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examination(エクザミネーション)”C”  作者: 以龍 渚
Episode 3.Assault
12/42

BATTLE 3.不穏(Ugly)

 ――四月十日(日)。午前十一時、ガーディアンスクール校舎。

 校舎階段、二人の男子生徒が二階を起点として一階側と三階側にわかれて階段を掃き掃除している。――無我と神威、互いに無言のままで。

「――ねぇ、そっちは終わ――、……な、なに? このギスギスした空気」

 後からやってきた夕菜でさえわかるほど、二人の無言は重い空気を作り出していた。

「下はこれで終わりだ」 神威は一階側の掃除を終え、二階に戻ってきた。

「こっちも終わる」 無我は三階から掃いてきた埃を二階でまとめている。

 無我と神威の視線が重なる。――空気がさらに重くなる。

「ちょ、なんなのよ、あんたたち?」

「俺が知るかよ、神威に聞けよ」

「僕からは何も言わない。――口にすればキミに負けを認めることになる」

(こいつ、まだBoutの事を根にもってやがるのかよ)

「まったく、あんたたちは。……とにかく、廊下と階段は終わったわね? 校庭と校舎周りは平男と真壱がやってるから、あとは屋上と中庭か」

「屋上の方は僕がやろう。一人で充分だろう」 神威が一人で屋上清掃すると申し出る。

「じゃあ、私は無我と中庭ね」

 夕菜が先に階段を降り、そのあとに無我が続く。上に向かおうとする神威と階段の手前ですれ違った時、神威が無我に対して呟いた。

「たとえキミが何者であろうとも、僕は必ずその上をいく。いまは力不足でも……必ず、だ」 そう言い残し、神威は階段を上っていった。

「……アンタ、氷室にとことん嫌われたみたいだね。――ま、Boutの件に関しては、私も文句があるんだけどね」

「嫌われた? ……違うな、神威のアレはそんなもんじゃない」

「? じゃあ、なんだっていうのよ?」

「宣戦布告、だな。俺に対して完全に敵対するってな」

「……災難ね、アンタも。ま、自業自得ってやつなんじゃない? Boutで奇襲攻撃をかけたアンタのね」

(いや、仮に神威とまともに試合をしていたとしても、結局はこうなっていただろうな。……ちと、やっかいな性格だな。一度、本気でぶちのめしたほうがいいのか?)

 夕菜と無我が階段を降りていく。


 学校を見下ろすようなカタチで、ムジュラとバルロが学校の上空にいた。

「どうやらグラムスさんの方は準備出来たみたいですね」

「穴倉で待ち伏せか、俺のしょうじゃねえな」

「まぁまぁ、バルロさん。……しかし、無人と思っていたら五人もいらっしゃるようですね?」

「めんどくせぇ。一気にいくか、ムジュラ?」

「まぁまぁ。何人かはグラムスさんの誘いに乗るでしょう。もう少し待ちましょう、バルロさん」


 無我が一階の廊下に足をつけた時、無我の頭の中に声が響いてきた。

《無我っ、そっちでなんか変わったことない?》 雫からの緊急通信だ。

《お、おい。お前、なんで緊急通信なんか――》

《緊急なのよっ》

「無我?」 夕菜が、階段を降りたところで急に足を止めた無我を不思議に思い、声をかけてきた。

「――ちょっとトイレにいってくる。あとで追いつく」 そういって無我は廊下を走り、トイレの方へと消えていった。

「ちょっとっ、無我? ……もう、私は先に中庭に行ってるからね」


 夕菜が校舎を出ると、そこには大きなゴミ袋を両手に持った、平男と遥の姿があった。

「あれ? 校舎の方はもう終わったの、舞川さん?」 平男が夕菜に気づき、声をかけてくる。

「とりあえずは校舎は終わり。あとは屋上と中庭だけ。屋上は氷室が行ったから、私と無我は中庭。そっちは?」

「私たちはこれを置いてこればもうおしまい」 そういって遥は、手に持つ大きめのゴミ袋を夕菜に見せる。

「なんで平男と真壱だけのそっちが、私たち三人でやってた校舎より早く終わるわけよ?」

「なに言ってんの、舞川? 中庭や屋上なんてほとんど見回るだけじゃない」

「なにもなければね」 夕菜が嫌味っぽくそう言い返す。

「まぁ、中庭がとんでもない状態だったとしても、私達には関係ないし」 それを遥はさらに返してきた。

「ちょっとぉ!」

「ははは。大丈夫、真壱さん、本気で言ってないから」

「じゃあ、がんばってね、舞川。願わくば、何事もない様にってとこかしら」

「はいはい。ま、余程の運の悪くないかぎり、それはないでしょう」

 夕菜はそういって中庭へと歩いていった。そして、平男と遥は校門近くの焼却場に向かって行った。


 一階のトイレの前の廊下で、無我は雫からのテレパシーに応対していた。

《――だから、無我。その周辺でなにか変化があるはずなの》

《だが、俺にはテットの反応なんて感じないぞ?》

《だから、さっきから言っているじゃない? 学校の周囲に二匹の反応があって、それが消えたり現れたりしてるって。問題はアンタほどの人間が一切気配を感じないってコト》

《――! 結界か!?》

《で、アンタは今学校にいるんでしょ? でも、本部はアンタの気配も感じ取れないの。――ってことは?》

《その結界の発生源が俺の周囲にあるってわけか。予想範囲は?》

《……アンタから半径十メートル以内》

《はぁ!?》 予想外の返答に、無我は思わず周囲を見渡した。

 窓の先――中庭に不審な洞穴ほらあなを発見する。

《……ありやがった》

《今回は結界の意図がわからないから、メンバーを派遣することが出来ないの。無我、アンタで片付けて。……制服着用で》

《No.9、了解》

「やれやれ。――!? 夕菜?」

 中庭にやってきた夕菜が洞穴を発見する。――そして、夕菜のとった行動は……

「――入って行きやがった、あのバカ」

 窓を開け、サッシに手をかけると、窓を飛び越え中庭へ。無我の姿がフード姿のEXPERTに変わる。

(とりあえずは気付かれないように様子を見よう。――なにかあれば……)


 ――同時刻、舞川家。

 舞川家、玄関前に日向とルフィルの姿があった。

「じゃあ行くよ、フィルちゃん」

《なにも、わざわざマスターを迎えに行かなくても、もうじき戻ってくるんじゃあ――》

「ダメっ。時間がもったいないじゃない。ほら、行くよ」

 無我を迎えに、日向とルフィルはガーディアン養成学校へと向かおうとしていた。


 これから起こることなど、夢にも思わずに。


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