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突入!【47】 前

 物陰で待ち伏せていたのは数人の竜騎兵。

 入場口に突入してすぐ、戦闘は始まった。


 先陣をきったおっちゃんは馴れたように素手だけで相手に向かっていき、受け流すように一人目の攻撃を交わす。懐に入り込んで相手の腰にある警棒を奪い、それを武器に急所を狙い、一撃で次々に倒していく。


 俺もおっちゃんを真似るようにして、一人の竜騎兵に向かっていった。


 弱い俺を狙ってか、その竜騎兵が剣を振りかざして俺に襲い掛かってくる。

 俺はバッド感覚で警棒を振って、隙だらけとなっていた相手の腹に全力で直撃させた。


 ……!


「ん?」

 顔色一つ変えない竜騎兵。腹に虫でも止まったかといった顔で、竜騎兵は俺が当てた警棒を見下ろしてきた。


 途端に俺の両腕全体にジンとした強い痺れが襲ってくる。

 まるで鉄柱を全力で叩いたかのような感覚だった。

 虚しく警棒を地に落とし、俺は涙目になって両手をわななかせる。


 卑怯だろ、その硬さ!


 竜騎兵がニィっと笑ってくる。

「残念だったな。竜族おれたちの体躯を嘗めてかかるからだ」

 無防備となった俺を嘲笑うように見下し、改めて竜騎兵は俺に向けて剣を振りかざしてきた。


 しまった! 警棒――


 竜騎兵の構えた白刃に光が閃く。

懺悔ざんげはあの世でするんだな」

 振り下ろされる剣。


 それを目にしながら。

 ――ドクン、と。

 俺の中で電撃のように走る衝撃が一瞬にして全身を駆け巡った。

 眠る本能が目覚め、体が勝手に繰り糸のようにして動き出す。

 振り下ろされる剣に、俺は誰に教わったわけでもなく反射的に腰を落として体勢低くし、拳を握り締めた。

 冷静なまでに落ち着いた思考で剣を見据えて軌道を予見し、脳裏に浮かんだ魔法陣を発動させる。

 

 次の瞬間、剣は大きく軌道を曲げて横へと逸れた。

 竜騎兵の表情に動揺が走る。


「なッ──!」


 バランスを崩した竜騎兵の隙だらけな体躯目掛けて、俺は無意識に右の手の平を突き出す。

 竜騎兵の心臓を狙って。


 ダメだ!


 あの夜の戦慄を思い出して、瞬時に俺は開いた手の平を意識的に拳に変えると、間髪置かずにそれを放った。


 衝撃波に押し飛ばされるようにして、竜騎兵の体は人形のように軽く吹っ飛び、勢いのまま壁にその身をめりこませた。

 竜騎兵の体を中心に壁に蜘蛛の巣状のヒビが入る。


 ……え?


 驚いたのはこっちだった。

 目を何度も瞬かせて俺はその場に固まった。

 そして呆然と拳を引き寄せて視線を落とす。

 まるで空気でも殴ったかのような感覚だった。

 殴った拳に痛みもなく、それでいて相手の体に触れた感覚もない。

 なんだろう、今のは。


 不思議な思いで、俺は壁にめりこむ竜騎兵へと視線を移した。


 もしかして俺が……倒したのか?


 呻き声が聞こえてくる。

 めりこんだ壁から竜騎兵がよろよろとした体で立ち上がってきた。

「このガキ……! ぐほっ」

 横から隙をついて、鞘を手にしたおっちゃんが竜騎兵との間合いを瞬時に詰め、勢いのままに鞘を竜騎兵の横っ腹に叩き込む。


 竜騎兵は白目をむいてその場に昏倒した。


 おっちゃんが不機嫌な顔で俺に声をかけてくる。

『上出来だと誉めてやりたいとこだが手加減しすぎだ。一撃で仕留めろと言ったはずだろ』


 ご、ごめん。


『行くぞ』


 え?


 見回せばすでに他の竜騎兵は全員床に昏倒しており、ぴくりとも動かなかった。

 驚いたのはそのスピード。

 言葉通り全て一撃で倒してしまったようだ。

 戦闘慣れというよりも、むしろこれは、なんというか……。


 ん? あれ? おっちゃん。

 いつの間にか俺の隣におっちゃんが居ない。

 ――って、ちょ待てよ! マジで置いてくことないだろ!


 さっさと先を行くおっちゃんの後ろ姿を見つけて、俺は慌てて地面に落ちた警棒を拾い、その背を追いかけた。



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