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勇者って結局何なんですか?【34】


 窃盗の男を警邏隊の詰め所にぶちこんだ後、アデルさんとミリアは清々しい顔で詰め所から出てきた。


 アデルさんが胸をぐいと張って俺に言う。

「これが勇者だ」


 何かが違うと俺は思った。


「違うことはなかろう? ドラゴンに乗り、軍を率いて戦うのが勇者か? 魔物を倒して威張って歩くのが勇者か? いや、そうではない。勇者とは身近なところで困っている人に手を貸してやること。それが真の勇者である」


 それを聞いて。

 俺はどこか安心するように微笑した。

 なんとなく、この人とは気が合いそうだ。


 がしっと。

 ミリアが俺に近づいてくるなり、いきなり俺の片腕を掴んできた。


 え、な、何?


 少し怒ったような、真剣な顔で俺の目を見つめてくる。

「……」


 えっと。

 俺は内心ですごく戸惑った。

 何か彼女の気に障ることでもしただろうか?


 頭の中でおっちゃんの声が聞こえてくる。

『お前さ、勝手に離れて一人で動き回るのはやめてくれないか? この人たちの傍にいろって言っただろ。お前が急に居なくなったから奴らにさらわれたんじゃないかと思って本気で焦ったじゃねぇか』


 俺は安堵に胸を撫で下ろして内心で言い返す。


 なんだ、おっちゃんの仕業だったのか。一瞬彼女を怒らせたかと思って焦ったじゃねぇか。


『それは知らん。俺は彼女の体を勝手に動かすことができんからな』


 え? じゃぁ何? なんで彼女、こんな怒っているんだ?


『余裕でいいな、お前。その程度の焦りでうらやましいよ。一人でそこに居て何もなかったか?』


 特に。全然。何も。


『それは良かった』


 意外と心配性なんだな、おっちゃん。


『早死にするタイプなんだ。ほっといてくれ』


 アデルさんが声をかけてくる。

「お前さん達、どうしたというんだ? だんまりと見つめ合って」


 え。

 俺はハッとしてアデルさんを見やる。すぐに顔をぶんぶんと横に振って、

 いや、俺は別に何も。


 ミリアが俺から離れてアデルさんの傍に駆け寄り、思い悩んだ顔で言う。

「アデル様」

「む? どうした、ミリア」


「私は時々不安に思うのです。この者は名も知れませんし、覆面をして正体を隠しています。さきほど彼の目を見つめて思考を読もうとしたのですが全く読めません。それに──」

 自分の胸の服をきゅっと掴んで視線を落とし、ミリアは細々と言う。

「彼と目が合うたびに急に金縛りのように体が動かなくなって、こう、すごく胸の奥が締め付けられるようにドキドキしてくるのです」


 ……。

 俺は無言で視線を逸らした。


 おっちゃんのウキウキとした声が頭に響いてくる。

『おー、そうかそうか。それは間違いなく恋──』


 ミリアが必死な顔でアデルさんに訴える。

「アデル様、もしかしたら彼はアカギの残党なのかもしれません! やっぱり」

「ミリアよ」

 ポンと、宥めるようにアデルさんがミリアの肩に手を置く。そして真剣な表情で、

「それは──お前の中に芽生えたライバル心というものだ」



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