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そういえば、俺は何かを忘れている【60】


 俺はドラゴンの首元にもたれるようにして前のめりにうつ伏せた。

 ため息を吐く。


 なぁ。


《はい》


 これで、良かったんだよな……?


 その呟きに、ドラゴンが問い返してくる。

《竜騎軍の指揮を殺さなかったこと、後悔しているのですか?》


 いや、別に。そういうわけじゃないけど。


 俺は手元にある二つの角笛のペンダントを見つめた。

 一つはカルロスから借りたもの。

 もう一つは──。

 俺はそれを見つめ、呟く。


 なんか俺……誰かと約束していた気がするんだ。遠い昔。記憶にはないけれど……たぶん。そんな気がする。


《そうやって思い出していけば良いのです。少しずつ》


 そうか……。そうだよな。

 俺はドラゴンの首元から身を起こした。

 手持ち綱を掴んで、視線を空へと向ける。


 あのさ、俺


《はい》


 この空が好きだ。


《平和だから、ですか?》


 俺は微笑する。

 ……そうかもしれない。


 ドラゴンがやんわりとした口調で言ってくる。

《白き神よ》


 ん?


《あの時の言葉を訂正させてください》


 訂正? あの時の言葉って?


《白き神よ、あなたは何も変わっていませんでした。戦い方も、あの時から何も変わってなどいません》


 変わっていない?


《えぇ。最後に会ったあの時から》


 最後に会った、あの時……?


 なぜだろう。

 以前会った記憶など全く無いのだけれど、でもなんとなく。

 浮かんできた言葉を俺は自然と口にした。


 俺は変わらない。ずっと。

 ――この空のように。


《……》

 一呼吸置いて、ドラゴンが言ってくる。

《安心しました》


 安心した?


《えぇ。またこうして我が背にお乗りください、白き神よ》


 うん、また乗せてくれよ。


 ドラゴンは言う。視線を街並みへと向けながら、

《もうすぐ街に着きます。カルロスとは──会わなくても良いですね?》


 俺は気まずく頬をかいて笑った。

 あー、うん。できればそうしてもらえると助かる。色々、説明するのが面倒だし。


 ドラゴンは笑う。

《そうですね。ではこの辺りで。カルロスには私が上手く誤魔化しておきます》


 ありがとう。


《白き神よ》


 ん?


《またどこかで会えますよね?》


 うん。きっとまた会えるよ。どこかで……どこかで――あぇ!?


《どうしたのですか?》


 俺は慌ててブンブンと両手を振った。

 い、いや、なんでもない。ただ、さっきの言葉でちょっと思い出したことがあって……。


《思い出したこと?》

 

 俺は気持ちを隠すように視線を逸らして頬を掻き、動揺に声を震わせる。


 あー、えっと。うん。あ、会えたらいいよな。ほんと。その、なんつーか、約束は……できないけれど。


 内心、俺はものすごくどうしようもないくらいに焦っていた。

 今まで本気ですっかり忘れていたが、俺はこの世界の人間じゃない。ってか、いや、ほんとマジ、なぜ忘れていたんだろう? 帰るんだよな? 帰りたいはずなのにいつの間にか元の世界に戻ることを忘れていた。この世界の住人になることを刷り込まれていっているのか? なんかマジで怖くなってきた。本当にこの世界からログアウトできるんだよな? ってか、いつになったら戻れるんだよ。まさか一生このままとか、ならないよな?



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