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examination(エクザミネーション)”C”  作者: 以龍 渚
Episode 3.Assault
16/42

BATTLE 7.圧倒(Overwhelm)

「いきますよ、バルロさん。――奴の能力はあのカードをいろんなカタチに変える能力だ、油断すんなよ」

 合体ゴーレムが、その巨体とは思えないスピードで日向との距離を詰める。

「! ――ダイアのA、ダイアモンドシールドっ」 日向はとっさに巨大な菱形の盾を目の前に作り出す。

 ゴーレムの拳と菱形の盾がぶつかり、激しい音を立てる。

 ルフィルが翼を輝かせる。――その翼から氷の槍を放った。神威の氷槍牙だ。

「なっ!?」 ルフィルの瞬間ラーニング能力を知らない神威が驚きの表情を見せる。

「氷室っ、私達も彼女の援護を」 遥も合体ゴーレムに向けて弓を引き、矢を放つ。

「そうだ、今は驚いている暇はない」 神威も氷槍牙を投げ放つ。

 だが、ルフィル、遥、神威の攻撃はゴーレムに効果がない。

「ん? なにかしたのか? ――気のせいでしょう、バルロさん」

「そんな、私たちの攻撃が、全く効いていない」 遥は力なく、弓を持つ手を下ろした。

「物理攻撃じゃダメなんだよ、真壱さん」 遥の後ろから声がかかる。平男だ。

「! 平田、あんた大丈夫なの?」

「もう大丈夫、ようやく借りを返せそうだよ」

 ――平男が新しい武器を生成している。拳銃が消えたのはどうやら新しい武器を構築するためだったようだ。

「平田。キミはどうすれば攻撃が効くのかわかったのか?」 神威が平男に問いかける。

「簡単なことだよ、氷室くん。物理攻撃以外で攻撃すればいいだけ。フォースなら、無、炎、水、風、雷とか、今僕が作り出した、この火炎放射器とかでね」 平男が作りだした武器が姿を見せる。完全構築された火炎放射器だ。

 平男がゴーレムに向かっていく。

「くらえっ」 消防の放水の如く、激しい勢いの炎が放たれた。

「――ムジュラ。……わかってます」

 気が付くと、ゴーレムは平男の後方にいた。

「は、早い。しまった」

 ゴーレムが平男に殴りかかる。

 真空の輪がその攻撃を遮った。ルフィルの攻撃だ。

「ありがとう、ルフィルのテット」 平男はかばってくれたルフィルに対し、礼を言う。

「次から次とっ。――バルロさん、少し大きな技をいきますよ。アレか、面白い」

 ゴーレムが拳を振り上げる。叩きつける場所は――地面。

「まずい、みんな飛べっ」 神威が声をあげるが――

「無駄だっ。――反応が遅いのですよっ」 ゴーレムを中心に、衝撃波が円状に広がる。

 校舎を背にしていた遥と神威は校舎に叩き付けられる。ルフィル、平男はそのまま吹き飛ばされ、校庭を滑っていく。

 そして、日向のダイアモンドシールドは砕け散り、日向はその場に立ち尽くす。

「そ、そんなぁ……」 日向一人が、校庭の真ん中に取り残される。

 その場に立ち尽くす日向の前に、ゴーレムが立ちはだかる。

「さて、おまたせしましたねぇ。――てめぇはじっくりとなぶり殺しにしてやるぜ」


 青騎士の剣が夕菜を捉え、剣の腹で夕菜を殴打、夕菜は透明な壁に叩き付ける。――青騎士の一方的な攻撃。

 効果のない攻撃を続けていた夕菜の体力は限界に近づいていた。

 追撃に来る青騎士をフランベルクで迎撃する。

「このぉぉぉぉ」 青騎士がバラバラに崩れ落ちる。

 だが、これは何度も繰り返してきたこと。青騎士は元の姿へと戻り、夕菜へ攻撃を仕掛ける。

 夕菜はフランベルクで青騎士の剣を受けとめる。少し前なら青騎士の剣を切り裂くことも出来たフランベルクも、いまでは受けとめるので精一杯なくらいに威力が落ちていた。

 青騎士の蹴りが夕菜の腹部に入る。腹部の痛みに気を取られたところに青騎士の剣が振り下ろされる。

「どうやら、これで終わりみたいだねぇ」 グラムスが無我に向かってそう口にした。

「……」 無我は無言で右手にフォースの光を集める。

「ははは。水晶の決着との同時が、あたいの寿命ってことかい?」

「――まだだぁっ。『爆炎衝ばくえんしょう』」 夕菜が左手を青騎士に向けてかざした。その手から炎のフォースが発動される。

 夕菜が炎のフォースを爆発させた。しかし、その爆発は青騎士だけでなく、夕菜自身をも吹き飛ばす。青騎士はバラバラになり、夕菜は透明な壁に沿って転がるように飛ばされた。

 夕菜は消えゆく爆煙の中、バラバラになった身体がひとつひとつ復元されていく青騎士の姿を睨み付けていた。

(あれ? なに? この違和感? ――そりゃ、何度もあいつが再生するところを見てきたけど……、なんで壊れる場所と修復方法が全く同じなわけ?)

