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どういうことだよ、それ【32】


 突然頭の中に聞こえてきたおっちゃんの声に、俺は周囲を見回した。


『その必要はない。お前はしばらくこの人たちと一緒にいろ』


 俺は周囲を見回しながら内心で言い返す。

 一緒にいろって──おっちゃん、今どこいるんだよ!


『今、お前の目の前にいる』


 は?

 目を向ければ、俺の正面にいるのはミリアだった。


『そうだ。俺は今、彼女の中にいる』


 俺は両手をわななかせながら、たまらず内心で叫んだ。

 何考えてんだよ、おっちゃん!


『そう怒るな。俺にも事情がある。ちっとは察しろ』


 何をどう察しろと!?


『少し厄介なことになった。どうやら面倒な奴らに尾行されていたようだ』


 面倒な奴ら?


『夕べの帰り道、お前はディーマンを迎えに来た奴が俺と知り合いじゃないかと訊ねたよな?』


 え? あ、うん。


『たしかに知り合いだ。悪い意味でな』


 悪い意味で?


『詳しいことは言えないが、クトゥルクを追っている集団がこの街に潜んでいる。なるべく奴らに行動パターンを読まれないようにしたい。その為にはお前の協力が必要だ』


 集団って……まさか黒騎士!?


『いや、黒騎士とはまた別の集団だ』


 黒騎士以外にも別の集団があるのか!?


『そうだ。俺もお前もそいつ等に捕まるわけにはいかない』


 集団って何? どんな奴ら?


『それは……言えない』


 なんでだよ! 教えてくれないと警戒できないだろ! それにいざという時は逃げられないし──


『むしろ奴らの前では不審な行動をするな。何も知らないままでいろ。その方が安全だ』


 安全って……?


『奴らに勘付かれたら俺たちは逃げ場を失い、即捕まる』


 そいつ等に捕まったらどうなるんだ?


『クトゥルクのことを吐くまでジワジワ痛めつけられる。捕まった時の拷問は覚悟すべきだな』


 それ、俺もそうなるのか?


『当然だ』


 俺がクトゥルクを持っているってことがそいつ等にバレたら?


『余計悪い。一生この世界から出られなくなる。――って、バレたらどうなるか以前にも話さなかったか?』


 たしかに聞いたような気がする。


『お前の身の安全を考えて言ってやっているんだ。今は何も聞かず俺の指示に従え』


 ……わかった。


『あと一つ、お前に言っておかなければならないことがある』


 言っておくこと?


『念の為だ。ペナルティが終わったと感じたらすぐに自力で向こうの世界へ帰れ』


 自力で?


『どうやらこの体は特殊だったようだ。俺は自分の意思で体を動かすことはおろか魔法も使えない。今はただお前とこうして交信しているだけで精一杯だ。だからログアウトできると感じたら自分の力でこの世界からログアウトしろ』


 自分でログアウトって、まだやり方すら教えてもらってないんだけど。


『そうだったな。じゃぁ今からログアウトのやり方を教える』


 わかった。


『いいか、よく聞け』


 うん。


 間を置いた後、おっちゃんが静かに告げる。

『――感覚だ』


 ……。


『……』


 え? それだけ?


『それだけだ』


 他に伝えることはないのか? なんかこう、呪文唱えたりとか魔法陣書いたりとか強く願ったりとか水に飛び込むとか、色々手順があるはずだろ?


『ない。直感だ。直感に従え』


 どこのサバイバルだよ。


『なんかこう急にピンとくるものがある。それがログアウトだ』


 いや、わかんねぇよ。


『帰りたい時は帰れる。直感を信じろ。俺が言えるのはそれだけだ』


 ……わかった。

 俺はしぶしぶ了承するしかなかった。



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