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COLON:SERIES - アンネ・ラインハルトの記録  作者: 志室幸太郎
ANNE:2018 - アンネ・ラインハルトの福音
30/53

[4-12]

 二日後。東京都。新宿御苑。

 初夏の新緑に囲まれた旧御凉亭から、池を眺める人影があった。

 金色の髪を整髪料で撫でつけ、口髭を蓄えた紳士。皺の刻まれた顔で穏やかに微笑み、時折風景に感銘を受けたように頷いた。


「そのうんうん頷くやつ、おじいちゃんっぽいですよ」


 背後から声をかけられて振り向くと、落ち着いた靴音を立てながら白衣の女性が歩み寄ってくる。


「もう気持ちはおじいちゃんさ。セーラ、久しぶりだね」

「マシューおじさんも。元気そうで良かった」


 セーラはそのまま紳士と軽いハグを交わす。


「それにしてもこんなところでも白衣とはね。他に人がいたら怪しまれてしまうよ」

「眼鏡と白衣は身体の一部なのでね」


 ふふんと笑って、セーラはマシューの隣に立って池を眺める。


「結果が出ました。やはり“与えられた十三人”の塩基配列に酷似しています。ですが多分、本人はまだ自分の真価に気づいていませんね」


 マシューは一度天を仰ぎ、また池に視線を落とす。


「そうか……。不思議な因果だ」

「因果、でしょうか。ご子息は気づいていたのだと思いますよ」

「あの子を息子と呼んでもいいものか、未だに疑問はあるけどね」

「彼は間違いなくあなたの息子ですよ。科学的にも、心的にも」

「君がそう言うなら間違いないだろう」


 朗らかな笑顔で、マシューはそう言った。


「今、彼女は?」

「ヒリフダ市で例の件に対応してます。昨日彼女発案のオペレーションが承認されましたよ。下手をすれば彼女に危険が及びますが……どうします?」


 眼鏡の奥で、セーラの目が鈍く光った。

 マシューは風でわずかに波打った水面を見て、また何度か頷いた。


「様子を見よう。その試練が、彼女に福音をもたらすかもしれないしね」

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