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夢現  作者: 宵の明星
3/3

舌切り雀・壱




 ……雀を助けた……




 ……喋る雀を……






「……あれ? 驚かないのですか?」




「……あぁ、まぁな。……こういう事には慣れているんでね」






―――




 その日の朝、俺は高校へ向かう為いつものように通学路を歩いていると、その途中で一人の男が公園の真ん中で蹲っているのが見えた。


 俺は初めその男が何をしているのか分からなかったが、よく目を凝らして見るとその男の足下には雀が一羽倒れていて、その雀に向けて男が石を何度も叩きつけているのが見えた。


「止めろ」


 俺は素早く男に向かって走っていき、その男の手を掴んで睨みつけた。

 そんな俺に圧倒されたのか男は、


「ひ、ひぃッ!!?」


 と、真抜けな声を出すと一目散に逃げて行った。




 ……あれ? つーか、今の村井か?



 俺は逃げて行く男の背中を見ながらそう思った。


 ……今逃げて行った村井と言う男は俺の高校のクラスメイトで、休み時間中も他の生徒と話す事なく椅子に座ったまま黙って過ごしている……まぁ、そんな感じの生徒だ。



 ……しかし、一体あいつは何を考えているんだか……。


 命の重さという物を知らないのか?


 ……全く……最近の高校生は……石を叩きつけられた雀の気持ちも考えてみろ、って今その雀を助けなきゃいけないんだった!!!




 俺は石を叩きつけられていた雀の事を思い出すと、足下に倒れているであろう雀に急いで目を移した。



 が、そこには……






「ふぅ……、全くとんだ災難にあいました。」






 ……そこには、何事もなかったかのように体に付いた砂を羽で払いながら言葉を喋る雀の姿があった。




 ……ほぅ、最近の雀は言葉を喋るのか。随分と凄い世の中になったものだなぁ……




 と俺は軽い冗談を言いながら比較的冷静に雀を観察していた。

 一方、観察されている当の本人は、




「全く……、最近の子供は何を考えているのやら……。命の大切さというものを全く理解していないですね。こんな事だから……」




 と俺の視線に気付いていないのか、羽(腕?)を組みながらぶつくさ文句を呟いていたが、暫くしてようやく俺の存在に気が付くと、


「……あっ!! どうもすいません。いやぁ、駄目ですね。ついいつもの癖で、自分の世界に入り込んでしまいました。」




 と中々丁寧な言葉遣いで話した後、礼儀正しくお辞儀をした。

 そんな雀に対して俺は、


「あぁ、いや、別に気にすることはないさ。……それよりお前の方は大丈夫なのか? あれだけ石を叩きつけられたのだから、かなり酷い怪我を負っているんじゃないか?」


 と一度笑って答えた後、心配しながら雀に聞いたが、


「……心配して下さってありがとうございます。ですが大丈夫です。こんな姿ですが意外と頑丈なんであれ位どうってことないですよ。」


 と雀は明るい声で答えた。

 しかし、そのあと雀は首を傾げながら、


「……あれ? ……ところで今更ですが……、私を見て驚かないのですか?」


 と不思議そうに聞いてきたが、そんな雀に俺は、


「……あぁ、まぁな。……こういう事には慣れているんでね」


 と微笑みながら答えた。






―――




「……いやぁ、なるほど。凄いですね桐島さん。貴方のような人が増えてくれれば私や他の他の達も嬉しいのですがねぇ」



 雀は感心した様子で言ってきたが、それに対して俺は、


「まぁ、メッセージに気付けてもそれに答えられない事が多いからあまり意味がないんだけどな」


 と苦笑しながら答えた。

 あれから俺と雀は何故か意気投合してしまい、俺の過去の話しや、最近の人の気持ちについてなど、よく分からない事を話し合っていた。


「いやいや、それでも嬉しいですよ。まず大事なのは気持ちですからね。思わなければそれを実行することさえできませんから」


 雀は相変わらず明るい口調で俺に言った。

 そんな雀に対して俺は、


「……まぁな、確かに人は何かをしたいと思わなければ行動しない。

そして見えている物しか信じないのも人だ。

……だからお前達の事を見ることができない人間はお前達の存在を信じることはないし、お前達を助けようと思う筈がない。

……だからお前達の存在を理解してくれる人を増やす事は難しいだろうな……。

現に俺も周りの人間にお前達の存在を伝えようとしたが無理だったよ。

……だが、それでも俺はいつかお前達の存在が理解される日がくると信じてる。

……だからその日がくるまで俺が頑張らないとな」


 と少し寂しい表情をしながら答えた。

 それを見た雀は、


「……桐島さん。……貴方はやはり素晴らしい人だ。貴方ならばいつか必ず私達の事を他の人々に理解させる事ができますよ。その相手を思いやる気持ちを忘れなければ必ず!!」


