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白の騎士団を名乗る者【63】


 布に染み込んでいた匂いを嗅いだせいか、俺はしばらく気を失っていた。

 鈍く走る頭痛とともに目を覚ませば、俺は『く』の字に体を曲げた状態で誰かの肩に担がれ、どこかへ運ばれていた。

 視界は白い布で覆われて見えず、口も塞がれている。どこを歩いているのか、またどこへ向かっているのか、昼なのか夜なのかもわからなかった。

 聞こえてくるのは声と足音。

 それも複数に。


 しばらくして、足音が止まった。


 すぐ傍で声が聞こえる。壮年な男の声だ。

「白の騎士団――ウォルツだ。手配を頼んでいたはずだが」


 すると、商人らしき媚びへつらう声が聞こえてくる。

「お待ちしていましたよ、白騎士様たち。さぁさ、こちらへ。移動の手配はちゃんと整えております」


「すぐに発てるか?」

「はいです」


 白の騎士団?

 俺は内心で疑問に思う。


 ディーマンの声も聞こえてくる。

「ウォルツよ、お主はこのままクトゥルクを【帝都の神殿】へ連れて行くんじゃ。ワシはオリロアンへ行く。奴への囮はワシがやろう。神殿へ着いたらすぐに十位神官長サーベストどもを集めて議会を開き、神祭だけでも済ませておけ」


「クトゥルクの護送は三手に分かれた方がいい。相手はクトゥルクに最も近いと云われた男。奴をあなどると痛手を負う」


「むぅ……」


「オルニ、スピアはスロイドと共に。デルとグリノはディーマンへ。後は俺と来い」


 担がれていた肩から下ろされ、俺は二人掛かりで持って床みたいなところへと寝かされた。

 ――いや、違う。ただの床じゃない。

 閉塞感のある狭い場所。

 うめく声がすぐ間近に反芻はんすうして聞こえてくる。

 これは、箱の中だ!

 真上から蓋を閉められ施錠されたことを物音で察する。

 しまった! 閉じ込められた!

 ようやく身の危険を感じた俺は、さらに大きくうめき声を上げて助けを求めた。

 後ろ手で縛られていることもあり、上半身を起こすのは容易ではない。

 寝返りを打つスペースもなく、身丈をすっぽりと縦長に、膝も曲げられないほどの狭い空間の中で俺は必死になって身をよじり暴れた。

 箱は動じない。

 誰も何の反応もない。


 いったいここはどこなんだ!? 俺はどこに連れて行かれようとしているんだ!?


 不安と恐怖が胸を締め付けた。


【気軽にクトゥルクという言葉を口にするんじゃない。この世界ではそういうのを口にしていると次の日行方不明なるって昔からよく言われたもんだ】


【なんかそれ、祖母ちゃんの知恵袋みたいな話だな】


【ちなみに実話だ。その翌日には遺体で見つかるらしいけどな】


 助けてくれ、おっちゃん! 俺はここだ!

 内心で叫びまくったが、おっちゃんの声は届かない。


【お前なぁ。本当に向こうの世界に帰れなくなってもいいのか?】


 ごめん、おっちゃん。俺が馬鹿だった。あの時もっとちゃんと真面目に受け止めるべきだった。


【だったら向こうの世界に帰りたいという気持ちを忘れるな。常に心のどこかに持ち続けていろ。そうしないとログアウトのタイミングになっても気付かずにそのまま一生帰れなくなるぞ】


 帰りたい! 帰りたい、元の世界に!


 急な興奮と焦り騒いだせいか過呼吸になりそうになる。

 しだいに呼吸が乱れ、胸を圧迫されるような苦しさが襲い、息を吸うこともままならなくなってくる。

 心臓の脈打つリズムが狂い、鼓動が速さを増した。

 胸をかき掴みたいほどの衝動かられるも縛られていることで出来ず、苛立ちを覚え、俺は死をも覚える苦しみにもがき続けた。


 い、息が……! 誰か助けてくれ!


 ――助けてくれーッ!



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