いったい何者なんですか?【37】
「――ん?」
店を飛び出し、人通りの少ない夜の街中で。
俺とティムは店の出入り口付近で足を止めて呆然と口を開けて固まった。
すでに折り重なり気絶した竜騎軍三人、道の端で山となり倒れていたからだ。
汚れたであろう手を叩きながら、何事ない顔でアデルさんが俺たちへと目を向けてくる。
「我輩がやられているとでも思ったのか?」
俺は頬を引きつらせながら感想を述べる。
つ、強いんですね……。
「勇者だからな」
理由になってないです。
「何を言う。お前さんのことを助けてやっただろうが」
また例の素手ですか?
「武器なぞ使うまでもない。強化魔法で鍛えたこの拳一本で充分だ」
あの、アデルさんっていったい何者なんですか?
「勇者だ。それ以外に何に見える?」
山賊の頭領。――とはさすがに言えなかった。
「見た目なぞどうでも良い。我輩は勇者だ。勇者は強くて当たり前であろう?」
そんなに強いんだったらなぜドラゴンに乗らないんですか?
「我輩は乗り物に弱いのだ」
そういう事情だったんですか。
「言っておくが、乗り物以外は何だってできるぞ」
ドラゴンに乗れないのは致命的ですよね。
アデルさんは胸を張り、そこを拳で叩いて示す。
「勇者とは正義だ。正義の心さえあれば充分だ。我輩はそう思っている」
正義、ですか。
「そうだ」
俺は無言で眉間に人差し指を当て、考え込むように呻いた。
――ふいに。
「お?」
俺の隣に居たはずのティムが急に泣きつくようにしてアデルさんのところへと走り出した。そのままアデルさんにしがみつく。
「勇者様どうかお願いです! その正義のお心で、勇者祭りを止めてください!」
「……?」
事情が見えず。
無言で、俺とアデルさんは顔を見合わせてお手上げした。




