなければいいとも思う。それも事実だ。

 できる限り頑張ろう、と改めて心に決めた。


 そうしてその後もうろうろしては戦って、その日は二階をクリアしたところで終了した。

 部屋はどれだけ移動してもボスは回復しないみたいだけど、さすがにボス部屋で寝るのは抵抗がある。時間経過じゃないと断定できない。

 そんな訳で今日も三階の回復の泉で野宿だ。階段あがって右手すぐに回復の泉があるのは三階でも同じだった。固定だといいなぁ。


 今はまだ三階だけど、どのみち五階とか毎日上がり降りしてられないもんね。階段の場所も違うからうろうろしまくることになってエンカウントもするとか、絶対無理。これからずっと野宿だけど仕方ない。


 晩御飯では一階ボスの焼き豚をおかずに白飯。美味しい。分厚い肉の感触といい、脂身の旨味といいたまらん。


 ちなみに二階のボスは大きな蟷螂で、風魔法を使って遠距離攻撃をしてくる。相子のファイアーボールがよく効いたし、足元からの攻撃もしやすい。

 犬ボスでちょっと度胸がついて慣れたのか、比較的楽に勝てた。


「ふー、この調子ならさくさく行けそうね」

「うん。そうだね。明日は4階に行けたらいいね」

「おっと。過信は禁物よ。死んだら終わりだしね」

「えー。奏が先に言ったんじゃん。じゃあ、明日はレベルあげする?」

「そうねぇ」


 スキルがある以上、戦闘すれば経験値が入ってレベルがあがってスキルも増える、と考えるのがストレートだろう。

 基本的にこのゲーム、シンプルに出来てるみたいだし、とりあえずレベルあげして確認するのもいいだろう。


 明日のことを話してから、早くも慣れてきたので今日もさっさと寝ることにした。あ、今日は胸当ても外していいよね? 寝苦しいし。






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