どこかで一度、会いましたよね?【31】
俺はふと尋ねた。
あの……どこかで一度、会いましたよね?
「む?」
山賊の風貌をした男は思い返すように顎に手を当て虚空を見つめ、問い返してくる。
「そうだったか?」
えぇ。入場口の偽装チケット騒ぎの件で──
男はポンと手を打つ。
「あーあの時か。言われてみれば確かにお前さんとは一度会っておるな」
あの子、無事に念願の勇者に会えましたよ。
「ほぉそうか。それは良かった。ところでお前さん、あの入場チケットをどこで手に入れた?」
え?
「チケットだ、チケット。あの時お前さんがあの子供に渡そうとしていただろう。あのチケットだ。あれは白騎──」
しろき?
その時だった。
「アデル様ぁー」
道の向こうから懸命に走ってくる一人の少女。
見た目で判断するなら、歳は俺とそう変わらない。
背丈は同級生の女子と比べれば少し低いくらいか。顔立ちはエルフに近い。近いといっても俺がエルフの村で会ったエルフ達とは若干目鼻立ちが違うような気がする。どちらかと言えば妖精と人間を掛け合わせたような顔立ちの少女だった。
露出度ある踊り子の服をひらめかせ、ちょっとセクシーなその少女は一直線に山賊風の男を目指して走ってきた。高い位置で一つ結びした長い髪を馬の尻尾のように揺らし、褐色肌に汗を輝かせながら、元気いっぱいにそのまま山賊風の男の胸に飛び込む。
「私はついにアデル様を見つけました!」
少し甘えた声の、子供みたいなかわいい声をしていた。
アデルと呼ばれた──その山賊風の男は、胸に飛び込んできたその少女をぎゅむと抱きしめる。
「うむ。よくぞ我輩の居場所を見つけた。偉いぞミリア。さすが一番弟子――それでこそ勇者だ」
「はい、アデル様。私は勇者です。アデル様の居場所が分からずに勇者が名乗れますか」
……。
何言ってんだ? この人たち。
俺は無言でそっと二人から距離を置いた。
ふいに男――アデルさんから腕を掴まれ、俺はうめいた。
「どこへ行く?」
に、逃げられない。
少女が俺の前に回りこんできて顔をのぞきこんでくる。
「アデル様。この方は?」
「よくぞ聞いてくれた、ミリアよ」
言って、アデルさんが俺の腕をぐいと掴んで引き寄せた。
「紹介しよう。今日から我輩の仲間にして弟子第二号である」
少女――ミリアが拍手をしてくる。
「おめでとうございます、アデル様。そこら辺の民人をもすぐに仲間にできるその勇者力。やはりアデル様は勇者です」
いやあの、俺は連れがいるのでこの辺で
「何を言う。今日から我輩がお前さんを一人前の勇者に育てると言ったはずだ」
俺ほんと、連れがいますから勘弁してください。
「嘘はいかん。我輩にはわかる」
「そうなんですか、アデル様!」
「うむ。そうだ」
勝手に決め付けないでください。
ミリアが俺の顔をじっと見てくる。
間近でみるとさらにかわいい。
「……」
しだいにミリアの顔が険しくなっていく。
「どうした? ミリアよ」
「アデル様、もしかしたらこの民はアカギの残党かもしれません。それでもこの方を仲間にするのですか?」
アカギって何?
「うむ。当然である。アカギの残党だろうが黒騎士だろうが、仲間になりたいと願う者を拒むようでは勇者を名乗れまい」
俺、一言も仲間になりたいと言ってないんですけど。
ミリアが俺の手を取る。
「わかりました。勇者の名において、私はあなたを仲間と認めます」
「うむ。偉いぞ、ミリア。それでこそ勇者だ」
あの、ほんと勘弁してください。俺はただここで人を待っていただけなんで――
『その必要はない』
ふいに頭の中に聞こえてきたおっちゃんの声に、俺は辺りを見回した。