 と感激した様子で言ったが、その直後、


「……あっ!! 忘れてました……。そういえば先程助けていただいたお礼がまだでしたね」


 と急に思い出した様子で言うと、いきなり雀の目の前に掌サイズ位の小さなつづらと俺の身長と同じ位の大きさがある大きなつづらが一つずつ現れ、


「えぇと、いきなりで申し訳ないのですが、貴方は目の前にある大きなつづらと小さなつづらのどちらがいいですか? 好きな方を差し上げますよ」


 と明るい声で聞いてきた。



 ……ん? あれ? つーか、このシチュエーションってどこかで聞いた事があるような……。えーと、なんだっけな? 確かどっかで……あっ、






「……お前、まさか……」


 俺は思わずそう聞くと雀は、


「あ、わかっちゃいました? 有名ですからねぇ、私の昔話。でもまさかここまで有名になるとは思ってもみなかったので私自身かなり驚いているんですけどね」


 と少し照れたように言った。

 俺はその言葉を聞いて確信を得ると、


「……なるほど、やはりお前は舌切り雀だったか」


 と納得した。






 あれ? という事は大きいつづら選んだら俺死ぬんじゃね?


 ……ヤバイヤバイ、なんとしてもそれは防がないと。……という事で、つまり生き残る為には小さなつづらの方を選べばいいという事か……。


 ……いや、実はそれはフェイクで小さいつづらの方が罠かもしれないな……。と思ったら裏の裏をかいて大きい方……、と見せかけて小さい方……、じゃなくて大きい方……、かもしれないが実はビック、いやスモール、BIG? SMALL?






「……て、どっちだよ!!!」


 俺は思わず叫んでしまった。

 その声に舌切り雀は少し驚いたのち、


「……えーと、あの、もしつづらを選ぶのに迷っているのでしたら心配しなくても大丈夫ですよ? どちらを選んでも家に帰るまで決して開けないと約束していただければ大丈夫です」


 と困惑した感じで言った。

 一方それを聞いた俺は、


「え? あ、そうなのか? ……て、じゃあ帰る前につづらを開けてしまったら?」


 と恐る恐る聞いてみると……、




「一瞬で死にます」


「一瞬かよ!?」



 俺は思わずつっこんでしまった。


 つーかお前、なんでそんな軽い感じで死ぬとか言える訳!? 普通言えないだろ!! しかも一瞬てお前どんだけだよ!! だいたい命の恩人に対して命がなくなるかもしれないプレゼントを渡すか? 恩を仇で返すつもりかよ!! それにさっき最近の子供は命の重さを知らないとか言ってたけど、お前の方が絶対知らないだろ!!



「まぁまぁ、そんな恐い顔しないで下さい。このつづらは持ち主の手で開ける以外に開ける方法はありません。だからなにかの拍子に落としてしまってつづらが開くといった事故で死ぬことはないので安心して下さい。……まぁ、つまり何がしたいのかというと、これはただ純粋に私の約束を守れるか試しているというわけです。……ま、桐島さんは約束を破るような人ではなさそうですし……心配ないですね。」


 俺の憮然とした表情から心を読んだのか、雀は俺に対して宥めるように言った。



 うーん……なんかいいように丸め込まれている気がするのだが……、

 と俺はまだ釈然としない様子だったがそこへ、


「ところで桐島さん。その服装からして学生ですよね? 学校に行かなくて大丈夫ですか?」


 と雀は不思議そうに聞いてきた。

 俺はそれを聞いた瞬間、


「やべっ!! 学校へ行く途中だったって事すっかり忘れてた!!」


 と慌てて小さいつづらの方を手に取り鞄に入れると、


「あ、えーと、まぁ、暇だったらいつでも会いに来てくれ、まだ話したい事が色々あるし、俺は大体いつも暇だからさ。と、いう訳でこのつづらは有り難く貰っておくよ。じゃあな!!」


 と言って俺は猛スピードで走り出した。

 その時後ろから、


「え、あ、桐島さん!! えーと、とにかく本当にありがとうございました!! それで、機会がありましたら喜んで貴方に会いに行こうと思いますのでよろしくお願いします。あっ、あとつづらは必ず帰ってから開けて下さいよ〜!!」


 という雀の叫び声が聞こえたが、それに対して俺は後ろを向かずに手を軽く振って答え公園をあとにした。







うーん、小説を書くのは難しいですね(^_^;)

初めてこういった物を書くので、なかなか上手く書けません……。

ですが、諦めずに自分のペースでのんびりと書いていこうと思います。

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