相変わらずな日常【65】
――後日。
無事、病院から退院した俺は久しぶりに学校へ登校した。
久しぶりの教室に入れば。
心配していたダチ達が駆け寄り、俺の肩を叩いてくる。
「よぉ、ミラクル王子」
みらくるおうじ?
俺は聞きなれない言葉に顔を歪めた。
いつの間にかあだ名が変わっている。
「お前、マジ心配したんだからな」
「もう学校出てきて大丈夫なのか?」
あー、まぁ。うん。めちゃくちゃ元気だし。
「病院で余命受けたわけじゃないんだよな?」
全然。ホント。普通に元気。だから退院してきたんじゃねぇか。
「隠し事ナシだからな」
おぅ。色々心配かけて悪いな。
言葉なく。
ダチ達が俺の背をぽんぽんと軽く叩いてくる。
元気ならいいんだよ、とばかりに。
ふと。ダチの福田が俺に声をかけてくる。
「ってかさ、お前最近ずっと不思議続きだよな」
「行方不明になったり死の淵から甦ってきたり。ほんとミラクルばっかっていうか」
「実はお前、神様なんじゃねぇのか?」
「なんかお前を拝んどくとご利益ありそうだな」
ぱんぱん。
――って、俺の前で手を合わすな、コラ。縁起でもない。
「どうせご利益あるなら頭の方にあってほしいな」
「来い! 俺の未来にミラクルビーム!」
「志望校に受かりますように」
「無理無理。そこまでご利益ねぇって」
オイ。
「よし。じゃぁレベル下げてオレは次のテストで平均取れますように」
「馬鹿、満点と言え。そこは」
「南無南無……」
一斉に拝んでくるな。お前ら全員神社へ行け!
「そういや、とある神社では線香から出る煙を頭に塗り付けると志望校に受かるらしいな」
「よし、頭突いとくか」
「頭突くとご利益が倍になりそうだな」
「よし、頭突こう」
ごふッ! お、お前らマジふざけんな。こっちは病み上がりで
――ふいに。
クラスの女子数人が、俺の名を呼んで集ってきた。
え?
俺たちは目を瞬かせつつ、時を止める。
「あの、体……もう大丈夫?」
「あれからみんな本当に心配したんだからね」
「今度から気分悪くなったら我慢せず遠慮なく私に言ってね。席、隣だし」
「私、保険室係だから何かあったらすぐに言って」
「無理しないでね」
「みんな無関心なわけじゃないんだからね」
「一人はみんなの為に。みんなは一人の為に。このクラスの心は一つだから。それを忘れないで」
あ、はい……。
クラス女子からの意外な言葉だった。
みんな本当に俺のこと心配してくれていたんだなと改めて思う。
そう思うと俺は自然と口元が綻んだ。
ありがとう。ほんともう大丈夫だから。
女子たちも伝えたい事が言えて安堵したのか、気恥ずかしそうに頬を染めて笑い、その後、女子同士で身を寄せ合ってグループになり、きゃいきゃい言いながら機嫌よく席に戻っていった。
ダチの福田が俺の隣で陰気にぼそりと言ってくる。
「やっぱりUMAはUMAか」
「MOUMAか」
MOUMAってなんだよ。
「頭突くよりマジ蹴りした方がご利益ありそうだな」
「……MOUMAをみんなで蹴るか」
はぁ!?
「よし、蹴ろう」
「蹴った分だけ幸せになれるはず」
何の迷信だよ、ふざけんな! やられたらやり返すからな! このッ、くぬっ、痛ッ、いてぇっ! マジやめろ、数多いだろうが! 俺だけ不利じゃねぇか!
教室に担任が入ってくる。
「席つけ。ホームルーム始める。――そこの仲良し集団、いつまで遊んでる。遊ぶなら次の休み時間にしろ。早く席つけ」
※
席について。
俺はようやく気付く。
背後に座る福田へと振り返り、
なぁ、福田。――朝倉は? 休みか?
「あーそっか。お前知らないよな。朝倉の奴、ここ最近ずっと学校ズル休みして来ねぇんだよ」
何かあったのか?
福田が曖昧に首を傾げながら答えてくる。
「あったっつーか。なんか上田がさ、朝倉の様子を心配して見に行ったらしいんだけど──あ、ほら。お前ら朝倉ン家に遊びに行ってたじゃん。そん時パソコンいじったんだろ?」
あーうん。上田がな。それがどうした?
「あれから上田がパソコンの様子気にして朝倉ンとこ行ったらしいんだけど。それがさ、朝倉の奴ヤバイぐらいにひきこもりでゲームに熱中していたって話だぜ」
ゲームに?
「嘘みたいな話だろ?」
あぁ。ネトゲか?
「廃課金しているわけじゃねぇらしいんだけど、なんかずっと暗い部屋ン中でパソコン開いてそこから離れないらしいぜ」
ヤバくねぇか? 飯とかちゃんと食ってた感じか?
「上田いわく──」
「コラ、そこ! いつまで私語している!」
またあとでな。
「あぁ」
俺と福田はそこで会話を一旦切った。