 青騎士の再生の光景を目に焼き付ける。そして感じる違和感。

(? なんだろ? 見覚えがある。あのテット、なにかに――! 置き物の甲冑と全く同じ作りなんだ。だとしたら、あの中は空洞。……あの方法しかない。かなり危険だけど、あの力を使うしか)

 夕菜は勢いよく立ちあがり、まだ胴体の再生が終わっていない青騎士に向かって走り出した。――そして、再生中の青騎士の身体に飛び込んだ。

 青騎士が内部に夕菜を巻き込み再生を終える。――その瞬間。

「フォース最大、『紅蓮纏ぐれんまとい』発動っ」

 夕菜、炎上。――Boutの時に見せた暴走した炎のフォースだ。

 夕菜と青騎士を閉じ込めていた水晶が粉々に砕け散る。――炎を纏った夕菜の周りには、原形を留めていない青騎士の残骸が転がっていた。

 散らばった青騎士の残骸が風化を始めた。それと同時に、なにかが倒れる音がした。

 夕菜は纏っていた炎を解除し、その音の方向に目を向ける。――グラムスがその場に倒れていた。そばにはEXPERT無我の姿。

「嘘? 一瞬で、仕留めたの?」

「ここを出るぞ。ここはすぐにでも崩れる」 無我がそう言っているそばから、洞窟の崩壊が始まった。そして、グラムスの身体も風化を始める。

 夕菜が歩き出そうと足を一歩前に進めようとした時、自分の意思とは関係なしにその場に膝をつく。

「あ、あれ? 力が、入らない」

「――ちぃ、あの炎の力で全てのフォースを使いきったか」

 無我の真上の天井が崩れ、落盤が無我を襲う。

「『霹靂かみとき』」 無我が腕を振り上げると、斬糸が雷のように変化し、真上へと舞い上がる。

 無我の霹靂は落盤を突き抜け、天井に穴を空ける。無我がテレポーテーションを発動させ、夕菜のそばに現れる。

「今からレビテーションでここを出る」 夕菜を抱きかかえる。

「え? え?」

 レビテーションが発動される。無我と夕菜はレビテーションの光の痕跡を残してこの場所から脱出した。


 ムジュラとバルロの合体ゴーレムがゆっくりと日向との距離を詰める。

 ゴーレムの左方から矢が飛んでくる。矢はゴーレムに当たるが、刺さることなく砕け散ってしまった。

「ほう、アレを受けてすぐに動ける方がいましたか。――けっ、弓使いの女か、どうってことねぇ、ほっとけ」

 遥がゴーレムと日向との間に割って入る。ゴーレムに向けて弓を引く。

「何度やってもてめぇじゃ無駄だよ。――少しでも長く生きていたければそこをどくのが賢明だと思いますが?」

「私は、ガーディアン見習いとして彼女を守る義務がある。たとえ、力及ばなくとも、彼女を見殺しにはしないっ」

「では、先に死んでください。――死にさらせや」 ゴーレムの腕が振り下ろされる。

 ゴーレムの攻撃と同時に遥は矢を放った。日向の身代わりとなるため、死を覚悟してダメ元で放った矢だったが、その矢は放たれてすぐに変化を見せた。

 放たれた矢は水のフォースに包まれて、ゴーレムの振り下ろした腕を吹き飛ばした。そして、遥の弓までもが水のフォースに包まれはじめる。

「み、水のエレメンタルフォース? これを、私が?」 依然、遥の弓は水のフォースを纏っている。

「――バルロさん、ターゲットを変更しますよ? 当然だ、なめた真似しやがって!」

「! 来るの?」 遥は弓を構えるが、構えた先にゴーレムの姿はない。

 ゴーレムのもう片方の腕が遥の後頭部を強打した。遥は前方へと地を滑る。

「くっ」 滑りながらも遥は身体を反転させ、体勢を立て直そうとする。

「遅えよ」 ゴーレムは遥の目の前に来ている。

 蹴りが腹部に入る。遥はそのまま倒れた。

「せっかく効果的な武器を手にしたのに、無駄になりましたね。――ムジュラ、こいつ仕留めて早くあのカード使いの女をるぞ。――そうですね、とどめといきますか」

 真空の輪の攻撃。真空の輪はゴーレムに当たって砕け散る。ルフィルがゴーレムの前に立ち塞がる。

「またあなたですか。まあ、あなたがあの一撃で戦闘不能になるとは思っていませんでしたがね。――けちらしゃいいだけじゃねぇか、こんな下級テットはよぉ」 拳がルフィルを襲う。

 ルフィルは攻撃を回避するものの、ゴーレムの攻撃の手は止まらない。――回避行動を続けながら、ルフィルはテレパシーを発動させた。

《ゴメン、マスター。もう、一般人がいるからとか、そんな理由で力を抑えている場合じゃないみたいだ。EXPERTモードを使うよ》

「その必要はないっ!」 校舎屋上からの声。――無我だ。EXPERT姿の無我が見下ろすように屋上付近に浮いていた。――夕菜を抱えながら。

《マスターっ》

(え!? フィルちゃんのマスターって……、あれが、お兄ちゃん?)


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