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戦場へ【52】

【51】は、ま・ぼ・ろ・し~☆


※ 【51】につきましては第八弾で読めます。


 ドラゴンの背に乗り、大空を駆ける。


 なんてスピードなんだ……!


 叩きつける風に体を吹き飛ばされそうになるも必死にしがみついて耐えた。

 全身の力が抜けそうになる。

 呼吸もままならずにとても息苦しい。

 これで手を離せば確実に俺は死ぬだろう。


 ドラゴンが俺の頭の中で言ってくる。

《風を操りなさい》


 風を? どうやって?


《命じるのです。風を司りし精霊に》


 精霊? どこにも……見えない。


《見るのではなく感じるのです。今、その体に触れているモノ全てが精霊です》


 風が……精霊?


《心穏やかに、深く呼吸を。風はそれに応えてくれます》


 言われる通りに。俺は不安や疑問、考え、その全てを振り払って心を無にしてみた。

 大きく一度、無理やりにでも深呼吸する。


 ……あれ?

 風が、止まった。


 微風程度になったことで俺は不思議と周囲を見回した。

 流れる風景。

 スピードが落ちたわけでもないし、空を飛んでいることに変わりはない。


 もしかしてこれが魔法、なのか?


《いいえ。これは魔法ではなく【言の葉】。クトゥルクの命令に精霊が付き従ったのです》


 付き従う?


《神に逆らう精霊など無に等しきこと。森羅万象全てのモノが神の言の葉に従います。それがこの世の運命さだめ――自然の理なのです》


 なんかよく、わからないけど……。


《記憶を取り戻しなさい、白き神よ》


 記憶を……?


《戦場こそが白き神に相応しき聖地。この世の全てを制し覇者となってこそクトゥルクなのです》


 この世の、覇者……。


 ふいに。

 こちらと併走飛行するように一頭のドラゴンがやってきて合流してくる。

 一頭だけではない。上空、下、そして横からと、数がしだいに増えていく。

 その光景に俺は目を丸くした。

 ドラゴンが集っている。

 しかも集ったドラゴンは全て乗り手の居ない鞍をつけたままだった。

 併走を続けていたドラゴンたちはやがて速度を落としてカルロスのドラゴンの後ろへと下がり、ついてくる。


 なぜだ?

 俺はカルロスのドラゴンに理由を尋ねた。

 どうして? なんで俺たちの後をついてくるんだ?


《皆、この刻を待っていたのです》


 待っていた? なんで? 乗り手は?


《前を》


 前?


 俺は後方から前方へと目を向けた。

 見つめる先にある――光と闇。

 塔を境にして境界線のごとく、黒い幕を下ろしたかのように大地が分断している。

 その暗き闇の奥にうごめく、大小様々な魑魅魍魎ちみもうりょうども。

 餌場を見つけた猛禽のごとく無数に結界の前に蔓延り、集ってきていた。


《白き神よ。ドラゴンの士気を高めなさい》


 士気?


《闇の中へ──突撃の雄叫びを!》


 そんな、やったことない!


《本能のままに》


 本能?


《吼えるのです!》

 カルロスのドラゴンが魑魅魍魎に向けて地鳴るような咆哮をあげる。


 ――その咆哮を聞いた瞬間。

 何かに精神を支配された気がした。

 俺の中に眠っていた何かが目覚める。

 煮えたぎるような闘争心が体の底から沸き立ち、一気に全身を駆け巡った。

 思うが侭にぐっと手持ち綱を握り締め、そして無意識に。

 俺は声を上げていた。



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